体重・筋量UP

プロテインと食欲の関係は?

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プロテインと食欲の関係は?

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デカくしたければ喰らい、ダイエットしたければ喰らわない。簡単なことだ。しかし、そこには障害がある。

それは「食欲」という人間の欲求だ。
デカくしたいのに食欲がなくて食べられない。あるいはダイエットしたいのに食欲が収まらない。よほど強靭な精神力をもっていれば別だが、多くのウォリアーは食欲に悩まされたことがあるはずだ。

 

■食欲を増やす「グレリン」

グレリンというホルモンがある。これは主に胃でつくられ、成長ホルモンを分泌したり、ストレスに対抗したりする作用があるのだが、食欲を増やすという作用もある。ストレスでやけ食いすることがあるが、ストレスのためにグレリンの分泌が増えた結果、食欲が高まっている可能性もある。
グレリンを分泌しないマウスの研究では、ストレス後の不安行動が多くなることが判明した。そのマウスにグレリンを投与すると、不安行動は減少したとのことだ(※1)。

他にも、小腸から出る「コレシストキニン(CCK)」というホルモンもある。このホルモンには、胆汁を出して膵臓から消化液を出させる作用があるのだが、同時に満腹感を脳に届けるシグナルとなる。
またPYY3-36というホルモンも消化管から分泌され、満腹感のシグナルを伝えるといわれている。

普通の食事ならばCCKやPYY3-36というホルモンが分泌されるが、これらは食事量が少なかったりノンカロリーのものだったりすると分泌されない。その結果、食欲を満足させることができなくなる。

 

■ホエイプロテインの作用

実は、ホエイプロテインにはグレリンを減らす作用が認められている。しかも、それだけではない。前述の満腹ホルモンであるCCKを分泌させたり、満腹シグナルを送るペプチドのPYYを増やしたりする作用もあるといわれているのだ(※2, ※3)。実際に大豆プロテインやカゼインと比較した研究でも、ホエイプロテインが最も空腹感を抑える作用が強かったことがわかっている(※4)。

また近年になって発見されたインクレチンと呼ばれる消化管ホルモンがある。その一つ、「GLP-1」には、インスリンの働きを高める作用があるとされている。そのため糖尿病の治療に使われることもあるのだが、糖尿病ではない人がGLP-1製剤を使った研究では、9割の患者に平均で8.4kgの体重減少が見られた(※5)。これは、GLP-1に満腹感を長持ちさせ、食欲を減らす作用があるからとされている。GLP-1は求心性迷走神経を活性化する作用があり(※6)、CCKやPYY、グレリンのシグナルを脳に伝えることを助けてくれるのだ。

実際、朝食前に50gのホエイプロテインを飲んだところ、インスリンの反応が高まり、GLP-1の分泌が増えたという報告がある(※7)。

このように、ホエイプロテインを食前に飲めば食欲を減らすことができる。これはダイエットしたい時の武器として、大いに使えるだろう。朝食代わりにホエイプロテインを飲んだとしても、もちろん問題ない。

 

■トレーニング前のホエイプロテイン

だが、バルクアップしたい時にはどうすればいいのだろう。食欲が低下してロクに食べられないようでは、バルクアップできなくなってしまう。ただし、食欲が低くても問題のないタイミングがある。トレーニング中だ。つまりトレーニング前にホエイプロテインを飲むならば、バルクアップの妨げになることはない。

またトレーニングを開始すると、すぐに筋肉のタンパク合成が高まる。つまりトレーニングを開始した時点で、血中アミノ酸レベルを高めておく必要があるのだ。トレーニング中に血中アミノ酸レベルが低いと、問題が起こる。トレーニングで刺激を与えた部位の筋肉を合成するためにアミノ酸が必要となるのだが、血中アミノ酸レベルが低いと、他の筋肉を分解してアミノ酸を取り出し、血中アミノ酸レベルを高めようとする働きが起こってしまうのだ。

例えば、脚のトレーニングを始めたとしよう。この時、脚の筋タンパクを合成するアミノ酸が必要となる。その際、そのアミノ酸を肩や腕などの筋肉を分解して取り出そうとしてしまう、ということだ。そのため、トレーニングの70分ほど前にプロテインを飲むようにしたい。そうすれば、血中アミノ酸レベルが最大の状態でトレーニングに臨むことができる。

もちろん食欲の問題もなく、筋タンパク合成も高まるし、他の筋肉を分解させずに済むという、一石三鳥の効果を得ることができるわけだ。

 

■就寝中のホエイプロテイン

もう一つ、バルクアップ中にお勧めしたいタイミングがある。それは就寝中だ。冷蔵庫にプロテインドリンクを作り置きし、トイレなどで目覚めたときに飲んで、また床に入るのである。そんな面倒なことはしたくない。睡眠は大事だから途中で起き出すなんてことはしたくない。そう思うウォリアーも多いだろう。

しかし就寝中にまったく栄養摂取をせずにいると、血中アミノ酸レベルが低下し、どうしても筋肉の分解が起こってしまう。逆にホエイプロテインを飲むことができるのならば、むしろ筋肉は分解されず、合成の方向に傾いていく。寝る前に飲むプロテインをわざと多めの水で溶かし、トイレのために目覚めやすくする、という方法もある。心地よい睡眠よりもバルクアップが大事だと考えるウォリアーは、ぜひ試してほしい。

【参考文献】

  • 1:Ghrelin regulates the hypothalamic-pituitary-adrenal axis and restricts anxiety after acute stress. Biol Psychiatry. 2012 Sep 15;72(6):457-65. doi: 10.1016/j.biopsych.2012.03.010. Epub 2012 Apr 21.
  • 2:Dietary whey protein influences plasma satiety-related hormones and plasma amino acids in normal-weight adult women. Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):179-86. doi: 10.1038/ejcn.2014.266. Epub 2015 Jan 7.
  • 3:Whey proteins in the regulation of food intake and satiety. J Am Coll Nutr. 2007 Dec;26(6):704S-12S.
  • 4:Dose-dependent satiating effect of whey relative to casein or soy Physiol Behav. 2009 Mar 23;96(4-5):675-82.
  • 5:A Randomized, Controlled Trial of 3.0 mg of Liraglutide in Weight Management N Engl J Med. 2015 Jul 2;373(1):11-22.
  • 6:Glucagon-like peptide-1 and insulin synergistically activate vagal afferent neurons Neuropeptides. 2017 Oct;65:77-82. doi: 10.1016/j.npep.2017.05.003. Epub 2017 May 25.
  • 7:Incretin, insulinotropic and glucose-lowering effects of whey protein pre-load in type 2 diabetes: a randomised clinical trial. Diabetologia. 2014 Sep;57(9):1807-11. doi: 10.1007/s00125-014-3305-x. Epub 2014 Jul 10.
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デカくしたければ喰らい、ダイエットしたければ喰らわない。簡単なことだ。しかし、そこには障害がある。

それは「食欲」という人間の欲求だ。
デカくしたいのに食欲がなくて食べられない。あるいはダイエットしたいのに食欲が収まらない。よほど強靭な精神力をもっていれば別だが、多くのウォリアーは食欲に悩まされたことがあるはずだ。

 

■食欲を増やす「グレリン」

グレリンというホルモンがある。これは主に胃でつくられ、成長ホルモンを分泌したり、ストレスに対抗したりする作用があるのだが、食欲を増やすという作用もある。ストレスでやけ食いすることがあるが、ストレスのためにグレリンの分泌が増えた結果、食欲が高まっている可能性もある。
グレリンを分泌しないマウスの研究では、ストレス後の不安行動が多くなることが判明した。そのマウスにグレリンを投与すると、不安行動は減少したとのことだ(※1)。

他にも、小腸から出る「コレシストキニン(CCK)」というホルモンもある。このホルモンには、胆汁を出して膵臓から消化液を出させる作用があるのだが、同時に満腹感を脳に届けるシグナルとなる。
またPYY3-36というホルモンも消化管から分泌され、満腹感のシグナルを伝えるといわれている。

普通の食事ならばCCKやPYY3-36というホルモンが分泌されるが、これらは食事量が少なかったりノンカロリーのものだったりすると分泌されない。その結果、食欲を満足させることができなくなる。

 

■ホエイプロテインの作用

実は、ホエイプロテインにはグレリンを減らす作用が認められている。しかも、それだけではない。前述の満腹ホルモンであるCCKを分泌させたり、満腹シグナルを送るペプチドのPYYを増やしたりする作用もあるといわれているのだ(※2, ※3)。実際に大豆プロテインやカゼインと比較した研究でも、ホエイプロテインが最も空腹感を抑える作用が強かったことがわかっている(※4)。

また近年になって発見されたインクレチンと呼ばれる消化管ホルモンがある。その一つ、「GLP-1」には、インスリンの働きを高める作用があるとされている。そのため糖尿病の治療に使われることもあるのだが、糖尿病ではない人がGLP-1製剤を使った研究では、9割の患者に平均で8.4kgの体重減少が見られた(※5)。これは、GLP-1に満腹感を長持ちさせ、食欲を減らす作用があるからとされている。GLP-1は求心性迷走神経を活性化する作用があり(※6)、CCKやPYY、グレリンのシグナルを脳に伝えることを助けてくれるのだ。

実際、朝食前に50gのホエイプロテインを飲んだところ、インスリンの反応が高まり、GLP-1の分泌が増えたという報告がある(※7)。

このように、ホエイプロテインを食前に飲めば食欲を減らすことができる。これはダイエットしたい時の武器として、大いに使えるだろう。朝食代わりにホエイプロテインを飲んだとしても、もちろん問題ない。

 

■トレーニング前のホエイプロテイン

だが、バルクアップしたい時にはどうすればいいのだろう。食欲が低下してロクに食べられないようでは、バルクアップできなくなってしまう。ただし、食欲が低くても問題のないタイミングがある。トレーニング中だ。つまりトレーニング前にホエイプロテインを飲むならば、バルクアップの妨げになることはない。

またトレーニングを開始すると、すぐに筋肉のタンパク合成が高まる。つまりトレーニングを開始した時点で、血中アミノ酸レベルを高めておく必要があるのだ。トレーニング中に血中アミノ酸レベルが低いと、問題が起こる。トレーニングで刺激を与えた部位の筋肉を合成するためにアミノ酸が必要となるのだが、血中アミノ酸レベルが低いと、他の筋肉を分解してアミノ酸を取り出し、血中アミノ酸レベルを高めようとする働きが起こってしまうのだ。

例えば、脚のトレーニングを始めたとしよう。この時、脚の筋タンパクを合成するアミノ酸が必要となる。その際、そのアミノ酸を肩や腕などの筋肉を分解して取り出そうとしてしまう、ということだ。そのため、トレーニングの70分ほど前にプロテインを飲むようにしたい。そうすれば、血中アミノ酸レベルが最大の状態でトレーニングに臨むことができる。

もちろん食欲の問題もなく、筋タンパク合成も高まるし、他の筋肉を分解させずに済むという、一石三鳥の効果を得ることができるわけだ。

 

■就寝中のホエイプロテイン

もう一つ、バルクアップ中にお勧めしたいタイミングがある。それは就寝中だ。冷蔵庫にプロテインドリンクを作り置きし、トイレなどで目覚めたときに飲んで、また床に入るのである。そんな面倒なことはしたくない。睡眠は大事だから途中で起き出すなんてことはしたくない。そう思うウォリアーも多いだろう。

しかし就寝中にまったく栄養摂取をせずにいると、血中アミノ酸レベルが低下し、どうしても筋肉の分解が起こってしまう。逆にホエイプロテインを飲むことができるのならば、むしろ筋肉は分解されず、合成の方向に傾いていく。寝る前に飲むプロテインをわざと多めの水で溶かし、トイレのために目覚めやすくする、という方法もある。心地よい睡眠よりもバルクアップが大事だと考えるウォリアーは、ぜひ試してほしい。

【参考文献】

  • 1:Ghrelin regulates the hypothalamic-pituitary-adrenal axis and restricts anxiety after acute stress. Biol Psychiatry. 2012 Sep 15;72(6):457-65. doi: 10.1016/j.biopsych.2012.03.010. Epub 2012 Apr 21.
  • 2:Dietary whey protein influences plasma satiety-related hormones and plasma amino acids in normal-weight adult women. Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):179-86. doi: 10.1038/ejcn.2014.266. Epub 2015 Jan 7.
  • 3:Whey proteins in the regulation of food intake and satiety. J Am Coll Nutr. 2007 Dec;26(6):704S-12S.
  • 4:Dose-dependent satiating effect of whey relative to casein or soy Physiol Behav. 2009 Mar 23;96(4-5):675-82.
  • 5:A Randomized, Controlled Trial of 3.0 mg of Liraglutide in Weight Management N Engl J Med. 2015 Jul 2;373(1):11-22.
  • 6:Glucagon-like peptide-1 and insulin synergistically activate vagal afferent neurons Neuropeptides. 2017 Oct;65:77-82. doi: 10.1016/j.npep.2017.05.003. Epub 2017 May 25.
  • 7:Incretin, insulinotropic and glucose-lowering effects of whey protein pre-load in type 2 diabetes: a randomised clinical trial. Diabetologia. 2014 Sep;57(9):1807-11. doi: 10.1007/s00125-014-3305-x. Epub 2014 Jul 10.