競技パフォーマンスUP
2021年2月、DNSはジャイアンツとオフィシャルニュートリションサプライヤー契約を締結した。ここでは、DNSがジャイアンツに派遣し栄養サポートを行う、公認スポーツ栄養士・斉藤裕子が、選手達の食事情やスポーツ栄養にまつわるさまざまな情報をお伝えしていく。
梅雨時ではありますが、晴れている日もあり暑い日が続いています。夏はもうそこまで来ているのではないか、と感じる日々です。ジャイアンツのホームゲームが行われるのは東京ドームですので、ある程度、気温、湿度が管理されていますが、ビジターゲームは屋外球場が多くなるので、特にこの夏場の時期は気を遣う場面でもあります。
ナイターゲームの場合、試合を行う時間は夜だとしても、練習はまだまだ日の高い時間帯に行います。選手の練習中は熱中症指数計をぶら下げ、気温や湿度などを確認したり、選手の運動量と汗のかき具合を確認しながら、日々対策を練っています。
1軍の試合時には、各球場のスポンサーや球場のケータリング会社によって準備されているドリンクがさまざまですので、それぞれの球場ごとにどんなドリンクがあったかを確認しながら、毎回、次の試合に備えて対策を考えています。その他、チームにはスポンサーさんからのドリンク提供などもあるため、それぞれのドリンクの成分を見て、どんな時にどんなものを飲むかを考えながら選手に伝えています。
また、ここ最近選手からよく質問が来るものとして、EAA(必須アミノ酸)があります。EAAは水に溶かすタイプが多いので、このドリンクで水分補給を行う選手も増えてきています。EAAはアミノ酸ですが、アミノ酸系のサプリメントとしては、チームにDNSのBCAA(分岐鎖アミノ酸)があるので、こちらのアミノ酸との違いは何か、それぞれをどのように活用したらいいか、といった質問に返答することが多くあります。
ここ最近はプレワークアウト用なども含め、ドリンクタイプのものがいろいろとありますが、ひとくちにドリンクといっても、成分はさまざまです。
特に夏場は、汗によって体温調節を行いますが、汗の中にはナトリウムを含むミネラルなども含まれていますので、大量に汗をかいた時は、ミネラル類の補給が必要となります。反対に、大量に汗をかいているのに、ミネラル類を含まないものばかりを飲んでいると、体内のミネラル濃度が薄まり、電解質の濃度が低下してしまいます。この状態になると、薄まった電解質濃度を回復させようと、体内から水分を排出して電解質濃度を保とうとする働きが起きます。この働きを「自発的脱水」と呼びます。こうなると、水を飲んでも脱水から回復できない状況に陥り、疲労や熱中症の原因となります。
よって、こうした脱水状態に陥らないように水分を補給したいので、EAAなどのアミノ酸を溶かす水分をR.E.D.などのスポーツドリンクにしたり、EAAとスポーツドリンクを交互に飲むようにするなどして対応しています。
R.E.D.には、汗で失われるミネラルの他に、たんぱく質がペプチドという状態で入っているので、運動中から筋肉のケアをしてくれます。また、糖質が「クラスターデキストリン®」という種類であるのもポイントです。一般にスポーツドリンクに使用される糖質はブドウ糖やショ糖が多いですが、クラスターデキストリン®はこれらよりも分子が大きく、浸透圧が低く保つことができ、胃からの排出時間がより短くなるので、胃に負担をかけずにエネルギーを補給できるのが特徴です。
水分補給の量は、15~20分に1回を目安に200~250ml程度が理想です。野球の試合で考えると、1イニングに1回は水分補給を行いたいところ。しかし、試合になると、次の打席の準備をしたり、ユニホームやアンダーシャツを着替えたりと、水分補給が後回しになりがちな時もあります。そのため、選手が裏に来たタイミングに声がけを行ったり、試合後にペットボトルどれくらい飲んだかを確認してアドバイスしています。
また、熱中症対策の指標としてよく用いられる指標が尿の色。こちら、自分自身で確認できるわかりやすい指標なのですが、こんな質問がありました。
「サプリメントを飲んでたら、それだけで色が変わるからわからないよ!」
確かに、ビタミン系のサプリメントなどを飲んでいると、それだけで尿の色が黄色っぽくなったりすることがあります。そのため色の判断は難しく、代わりに尿の量や勢いなどで説明しました。選手が自身の身体に興味を持ってくれているからこその質問だと感じました。
また熱中症対策としては、栄養面からだけでなく、トレーナーやS&Cコーチなど、周りのスタッフとの連携も重要なカギになると思います。トレーナーさんやS&Cコーチとは、選手の最近の様子などについてコミュニケーションを取りながら、チーム全体としてバックアップできるようフォローしています。
チームのドリンク類はトレーナーさんの管轄なので、R.E.D.などのスポーツドリンクなどの他に、経口補水液も準備し、いざという時に備えています。経口補水液は、予防のためにと事前に飲みがちですが、ナトリウムなどの電解質がメインなので、どちらかというと脱水が進んだ時に飲むもの、事前の予防としては糖質類を含むスポーツドリンクを飲んでもらい、状況を見て、トレーナーさんと連携して経口補水液を利用するようにしています。
すでに気温も高くなっておりますが、早いうちから対策を取ることで回避できることでもあるので、今後もチーム全体で選手をバックアップできるよう、対策を取っていきたいと思います。
管理栄養士、公認スポーツ栄養士、NSCA-CPT、教育学修士
実践女子大学卒業後、東京学芸大学大学院にて、スポーツバイオメカニクス・運動生理学を専攻。食品メーカーやスポーツアパレルメーカー所属の管理栄養士としてJリーグチームやラグビー、アメフト、自転車、ラクロス等様々なアスリートの試合帯同・栄養サポート、その他アーティストに対するライブに向けた栄養面からのサポートを経験。また、セミナーなどを通し、ジュニア世代から学生アスリートに対する選手育成を担当。2018年よりプロ野球チームに常駐し、パフォーマンスを栄養面から支える。
2021年2月、DNSはジャイアンツとオフィシャルニュートリションサプライヤー契約を締結した。ここでは、DNSがジャイアンツに派遣し栄養サポートを行う、公認スポーツ栄養士・斉藤裕子が、選手達の食事情やスポーツ栄養にまつわるさまざまな情報をお伝えしていく。
梅雨時ではありますが、晴れている日もあり暑い日が続いています。夏はもうそこまで来ているのではないか、と感じる日々です。ジャイアンツのホームゲームが行われるのは東京ドームですので、ある程度、気温、湿度が管理されていますが、ビジターゲームは屋外球場が多くなるので、特にこの夏場の時期は気を遣う場面でもあります。
ナイターゲームの場合、試合を行う時間は夜だとしても、練習はまだまだ日の高い時間帯に行います。選手の練習中は熱中症指数計をぶら下げ、気温や湿度などを確認したり、選手の運動量と汗のかき具合を確認しながら、日々対策を練っています。
1軍の試合時には、各球場のスポンサーや球場のケータリング会社によって準備されているドリンクがさまざまですので、それぞれの球場ごとにどんなドリンクがあったかを確認しながら、毎回、次の試合に備えて対策を考えています。その他、チームにはスポンサーさんからのドリンク提供などもあるため、それぞれのドリンクの成分を見て、どんな時にどんなものを飲むかを考えながら選手に伝えています。
また、ここ最近選手からよく質問が来るものとして、EAA(必須アミノ酸)があります。EAAは水に溶かすタイプが多いので、このドリンクで水分補給を行う選手も増えてきています。EAAはアミノ酸ですが、アミノ酸系のサプリメントとしては、チームにDNSのBCAA(分岐鎖アミノ酸)があるので、こちらのアミノ酸との違いは何か、それぞれをどのように活用したらいいか、といった質問に返答することが多くあります。
ここ最近はプレワークアウト用なども含め、ドリンクタイプのものがいろいろとありますが、ひとくちにドリンクといっても、成分はさまざまです。
特に夏場は、汗によって体温調節を行いますが、汗の中にはナトリウムを含むミネラルなども含まれていますので、大量に汗をかいた時は、ミネラル類の補給が必要となります。反対に、大量に汗をかいているのに、ミネラル類を含まないものばかりを飲んでいると、体内のミネラル濃度が薄まり、電解質の濃度が低下してしまいます。この状態になると、薄まった電解質濃度を回復させようと、体内から水分を排出して電解質濃度を保とうとする働きが起きます。この働きを「自発的脱水」と呼びます。こうなると、水を飲んでも脱水から回復できない状況に陥り、疲労や熱中症の原因となります。
よって、こうした脱水状態に陥らないように水分を補給したいので、EAAなどのアミノ酸を溶かす水分をR.E.D.などのスポーツドリンクにしたり、EAAとスポーツドリンクを交互に飲むようにするなどして対応しています。
R.E.D.には、汗で失われるミネラルの他に、たんぱく質がペプチドという状態で入っているので、運動中から筋肉のケアをしてくれます。また、糖質が「クラスターデキストリン®」という種類であるのもポイントです。一般にスポーツドリンクに使用される糖質はブドウ糖やショ糖が多いですが、クラスターデキストリン®はこれらよりも分子が大きく、浸透圧が低く保つことができ、胃からの排出時間がより短くなるので、胃に負担をかけずにエネルギーを補給できるのが特徴です。
水分補給の量は、15~20分に1回を目安に200~250ml程度が理想です。野球の試合で考えると、1イニングに1回は水分補給を行いたいところ。しかし、試合になると、次の打席の準備をしたり、ユニホームやアンダーシャツを着替えたりと、水分補給が後回しになりがちな時もあります。そのため、選手が裏に来たタイミングに声がけを行ったり、試合後にペットボトルどれくらい飲んだかを確認してアドバイスしています。
また、熱中症対策の指標としてよく用いられる指標が尿の色。こちら、自分自身で確認できるわかりやすい指標なのですが、こんな質問がありました。
「サプリメントを飲んでたら、それだけで色が変わるからわからないよ!」
確かに、ビタミン系のサプリメントなどを飲んでいると、それだけで尿の色が黄色っぽくなったりすることがあります。そのため色の判断は難しく、代わりに尿の量や勢いなどで説明しました。選手が自身の身体に興味を持ってくれているからこその質問だと感じました。
また熱中症対策としては、栄養面からだけでなく、トレーナーやS&Cコーチなど、周りのスタッフとの連携も重要なカギになると思います。トレーナーさんやS&Cコーチとは、選手の最近の様子などについてコミュニケーションを取りながら、チーム全体としてバックアップできるようフォローしています。
チームのドリンク類はトレーナーさんの管轄なので、R.E.D.などのスポーツドリンクなどの他に、経口補水液も準備し、いざという時に備えています。経口補水液は、予防のためにと事前に飲みがちですが、ナトリウムなどの電解質がメインなので、どちらかというと脱水が進んだ時に飲むもの、事前の予防としては糖質類を含むスポーツドリンクを飲んでもらい、状況を見て、トレーナーさんと連携して経口補水液を利用するようにしています。
すでに気温も高くなっておりますが、早いうちから対策を取ることで回避できることでもあるので、今後もチーム全体で選手をバックアップできるよう、対策を取っていきたいと思います。
管理栄養士、公認スポーツ栄養士、NSCA-CPT、教育学修士
実践女子大学卒業後、東京学芸大学大学院にて、スポーツバイオメカニクス・運動生理学を専攻。食品メーカーやスポーツアパレルメーカー所属の管理栄養士としてJリーグチームやラグビー、アメフト、自転車、ラクロス等様々なアスリートの試合帯同・栄養サポート、その他アーティストに対するライブに向けた栄養面からのサポートを経験。また、セミナーなどを通し、ジュニア世代から学生アスリートに対する選手育成を担当。2018年よりプロ野球チームに常駐し、パフォーマンスを栄養面から支える。