競技パフォーマンスUP
上腕や肩甲骨、鎖骨、胸骨、肋骨周辺の機構のことを「肩甲帯」と呼ぶ。一般には「肩甲骨周り」と言った方がわかりやすいだろうか。
肩甲帯周辺の筋力を高めたり、可動域を確保したりすることは競技能力の向上に直結する。しかし、ケガをしやすい部位でもある。ケガをすることなく肩甲帯のコンディションを高めていくには、どのようなトレーニングが必要なのだろうか。
知っておきたいのが肩関節の形状だ。肩関節はソケットにボールが入っているような形をしており、可動域は大きいのだが、どうしても不安定になりがち。そのため、肩関節を安定させるためにさまざまな筋肉が活躍する。
ここでウォリアーが特に考慮しておきたいのが「棘下筋」である。一般にトレーニングで鍛えることのできる大胸筋や広背筋は、肩関節を「内旋」する作用がある。腕を内側にねじり込むような動きのことだ。
普通にトレーニングしていると、内旋の筋力ばかりが強くなっていく。そのため外旋させる筋力とのバランスが取れなくなり、ケガを引き起こしてしまうのである。それに対し、外旋を担う筋肉が棘下筋だ(小円筋にも外旋機能があるが、一般に小円筋は棘下筋の補助として働くため、棘下筋を鍛えれば自然と小円筋も鍛えることができる)。
ここからは、棘下筋を鍛える代表的なエクササイズを紹介しよう。
1. ヒジの位置を体側から20度外側、20度前方に固定する。ヒジを固定するため、脇の下にタオルなどを丸めて挟むといい。
2. ヒジは90度前後に曲げる。また手首は自然に掌屈(手首側に曲げる)させる。
3. チューブあるいはケーブルを持つ。あるいは手首に固定する。
4. ヒジが支点となって手首が円を描くように外旋させる。自然に止まる位置まで動かせば十分。
5. 動作はゆっくりと行い、1セットあたり25~30回を目安とする。2~3セットを週2回程度。
一般的なトレーニングだと「ひねる」動作はあまり行わないため、このエクササイズは意外と難しい。ヒジがブレて三角筋を使ってしまいがちなので、そうならないために棘下筋だけを使って行うよう注意したい。
エクスターナルローテーションをしばらく行って棘下筋が強化されてきたら、「キューバンプレス」に挑戦してみよう。棘下筋は速筋繊維が多いため、慣れてきたら高重量を使って鍛えた方が効果は高くなる。
1. バーベルあるいはダンベルを肩幅より一握りずつ広く持つ。
2. アップライトローの要領で、みぞおちの高さに来るまで挙げる。
3. 外旋させながらヒジを伸ばし、上に差し上げる。
4. ゆっくりと同じ軌道で下ろす。
5. 8~10回を2セット。週2回程度。
棘下筋の次は、棘上筋にも目を向けていこう。肩関節を動かすとコリコリ音がすることがある。腕を横に挙げる(外転させる)時、上腕骨と肩甲骨(肩峰)の間に棘上筋や周辺の組織が挟まれることが原因である。これを「肩峰下インピンジメント症候群」と呼ぶ。インピンジメントとは「衝突する」という意味だ。
腕を外転するときは三角筋と棘上筋が働くが、棘上筋には、上腕骨が上方に動くのを抑え、上腕骨をソケット内の正常な位置に収める作用がある。逆に棘上筋が弱いと、上腕骨がソケット内で上方に動いてしまいインピンジメントを引き起こすわけだ。
棘上筋のエクササイズとしては、「Full Can」と呼ばれるものが有効とされる。これは外旋した状態で腕を肩甲骨平面上で挙上するもので、外旋させることによって三角筋の活動を抑えることを目的としている。15回~20回を2~3セット、週2回行うと良いだろう。
どうも肩の調子が悪い。そう感じたら、エクスターナルローテーションやFull Canをプログラムに採り入れてほしい。
また、これらのエクササイズを行うことで肩甲帯の安定性が確保されれば、ケガの予防になるだけでなく、ベンチプレスやミリタリープレスの挙上重量アップにもつながってくるはずだ。
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上腕や肩甲骨、鎖骨、胸骨、肋骨周辺の機構のことを「肩甲帯」と呼ぶ。一般には「肩甲骨周り」と言った方がわかりやすいだろうか。
肩甲帯周辺の筋力を高めたり、可動域を確保したりすることは競技能力の向上に直結する。しかし、ケガをしやすい部位でもある。ケガをすることなく肩甲帯のコンディションを高めていくには、どのようなトレーニングが必要なのだろうか。
知っておきたいのが肩関節の形状だ。肩関節はソケットにボールが入っているような形をしており、可動域は大きいのだが、どうしても不安定になりがち。そのため、肩関節を安定させるためにさまざまな筋肉が活躍する。
ここでウォリアーが特に考慮しておきたいのが「棘下筋」である。一般にトレーニングで鍛えることのできる大胸筋や広背筋は、肩関節を「内旋」する作用がある。腕を内側にねじり込むような動きのことだ。
普通にトレーニングしていると、内旋の筋力ばかりが強くなっていく。そのため外旋させる筋力とのバランスが取れなくなり、ケガを引き起こしてしまうのである。それに対し、外旋を担う筋肉が棘下筋だ(小円筋にも外旋機能があるが、一般に小円筋は棘下筋の補助として働くため、棘下筋を鍛えれば自然と小円筋も鍛えることができる)。
ここからは、棘下筋を鍛える代表的なエクササイズを紹介しよう。
1. ヒジの位置を体側から20度外側、20度前方に固定する。ヒジを固定するため、脇の下にタオルなどを丸めて挟むといい。
2. ヒジは90度前後に曲げる。また手首は自然に掌屈(手首側に曲げる)させる。
3. チューブあるいはケーブルを持つ。あるいは手首に固定する。
4. ヒジが支点となって手首が円を描くように外旋させる。自然に止まる位置まで動かせば十分。
5. 動作はゆっくりと行い、1セットあたり25~30回を目安とする。2~3セットを週2回程度。
一般的なトレーニングだと「ひねる」動作はあまり行わないため、このエクササイズは意外と難しい。ヒジがブレて三角筋を使ってしまいがちなので、そうならないために棘下筋だけを使って行うよう注意したい。
エクスターナルローテーションをしばらく行って棘下筋が強化されてきたら、「キューバンプレス」に挑戦してみよう。棘下筋は速筋繊維が多いため、慣れてきたら高重量を使って鍛えた方が効果は高くなる。
1. バーベルあるいはダンベルを肩幅より一握りずつ広く持つ。
2. アップライトローの要領で、みぞおちの高さに来るまで挙げる。
3. 外旋させながらヒジを伸ばし、上に差し上げる。
4. ゆっくりと同じ軌道で下ろす。
5. 8~10回を2セット。週2回程度。
棘下筋の次は、棘上筋にも目を向けていこう。肩関節を動かすとコリコリ音がすることがある。腕を横に挙げる(外転させる)時、上腕骨と肩甲骨(肩峰)の間に棘上筋や周辺の組織が挟まれることが原因である。これを「肩峰下インピンジメント症候群」と呼ぶ。インピンジメントとは「衝突する」という意味だ。
腕を外転するときは三角筋と棘上筋が働くが、棘上筋には、上腕骨が上方に動くのを抑え、上腕骨をソケット内の正常な位置に収める作用がある。逆に棘上筋が弱いと、上腕骨がソケット内で上方に動いてしまいインピンジメントを引き起こすわけだ。
棘上筋のエクササイズとしては、「Full Can」と呼ばれるものが有効とされる。これは外旋した状態で腕を肩甲骨平面上で挙上するもので、外旋させることによって三角筋の活動を抑えることを目的としている。15回~20回を2~3セット、週2回行うと良いだろう。
どうも肩の調子が悪い。そう感じたら、エクスターナルローテーションやFull Canをプログラムに採り入れてほしい。
また、これらのエクササイズを行うことで肩甲帯の安定性が確保されれば、ケガの予防になるだけでなく、ベンチプレスやミリタリープレスの挙上重量アップにもつながってくるはずだ。
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