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Nutrition Guide

身体を作り、機能させる栄養・サプリメント情報 より効率的な身体作りのために

5-3.グリコーゲンローディングとは?

骨格筋内に貯蔵されている糖質、筋グリコーゲンは運動時の非常に重要なエネルギー源である。しかしながら、5-1.糖質について知っておこうで説明したように、筋グリコーゲンの貯蔵量には限りがあり、マラソンをはじめとする長時間の運動実施によって簡単に枯渇してしまう。筋グリコーゲンが枯渇すると、筋肉はエネルギーを生み出せなくなり、運動が継続できなくなってしまう。

そこで、マラソンランナーやトライアスリートなどの持久系競技者などは、試合前にあらかじめ筋グリコーゲンの貯蔵量を高めておく、グリコーゲンローディングと呼ばれる手法を用い、パフォーマンス向上を図っている。ここでは、このグリコーゲンローディングについて、メカニズムやその手法などを解説する(なお、グリコーゲンローディングはカーボローディングとも呼ばれる)。

 

なぜグリコーゲンローディングが必要なのか?

先述の通り、骨格筋に貯蔵されているグリコーゲンの量には限りがあり、およそ400g、エネルギー換算で約1,600kcal程度と言われている1。フルマラソンは1回を走り切るのにおよそ2,500kcal以上もエネルギーを消費すると言われているので、筋グリコーゲンの貯蔵量がいかに少ないかお分かりいただけるだろう。

グリコーゲンローディングは、試合の数日前から食事で多くの糖質を摂取し、あらかじめ筋グリコーゲン濃度を高めておくことで運動パフォーマンスの向上を狙うというものである。詳しい食事方法については後述するが、グリコーゲンローディングを実施することで、筋グリコーゲン濃度をおよそ2倍近くまで増加させられると言われている。実際に、運動前の筋グリコーゲン濃度を高くすることで疲労までの時間を延長できることや2、グリコーゲンローディングの実施によりランニングのパフォーマンスが向上することも報告されている3。上記のようなパフォーマンス向上効果を期待して、マラソンランナー、トライアスリート、オープンウォータースイミング選手、あるいはサイクリストなど様々な持久性競技の選手が試合前にグリコーゲンローディングを取り入れている。

 

グリコーゲンローディングのやり方

グリコーゲンローディングには、期間や方法を変化させたいくつかのパターンがある。
下記にBurke et al.の報告4から3つのグリコーゲンローディングの手法を紹介する(図1)。 それぞれの特徴があるが、競技会で実践前には必ず事前に試し、自身のスタイルに最も合う手法を選択して欲しい。

グリコーゲンローディングのやり方比較
グリコーゲンローディングの結果
図1. グリコーゲンローディング法の比較 (*文献4より作成)

 

1.”古典的”グリコーゲンローディング
グリコーゲン超回復という言葉を聞いたことがあるだろうか?
これは、一度筋グリコーゲンを大きく減少させることで、その後糖質を摂取した際に元々よりも多くのグリコーゲンを筋肉に貯め込むことが出来るという現象である。

古典的なグリコーゲンローディングではこの現象を応用し、まず初めの3日間は低糖質+強度の高いトレーニングでグリコーゲンを枯渇させ、3日前から高糖質食を摂取する。古典法のデメリットとして、グリコーゲンを大幅に減少させるため、初めの3日間は倦怠感、精神的苦痛、睡眠障害、あるいはトレーニングの質の低下などが生じる可能性があると言われている。アスリートにとって負担の多いこの古典的な手法は、現在ではあまり用いられないことが多い。

2.”改良型”グリコーゲンローディング
アスリートの負担をなるべく少なくする為、改良型のグリコーゲンローディングが考案された。 これは、試合6日前から3日間それほど糖質を制限しない中糖質食を摂取し、その後試合3日前から高糖質食を摂取するというものである。古典的グリコーゲンローディングと比較して負担が少なく、筋グリコーゲンの貯蔵量を高めることが出来る。

3.”最新型”グリコーゲンローディング
このBurke et al.の報告4では、更に最新型のグリコーゲンローディング法として、試合の2日前からのみ高糖質食を摂取するという手法が提案されている。よく鍛えられた持久性アスリートの骨格筋は糖を取り込む能力が高く、高糖質食摂取後24時間程度で筋グリコーゲンが最大まで回復するという特性を応用したものである。この手法であれば、試合直前まで普段と変わらない食事を摂ることが出来る為、改良型よりもさらにアスリートへの負担を減らすことが出来ると考えられている。

 

グリコーゲンローディングの注意点

持久系競技のパフォーマンス向上をもたらすとされるグリコーゲンローディングであるが、いくつかの注意点がある。まず、グリコーゲンローディングはすべてのアスリートにとって有益な栄養戦略ではないということ。これまで述べたように、マラソンやトライアスロン、オープンウォータースイミングなどの競技時間が90分を超えるような運動であれば効果的だが、5分以内で終わるような高強度の運動を実施しているアスリートとっては、グリコーゲンローディングは有益ではない。

また、グリコーゲンは筋内に貯蔵される際、1gのグリコーゲンに対して3~5gの水分子と結合することが知られている。したがって、グリコーゲンローディングを実施することでおよそ1~1.5㎏程度体重が増加する可能性がある。この体重増加がパフォーマンスに影響を与えるような競技のアスリートは注意が必要である。

 

  • 【参考文献】
  • 1.Wasserman, D. H. Four grams of glucose. Am. J. Physiol. – Endocrinol. Metab. 296, 11-21 (2009).
  • 2.Bergstrom J, Hermansen L, Hultman E, S. B. Diet, muscle glycogen and physical performance. Acta Physiol. Scandanavia 71, 140-150 (1967).
  • 3.Hawley, J. A., Schabort, E. J., Noakes, T. D. & Dennis, S. C. Carbohydrate-loading and exercise performance. Sport. Med. 24, 73-81 (1997).
  • 4.Burke, L. M., Van Loon, L. J. C. & Hawley, J. A. Postexercise muscle glycogen resynthesis in humans. J. Appl. Physiol. 122, 1055-1067 (2017).

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5-3.グリコーゲンローディングとは?

骨格筋内に貯蔵されている糖質、筋グリコーゲンは運動時の非常に重要なエネルギー源である。しかしながら、5-1.糖質について知っておこうで説明したように、筋グリコーゲンの貯蔵量には限りがあり、マラソンをはじめとする長時間の運動実施によって簡単に枯渇してしまう。筋グリコーゲンが枯渇すると、筋肉はエネルギーを生み出せなくなり、運動が継続できなくなってしまう。

そこで、マラソンランナーやトライアスリートなどの持久系競技者などは、試合前にあらかじめ筋グリコーゲンの貯蔵量を高めておく、グリコーゲンローディングと呼ばれる手法を用い、パフォーマンス向上を図っている。ここでは、このグリコーゲンローディングについて、メカニズムやその手法などを解説する(なお、グリコーゲンローディングはカーボローディングとも呼ばれる)。

 

なぜグリコーゲンローディングが必要なのか?

先述の通り、骨格筋に貯蔵されているグリコーゲンの量には限りがあり、およそ400g、エネルギー換算で約1,600kcal程度と言われている1。フルマラソンは1回を走り切るのにおよそ2,500kcal以上もエネルギーを消費すると言われているので、筋グリコーゲンの貯蔵量がいかに少ないかお分かりいただけるだろう。

グリコーゲンローディングは、試合の数日前から食事で多くの糖質を摂取し、あらかじめ筋グリコーゲン濃度を高めておくことで運動パフォーマンスの向上を狙うというものである。詳しい食事方法については後述するが、グリコーゲンローディングを実施することで、筋グリコーゲン濃度をおよそ2倍近くまで増加させられると言われている。実際に、運動前の筋グリコーゲン濃度を高くすることで疲労までの時間を延長できることや2、グリコーゲンローディングの実施によりランニングのパフォーマンスが向上することも報告されている3。上記のようなパフォーマンス向上効果を期待して、マラソンランナー、トライアスリート、オープンウォータースイミング選手、あるいはサイクリストなど様々な持久性競技の選手が試合前にグリコーゲンローディングを取り入れている。

 

グリコーゲンローディングのやり方

グリコーゲンローディングには、期間や方法を変化させたいくつかのパターンがある。
下記にBurke et al.の報告4から3つのグリコーゲンローディングの手法を紹介する(図1)。 それぞれの特徴があるが、競技会で実践前には必ず事前に試し、自身のスタイルに最も合う手法を選択して欲しい。

グリコーゲンローディングのやり方比較
グリコーゲンローディングの結果
図1. グリコーゲンローディング法の比較 (*文献4より作成)

 

1.”古典的”グリコーゲンローディング
グリコーゲン超回復という言葉を聞いたことがあるだろうか?
これは、一度筋グリコーゲンを大きく減少させることで、その後糖質を摂取した際に元々よりも多くのグリコーゲンを筋肉に貯め込むことが出来るという現象である。

古典的なグリコーゲンローディングではこの現象を応用し、まず初めの3日間は低糖質+強度の高いトレーニングでグリコーゲンを枯渇させ、3日前から高糖質食を摂取する。古典法のデメリットとして、グリコーゲンを大幅に減少させるため、初めの3日間は倦怠感、精神的苦痛、睡眠障害、あるいはトレーニングの質の低下などが生じる可能性があると言われている。アスリートにとって負担の多いこの古典的な手法は、現在ではあまり用いられないことが多い。

2.”改良型”グリコーゲンローディング
アスリートの負担をなるべく少なくする為、改良型のグリコーゲンローディングが考案された。 これは、試合6日前から3日間それほど糖質を制限しない中糖質食を摂取し、その後試合3日前から高糖質食を摂取するというものである。古典的グリコーゲンローディングと比較して負担が少なく、筋グリコーゲンの貯蔵量を高めることが出来る。

3.”最新型”グリコーゲンローディング
このBurke et al.の報告4では、更に最新型のグリコーゲンローディング法として、試合の2日前からのみ高糖質食を摂取するという手法が提案されている。よく鍛えられた持久性アスリートの骨格筋は糖を取り込む能力が高く、高糖質食摂取後24時間程度で筋グリコーゲンが最大まで回復するという特性を応用したものである。この手法であれば、試合直前まで普段と変わらない食事を摂ることが出来る為、改良型よりもさらにアスリートへの負担を減らすことが出来ると考えられている。

 

グリコーゲンローディングの注意点

持久系競技のパフォーマンス向上をもたらすとされるグリコーゲンローディングであるが、いくつかの注意点がある。まず、グリコーゲンローディングはすべてのアスリートにとって有益な栄養戦略ではないということ。これまで述べたように、マラソンやトライアスロン、オープンウォータースイミングなどの競技時間が90分を超えるような運動であれば効果的だが、5分以内で終わるような高強度の運動を実施しているアスリートとっては、グリコーゲンローディングは有益ではない。

また、グリコーゲンは筋内に貯蔵される際、1gのグリコーゲンに対して3~5gの水分子と結合することが知られている。したがって、グリコーゲンローディングを実施することでおよそ1~1.5㎏程度体重が増加する可能性がある。この体重増加がパフォーマンスに影響を与えるような競技のアスリートは注意が必要である。

 

  • 【参考文献】
  • 1.Wasserman, D. H. Four grams of glucose. Am. J. Physiol. – Endocrinol. Metab. 296, 11-21 (2009).
  • 2.Bergstrom J, Hermansen L, Hultman E, S. B. Diet, muscle glycogen and physical performance. Acta Physiol. Scandanavia 71, 140-150 (1967).
  • 3.Hawley, J. A., Schabort, E. J., Noakes, T. D. & Dennis, S. C. Carbohydrate-loading and exercise performance. Sport. Med. 24, 73-81 (1997).
  • 4.Burke, L. M., Van Loon, L. J. C. & Hawley, J. A. Postexercise muscle glycogen resynthesis in humans. J. Appl. Physiol. 122, 1055-1067 (2017).
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