競技パフォーマンスUP
トレーニング初心者がつまずく最初の石は「筋肉痛」だろう。ベテランには心地よい筋肉痛も、慣れていない人にとっては不快でしかない。何度か来る筋肉痛を乗り越えてこそ、初級を脱することができるのだが、それを助けてくれる方法はあるのだろうか。
今回は、筋肉痛のケアに活躍する栄養素について解説する。本記事を日々のトレーニングや栄養摂取に役立てて欲しい。
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【本記事のまとめ】
◇筋肉痛のケアに活躍する栄養素
1. プロスタグランジン対策としてEPAやαリノレン酸
2. ブラジキニン対策のために亜鉛
3. 血行改善のためにビタミンB群とビタミンE
4. 筋肉回復のためにプロテインとグルタミン、HMB
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トレーニングによって起こる筋肉痛は「遅発性筋痛,Delayed Onset Muscle Soreness:DOMS」と言われる。つまりトレーニング中に痛むわけではなく、時間をおいてから痛むわけだ。これはどのようなメカニズムで起こるのだろう?
実は、今でもハッキリとはわかっていない。わかっている範囲で解説すると、トレーニングによってプロスタグランジンというホルモン様物質が発生し、それがGDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)を発現させる。それが痛みを感じるAδ(デルタ)繊維を刺激するため、筋肉痛が起こるという説がある。プロスタグランジン発生からGDNFの発現までに時間がかかるため、遅発性になるというわけだ。
またトレーニングによってブラジキニンという発痛物質が発生する。これは神経成長因子(NGF)を発現させ、痛み受容体であるTRPV1を刺激したり、CGRPやBDNFなどの痛みに関与する神経伝達物質の遺伝子発現を誘導したりして、痛みを感じさせると言われる。
この場合もブラジキニンの発生やNGFの発現に時間がかかるため、遅発性になるということだ。
ブラジキニンもプロスタグランジンと同様、局所的に働くホルモン様物質である。トレーニングによって組織に炎症が起こると、カリクレインという酵素が外に出てきて、それが分解されるとブラジキニンになる。プロスタグランジンは血管の拡張によってブラジキニンの作用を強めるとも言われている。
トレーニングによって筋肉に炎症が起こることは、筋発達の引き金でもある。だからプロスタグランジンやブラジキニンができるのは必要でもあり、これらを抑えてしまうと筋発達を抑制してしまう可能性がある。
重要なのは、プロスタグランジンやブラジキニンを速やかに除去することだ。そうすれば筋発達の引き金は引いたうえで、筋肉痛をケアすることができると考えられる。
プロスタグランジンにはいくつかの種類があるが、痛みの発生に関わってくるのは二系統プロスタグランジンである。この働きを抑えてくれるのが三系統プロスタグランジンだ。
三系統プロスタグランジンの材料になるのが、αリノレン酸やEPAなどのオメガ3脂肪酸である。
αリノレン酸はシソ油やエゴマ油、亜麻仁油などに多く含まれ、EPAはサンマやサバ、アジなどの青魚に多く含まれる。これらを食卓に取り入れるようにすると筋肉痛を早く軽減できるだろう。もちろんサプリメントのEPAも有効に使うことができる。
ブラジキニンを抑えてくれるものはなんだろうか。これはACE(アンジオテンシン変換酵素)によって分解される。ACEはアンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡにする酵素だが、それが血圧を高くすることにつながるため、ACE阻害薬は血圧を下げる薬として使われている。つまりACE阻害薬はブラジキニンの分解を抑えてしまう。
ACEが増えるのは昇圧作用があるため問題だが、通常の生成量ならば問題はまったくない。ACEは亜鉛によってつくられる酵素なので、十分な亜鉛があることによって正常な量のACEをつくることができる。
そして発生したプロスタグランジンやブラジキニンを除去するためには、血流を促進することが必要になる。血流といえばアルギニンやシトルリンによるNO(一酸化窒素)合成が思い浮かぶが、それは悪手である。
実はブラジキニンの発痛作用はNO合成酵素の活性化にも関係しているため、むしろ筋肉痛を悪化させてしまう可能性があるのだ。
別の対策として、ビタミンB群やビタミンEの摂取が有効となる。トレーニングによって乳酸やピルビン酸などが発生し、この「酸」が痛み受容体であるTRPV1を刺激している可能性がある。
この乳酸やピルビン酸の除去に役立ってくれるのが、ビタミンB群(特にB1)なのだ。
またビタミンEは血小板の凝集を抑制し、血液の流れを良くしてくれる。さらに抗酸化作用によってLDLなどの酸化を抑え、血液の粘度を減らしてくれる。そして血管内皮におけるプロスタサイクリンという物質の放出を促し、血管を拡張してくれる。これらの作用によってビタミンEはプロスタグランジンやブラジキニンの除去に役立ってくれると思われる。
ビタミンB群やEを別々に摂るのが面倒だという場合は、ビタミンスーパープレミアムのようなマルチビタミンで摂取するのもいいだろう。
そして筋肉そのものの回復も促進させる必要がある。トレーニングによって起こった炎症から早期に回復し、筋タンパク質合成促進・分解抑制が適切に行われれば、痛みの原因そのものを取り去ることができるわけだ。これにはもちろん十分なたんぱく質摂取が必要となるが、プロテインの他にも、グルタミンやHMBなどのサプリメントが大いに役立ってくれるだろう。
トレーニング初心者がつまずく最初の石は「筋肉痛」だろう。ベテランには心地よい筋肉痛も、慣れていない人にとっては不快でしかない。何度か来る筋肉痛を乗り越えてこそ、初級を脱することができるのだが、それを助けてくれる方法はあるのだろうか。
今回は、筋肉痛のケアに活躍する栄養素について解説する。本記事を日々のトレーニングや栄養摂取に役立てて欲しい。
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【本記事のまとめ】
◇筋肉痛のケアに活躍する栄養素
1. プロスタグランジン対策としてEPAやαリノレン酸
2. ブラジキニン対策のために亜鉛
3. 血行改善のためにビタミンB群とビタミンE
4. 筋肉回復のためにプロテインとグルタミン、HMB
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トレーニングによって起こる筋肉痛は「遅発性筋痛,Delayed Onset Muscle Soreness:DOMS」と言われる。つまりトレーニング中に痛むわけではなく、時間をおいてから痛むわけだ。これはどのようなメカニズムで起こるのだろう?
実は、今でもハッキリとはわかっていない。わかっている範囲で解説すると、トレーニングによってプロスタグランジンというホルモン様物質が発生し、それがGDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)を発現させる。それが痛みを感じるAδ(デルタ)繊維を刺激するため、筋肉痛が起こるという説がある。プロスタグランジン発生からGDNFの発現までに時間がかかるため、遅発性になるというわけだ。
またトレーニングによってブラジキニンという発痛物質が発生する。これは神経成長因子(NGF)を発現させ、痛み受容体であるTRPV1を刺激したり、CGRPやBDNFなどの痛みに関与する神経伝達物質の遺伝子発現を誘導したりして、痛みを感じさせると言われる。
この場合もブラジキニンの発生やNGFの発現に時間がかかるため、遅発性になるということだ。
ブラジキニンもプロスタグランジンと同様、局所的に働くホルモン様物質である。トレーニングによって組織に炎症が起こると、カリクレインという酵素が外に出てきて、それが分解されるとブラジキニンになる。プロスタグランジンは血管の拡張によってブラジキニンの作用を強めるとも言われている。
トレーニングによって筋肉に炎症が起こることは、筋発達の引き金でもある。だからプロスタグランジンやブラジキニンができるのは必要でもあり、これらを抑えてしまうと筋発達を抑制してしまう可能性がある。
重要なのは、プロスタグランジンやブラジキニンを速やかに除去することだ。そうすれば筋発達の引き金は引いたうえで、筋肉痛をケアすることができると考えられる。
プロスタグランジンにはいくつかの種類があるが、痛みの発生に関わってくるのは二系統プロスタグランジンである。この働きを抑えてくれるのが三系統プロスタグランジンだ。
三系統プロスタグランジンの材料になるのが、αリノレン酸やEPAなどのオメガ3脂肪酸である。
αリノレン酸はシソ油やエゴマ油、亜麻仁油などに多く含まれ、EPAはサンマやサバ、アジなどの青魚に多く含まれる。これらを食卓に取り入れるようにすると筋肉痛を早く軽減できるだろう。もちろんサプリメントのEPAも有効に使うことができる。
ブラジキニンを抑えてくれるものはなんだろうか。これはACE(アンジオテンシン変換酵素)によって分解される。ACEはアンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡにする酵素だが、それが血圧を高くすることにつながるため、ACE阻害薬は血圧を下げる薬として使われている。つまりACE阻害薬はブラジキニンの分解を抑えてしまう。
ACEが増えるのは昇圧作用があるため問題だが、通常の生成量ならば問題はまったくない。ACEは亜鉛によってつくられる酵素なので、十分な亜鉛があることによって正常な量のACEをつくることができる。
そして発生したプロスタグランジンやブラジキニンを除去するためには、血流を促進することが必要になる。血流といえばアルギニンやシトルリンによるNO(一酸化窒素)合成が思い浮かぶが、それは悪手である。
実はブラジキニンの発痛作用はNO合成酵素の活性化にも関係しているため、むしろ筋肉痛を悪化させてしまう可能性があるのだ。
別の対策として、ビタミンB群やビタミンEの摂取が有効となる。トレーニングによって乳酸やピルビン酸などが発生し、この「酸」が痛み受容体であるTRPV1を刺激している可能性がある。
この乳酸やピルビン酸の除去に役立ってくれるのが、ビタミンB群(特にB1)なのだ。
またビタミンEは血小板の凝集を抑制し、血液の流れを良くしてくれる。さらに抗酸化作用によってLDLなどの酸化を抑え、血液の粘度を減らしてくれる。そして血管内皮におけるプロスタサイクリンという物質の放出を促し、血管を拡張してくれる。これらの作用によってビタミンEはプロスタグランジンやブラジキニンの除去に役立ってくれると思われる。
ビタミンB群やEを別々に摂るのが面倒だという場合は、ビタミンスーパープレミアムのようなマルチビタミンで摂取するのもいいだろう。
そして筋肉そのものの回復も促進させる必要がある。トレーニングによって起こった炎症から早期に回復し、筋タンパク質合成促進・分解抑制が適切に行われれば、痛みの原因そのものを取り去ることができるわけだ。これにはもちろん十分なたんぱく質摂取が必要となるが、プロテインの他にも、グルタミンやHMBなどのサプリメントが大いに役立ってくれるだろう。