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Nutrition Guide

身体を作り、機能させる栄養・サプリメント情報 より効率的な身体作りのために

5-5.脂質について知っておこう

一般に「脂質」といえば悪者の象徴と思ってしまう人も多いのではないだろうか。知っての通り、血中の中性脂肪の増加は血管を詰まらせる原因となったり、内臓脂肪の増加は糖尿病発症のリスクを上昇させたりする。しかしながら脂質は、身体の構成要素として、また生きるうえでのエネルギー源として非常に重要な役割を持っている。ここでは脂質の役割について、今一度整理したいと思う。

 

脂質の種類とその働きについて

脂質は1g当たり9kcalの熱量を持つ栄養素である。水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物として定義される1。この脂質は、構造によって単純脂質、複合脂質、そして誘導脂質の3つに分類することが出来る。

“単純脂質”
単純脂質は、グリセロールと脂肪酸が結合したものである。一般的に知られているものとしては中性脂肪があり、食べ物に最も多く含まれている脂質である。ヒトの重要なエネルギー源として利用され、体脂肪として貯蔵されたり、血中にも存在する。尚、ヒトの体脂肪(脂肪組織)は20%が水分である為、食事から摂取する脂質(油)とは異なり、1g当たり7.2kcalとして計算される。

“複合脂質”
複合脂質は、グリセロールと脂肪酸に加え、リン酸、糖類、窒素化合物などが結合したものである。複合脂質の1つであるリン脂質は、水になじむ性質(親水性)となじまない性質(疎水性)のどちらも持ち合わせていることから、細胞膜の主要な構成要素として利用されている。

“誘導脂質”
誘導脂質は、単純脂質や複合脂質が加水分解されることで生じたもので、脂肪酸、コレステロール、そしてステロイドなどがこれに当たる。組織の構成、エネルギー源としての利用の他、ホルモンをはじめとする生理活性物質としての働きも持つ。

 

脂質は運動時の重要なエネルギー源

運動時のエネルギー源といえば、まず糖質を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
勿論その考え方は間違っていないが、脂質も重要なエネルギー源であるという事を忘れないで欲しい。 脂質は糖質と比較して大きなエネルギーを生み出すことに加え、生体内での貯蔵量も糖質の20倍近くある。では実際、運動中脂質はどの程度エネルギー源として利用されているのだろうか。

Romijらによると、運動時のエネルギー基質利用は、運動の強度に依存することが報告されている2。これによると、最大酸素摂取量(VO2max)の25%(ゆっくりな歩行程度の運動)や65%(ジョギング程度の運動)ではエネルギー基質として脂質の利用割合が高いのに対して、85%(激しく息が切れる程の運動)では糖質の利用割合が著しく上昇することが分かる(図1)。

一般的には、VO2maxの50-60%強度を境にして、これより低いと脂質利用が優位であり、これより高いと糖質利用が優位になるとされている。

運動強度と使用エネルギー源(糖質・脂質)
図1. 運動強度とエネルギー基質の関係 (*文献2より作成)

 

次からはこの脂質について、脂肪酸の種類の違いや、運動時に効率よく脂質を利用する方法などについて解説してゆきたい。

  • 【参考文献】
  • 1.厚生労働省. 日本人の食事摂取基準 2020.
  • 2.Romijn, J. A. et al. Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration. Am. J. Physiol. 265, 380-391 (1993).

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5-5.脂質について知っておこう

一般に「脂質」といえば悪者の象徴と思ってしまう人も多いのではないだろうか。知っての通り、血中の中性脂肪の増加は血管を詰まらせる原因となったり、内臓脂肪の増加は糖尿病発症のリスクを上昇させたりする。しかしながら脂質は、身体の構成要素として、また生きるうえでのエネルギー源として非常に重要な役割を持っている。ここでは脂質の役割について、今一度整理したいと思う。

 

脂質の種類とその働きについて

脂質は1g当たり9kcalの熱量を持つ栄養素である。水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物として定義される1。この脂質は、構造によって単純脂質、複合脂質、そして誘導脂質の3つに分類することが出来る。

“単純脂質”
単純脂質は、グリセロールと脂肪酸が結合したものである。一般的に知られているものとしては中性脂肪があり、食べ物に最も多く含まれている脂質である。ヒトの重要なエネルギー源として利用され、体脂肪として貯蔵されたり、血中にも存在する。尚、ヒトの体脂肪(脂肪組織)は20%が水分である為、食事から摂取する脂質(油)とは異なり、1g当たり7.2kcalとして計算される。

“複合脂質”
複合脂質は、グリセロールと脂肪酸に加え、リン酸、糖類、窒素化合物などが結合したものである。複合脂質の1つであるリン脂質は、水になじむ性質(親水性)となじまない性質(疎水性)のどちらも持ち合わせていることから、細胞膜の主要な構成要素として利用されている。

“誘導脂質”
誘導脂質は、単純脂質や複合脂質が加水分解されることで生じたもので、脂肪酸、コレステロール、そしてステロイドなどがこれに当たる。組織の構成、エネルギー源としての利用の他、ホルモンをはじめとする生理活性物質としての働きも持つ。

 

脂質は運動時の重要なエネルギー源

運動時のエネルギー源といえば、まず糖質を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
勿論その考え方は間違っていないが、脂質も重要なエネルギー源であるという事を忘れないで欲しい。 脂質は糖質と比較して大きなエネルギーを生み出すことに加え、生体内での貯蔵量も糖質の20倍近くある。では実際、運動中脂質はどの程度エネルギー源として利用されているのだろうか。

Romijらによると、運動時のエネルギー基質利用は、運動の強度に依存することが報告されている2。これによると、最大酸素摂取量(VO2max)の25%(ゆっくりな歩行程度の運動)や65%(ジョギング程度の運動)ではエネルギー基質として脂質の利用割合が高いのに対して、85%(激しく息が切れる程の運動)では糖質の利用割合が著しく上昇することが分かる(図1)。

一般的には、VO2maxの50-60%強度を境にして、これより低いと脂質利用が優位であり、これより高いと糖質利用が優位になるとされている。

運動強度と使用エネルギー源(糖質・脂質)
図1. 運動強度とエネルギー基質の関係 (*文献2より作成)

 

次からはこの脂質について、脂肪酸の種類の違いや、運動時に効率よく脂質を利用する方法などについて解説してゆきたい。

  • 【参考文献】
  • 1.厚生労働省. 日本人の食事摂取基準 2020.
  • 2.Romijn, J. A. et al. Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration. Am. J. Physiol. 265, 380-391 (1993).
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