体重・脂肪DOWN
ウォリアーにとって重要なのはパワーウェイトレシオ(=重量出力比)だ。どんなにパワーがあっても、余計な体脂肪が乗っていてはスピードもアジリティも低下してしまう。ただ筋トレするだけではなく、余計なものをそぎ落として研磨した肉体を作りあげていかねばならない。
多くのウォリアーは減量のためにローカーボダイエット(糖質制限)やローファットダイエット(脂質制限)に取り組んでいるが、実際これらの手法に効果の違いはあるのだろうか?今回はウォリアーがよく取り組んでいるローカーボダイエットとローファットダイエットについていくつかの研究結果をもとに解説したいと思う。
体脂肪を減らすためにはダイエットが必要だ。ただしウォリアーのダイエットは体重を落とすだけではいけない。発達させた筋肉と筋力をできるだけ落とさないよう、キープする必要がある。ダイエットの基本はエネルギー収支である。つまり摂取エネルギーが消費エネルギーを下回れば良い。ウォリアーは普段からトレーニングで十分にエネルギーを消費している。となると摂取エネルギーのほうで調整していく必要がある。
問題は、どれくらいの摂取エネルギーにするべきかである。一気に減らしてしまうと、間違いなく筋肉量が減ってしまう。また安静時代謝も低下し、減量の効率が悪くなってしまう(※1)。筋肉量をキープでき、無理なく落とせるペースとすると、一週間に体重の0.5~1.0%程度の減少に留めるようにしたいところだ(※2, ※3)。
現在の体重が80kgだとしよう。体重の0.5~1.0%は400~800gだ。仮に500gとすれば、10週間で5kg落とすことになる。これくらいのペースならば空腹感に悩まされることもなく、筋肉量の低下がそれほど起こることも無いだろう。体脂肪1kgは7,200kcalなので、500gは3,600kcal。一週間(7日)で3,600kcal減らせば良いわけだから、一日に514kcal減らせば良いことになる。
まずは一日にどれくらいのエネルギーを摂取しているのか、三日間ほど口にしたものをすべてノートに書いて計算してみよう。なるべく平均的な食事を摂った日が良いだろう。そこから514kcalを減らしていくわけだ。ただしこれは10週間の間、まったく安静時代謝が低下しない場合の話である。実際にはこのように計算通りにはいかず、またエネルギー収支以外にも腸内細菌の関係などもあって、思うように体重が減らず、徐々に摂取エネルギーを減らしていくことが多い。
摂取エネルギーを減らすとは言っても、たんぱく質はできるだけキープするようにしたい。つまり減らせるのは糖質か脂質かである。脂質を減らした低脂肪ダイエットをローファット、糖質を減らした低糖質ダイエットをローカーボと呼ぶことにしよう。さて、この二つのうちどちらが良いのだろうか。
〇競技特性で考える
瞬発力競技の場合、エネルギー源は主に糖質となる。そのため糖質をカットしてしまうと、競技能力に影響が出てくる可能性が高い。逆に持久力競技の場合、エネルギー源として脂質が利用される割合も高い。よって脂質をカットすると、こちらも悪影響が起こりうる。
つまり瞬発力競技の場合はローファット、持久力競技の場合はローカーボとする考え方がある。
〇ダイエット効果から考える
肥満女性371名を対象に、12ヶ月に渡って各種ダイエットの効果を比較した研究がある。その結果、ローカーボ・ダイエット(総エネルギーの平均17%が糖質)は4.7kg、ローファット・ダイエット(糖質63%、脂質10%)は2.2kg、エネルギー制限と運動は2.6kgの体重減少となった(いずれも平均値)。摂取エネルギーはだいたい全部同じで1,400~1,800kcal程度である(※4)。
また322名を対象に2年間に渡って各種ダイエットの効果を比較した研究がある(※5)。その結果、ローファット・ダイエットは2.9kg、ローカーボ・ダイエットは4.7kgの体重減少となっている(図1)。
こうしてみるとローカーボがやや優勢なようだ。ローカーボだと「体重が落ちるのは水とグリコーゲンの減少によるもので、すぐにリバウンドする」と言わるが、必ずしもそうではないことがこの長期に渡って行われた二つの報告からわかるだろう。
なお2014年に行われたメタ解析では59の信頼できる論文を調査し、様々なダイエット法の効果を調べている(※6)。その結果、減少した体重そのものの違いは、どのダイエット法も同じようなものだったとされている。半年に渡る各種ダイエットの結果、ローカーボでは平均8.73kgの減少に対し、ローファットでは平均7.99kg減少した。しかし12か月後の体重は、どれも同じくらいだったということである。
メタ解析の結果から、ローカーボとローファットの減量効果に大差はないものと捉えることが出来るので、次項で示す「継続可能性」を主に考えることを推奨したい。
〇継続可能性で考える
たんぱく質を十分に摂取することを考えると、ローファットは食材が限られてしまう。卵白や鶏胸肉、白身魚あたりだろうか。弁当を持参できるのなら問題はないが、外食が多いと少々難しい。米を食べたい、弁当は持参できるというウォリアーならば、ローファットでも継続は問題ないかもしれないが。
一方でローカーボは食材が豊富である。糖質を控えれば良いだけなので、ステーキや魚料理も食べられるし、外食でも選びやすい。特に主食を食べなくても良いウォリアーならば、ローカーボのほうが継続しやすいだろう。
まずはエネルギー比だ。一般的な日本人の場合、エネルギー比としてはおおよそ糖質が58%、たんぱく質は15%、脂質は27%程度となる。ウォリアーは倍のたんぱく質を摂るとして、例えばたんぱく質を30%と仮定して考えよう。
ローファットの場合、脂質を極力減らすことになるが、かなり厳しくしても総エネルギーの10%が限界だろう。つまり糖質が60%、たんぱく質は30%、脂質が10%となる。一方ローカーボの場合は糖質と脂質を逆にして、糖質を10%、たんぱく質が30%、脂質を60%とすれば良い。
なお、この二つを切り替えると言う方法もある。つまり「ローファット→ローカーボ」か、「ローカーボ→ローファット」とするわけだ。その場合、順番としては前者のほうが良いだろう。
肥満男性と閉経前女性を対象に、「低脂肪食→低糖質食」あるいは「低糖質食→低脂肪食」にして、どのように体重や体脂肪量が変化するかを調べた研究がある(※7)。
その結果、「ローファット→ローカーボ」の順番にしたほうが、ダイエット効果が持続したと報告されている。研究者は糖新生やDIT(Diet induced thermogenesis:食事誘発性熱産生)反応、ケトン体排出にエネルギーが使われることなどが、低糖質食が低脂肪食を上回るダイエット効果を産みだしているのだろうと推論している。
10週間ダイエットする場合、最初の5週間をローファット、次の5週間をローカーボとするといいだろう。同じ食材ばかり食べるのも飽きるので、途中でダイエット法を切り替えるのはメンタル的にも良い方法となるだろう。
ローファットとローカーボ、上手く使い分けて研ぎ澄まされた肉体を作り上げていってほしい。
ウォリアーにとって重要なのはパワーウェイトレシオ(=重量出力比)だ。どんなにパワーがあっても、余計な体脂肪が乗っていてはスピードもアジリティも低下してしまう。ただ筋トレするだけではなく、余計なものをそぎ落として研磨した肉体を作りあげていかねばならない。
多くのウォリアーは減量のためにローカーボダイエット(糖質制限)やローファットダイエット(脂質制限)に取り組んでいるが、実際これらの手法に効果の違いはあるのだろうか?今回はウォリアーがよく取り組んでいるローカーボダイエットとローファットダイエットについていくつかの研究結果をもとに解説したいと思う。
体脂肪を減らすためにはダイエットが必要だ。ただしウォリアーのダイエットは体重を落とすだけではいけない。発達させた筋肉と筋力をできるだけ落とさないよう、キープする必要がある。ダイエットの基本はエネルギー収支である。つまり摂取エネルギーが消費エネルギーを下回れば良い。ウォリアーは普段からトレーニングで十分にエネルギーを消費している。となると摂取エネルギーのほうで調整していく必要がある。
問題は、どれくらいの摂取エネルギーにするべきかである。一気に減らしてしまうと、間違いなく筋肉量が減ってしまう。また安静時代謝も低下し、減量の効率が悪くなってしまう(※1)。筋肉量をキープでき、無理なく落とせるペースとすると、一週間に体重の0.5~1.0%程度の減少に留めるようにしたいところだ(※2, ※3)。
現在の体重が80kgだとしよう。体重の0.5~1.0%は400~800gだ。仮に500gとすれば、10週間で5kg落とすことになる。これくらいのペースならば空腹感に悩まされることもなく、筋肉量の低下がそれほど起こることも無いだろう。体脂肪1kgは7,200kcalなので、500gは3,600kcal。一週間(7日)で3,600kcal減らせば良いわけだから、一日に514kcal減らせば良いことになる。
まずは一日にどれくらいのエネルギーを摂取しているのか、三日間ほど口にしたものをすべてノートに書いて計算してみよう。なるべく平均的な食事を摂った日が良いだろう。そこから514kcalを減らしていくわけだ。ただしこれは10週間の間、まったく安静時代謝が低下しない場合の話である。実際にはこのように計算通りにはいかず、またエネルギー収支以外にも腸内細菌の関係などもあって、思うように体重が減らず、徐々に摂取エネルギーを減らしていくことが多い。
摂取エネルギーを減らすとは言っても、たんぱく質はできるだけキープするようにしたい。つまり減らせるのは糖質か脂質かである。脂質を減らした低脂肪ダイエットをローファット、糖質を減らした低糖質ダイエットをローカーボと呼ぶことにしよう。さて、この二つのうちどちらが良いのだろうか。
〇競技特性で考える
瞬発力競技の場合、エネルギー源は主に糖質となる。そのため糖質をカットしてしまうと、競技能力に影響が出てくる可能性が高い。逆に持久力競技の場合、エネルギー源として脂質が利用される割合も高い。よって脂質をカットすると、こちらも悪影響が起こりうる。
つまり瞬発力競技の場合はローファット、持久力競技の場合はローカーボとする考え方がある。
〇ダイエット効果から考える
肥満女性371名を対象に、12ヶ月に渡って各種ダイエットの効果を比較した研究がある。その結果、ローカーボ・ダイエット(総エネルギーの平均17%が糖質)は4.7kg、ローファット・ダイエット(糖質63%、脂質10%)は2.2kg、エネルギー制限と運動は2.6kgの体重減少となった(いずれも平均値)。摂取エネルギーはだいたい全部同じで1,400~1,800kcal程度である(※4)。
また322名を対象に2年間に渡って各種ダイエットの効果を比較した研究がある(※5)。その結果、ローファット・ダイエットは2.9kg、ローカーボ・ダイエットは4.7kgの体重減少となっている(図1)。
こうしてみるとローカーボがやや優勢なようだ。ローカーボだと「体重が落ちるのは水とグリコーゲンの減少によるもので、すぐにリバウンドする」と言わるが、必ずしもそうではないことがこの長期に渡って行われた二つの報告からわかるだろう。
なお2014年に行われたメタ解析では59の信頼できる論文を調査し、様々なダイエット法の効果を調べている(※6)。その結果、減少した体重そのものの違いは、どのダイエット法も同じようなものだったとされている。半年に渡る各種ダイエットの結果、ローカーボでは平均8.73kgの減少に対し、ローファットでは平均7.99kg減少した。しかし12か月後の体重は、どれも同じくらいだったということである。
メタ解析の結果から、ローカーボとローファットの減量効果に大差はないものと捉えることが出来るので、次項で示す「継続可能性」を主に考えることを推奨したい。
〇継続可能性で考える
たんぱく質を十分に摂取することを考えると、ローファットは食材が限られてしまう。卵白や鶏胸肉、白身魚あたりだろうか。弁当を持参できるのなら問題はないが、外食が多いと少々難しい。米を食べたい、弁当は持参できるというウォリアーならば、ローファットでも継続は問題ないかもしれないが。
一方でローカーボは食材が豊富である。糖質を控えれば良いだけなので、ステーキや魚料理も食べられるし、外食でも選びやすい。特に主食を食べなくても良いウォリアーならば、ローカーボのほうが継続しやすいだろう。
まずはエネルギー比だ。一般的な日本人の場合、エネルギー比としてはおおよそ糖質が58%、たんぱく質は15%、脂質は27%程度となる。ウォリアーは倍のたんぱく質を摂るとして、例えばたんぱく質を30%と仮定して考えよう。
ローファットの場合、脂質を極力減らすことになるが、かなり厳しくしても総エネルギーの10%が限界だろう。つまり糖質が60%、たんぱく質は30%、脂質が10%となる。一方ローカーボの場合は糖質と脂質を逆にして、糖質を10%、たんぱく質が30%、脂質を60%とすれば良い。
なお、この二つを切り替えると言う方法もある。つまり「ローファット→ローカーボ」か、「ローカーボ→ローファット」とするわけだ。その場合、順番としては前者のほうが良いだろう。
肥満男性と閉経前女性を対象に、「低脂肪食→低糖質食」あるいは「低糖質食→低脂肪食」にして、どのように体重や体脂肪量が変化するかを調べた研究がある(※7)。
その結果、「ローファット→ローカーボ」の順番にしたほうが、ダイエット効果が持続したと報告されている。研究者は糖新生やDIT(Diet induced thermogenesis:食事誘発性熱産生)反応、ケトン体排出にエネルギーが使われることなどが、低糖質食が低脂肪食を上回るダイエット効果を産みだしているのだろうと推論している。
10週間ダイエットする場合、最初の5週間をローファット、次の5週間をローカーボとするといいだろう。同じ食材ばかり食べるのも飽きるので、途中でダイエット法を切り替えるのはメンタル的にも良い方法となるだろう。
ローファットとローカーボ、上手く使い分けて研ぎ澄まされた肉体を作り上げていってほしい。