健康・体力・美容UP

食の安全 ~サプリメントのアンチ・ドーピング認証の動き ─前編─

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食の安全 ~サプリメントのアンチ・ドーピング認証の動き ─前編─

食の安全 ~サプリメントのアンチ・ドーピング認証の動き ─前編─

「You are what you ate. 人は食によって決まる」

よく使われる言葉です。前回お話しした「エンプティカロリー食品」すなわちジャンクフードばかり食べていると、健康を害してしまいます。DNSが提唱するように、身体を鍛えて質の高い食事やサプリメントを摂れば、強靭な身体が作られます。特に身体が資本のアスリートにとっては、身体を作るための「食の質」に加えて「食の安全」も大事です。

日本において、食品の安全を守る仕組みは、平成15年に制定された食品安全基本法で定められています。食品の中に含まれる危害要因がどのレベルでヒトの健康に悪影響を与えるか。その「リスク評価」を食品安全委員会が行い、関係省庁による「リスク管理」によって、リスクを低減するための適切な措置が取られます。消費者庁が調整役となって、行政機関、消費者、生産者、食品事業者の中で情報を共有する「リスクコミュニケーション」の3要素から構成されています。
つまり「食品は必ずしも100%安全ではない」という前提に立ち、その上でリスクをどれぐらい軽減させるかで、食の安全を担保しているのです。

この考え方と同じなのが、スポーツサプリメントにおけるアンチ・ドーピング対策です。サプリメントは食品扱いですので、食品として上記のような根本的対策が取られていますが、アスリートにとってさらに重要な「禁止物質の混入」については、これまで論じられてきませんでした。ところが今年10月から施行される「スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律」の基本理念にのっとり、われわれサプリメントメーカーは「サプリメントによる非故意的ドーピング違反=いわゆる「うっかりドーピング」を防ぐため、策を講じる義務が生まれました。この際にもやはり、リスクの評価・管理・コミュニケーションが重要になってきます。

昨今、このサプリメントによる「うっかりドーピング」の事例が後を絶ちません(表1)。プロサッカー選手、国体選手、インカレ選手、そしてオリンピック選手までが、その被害にあっています。また、梅肉の濃縮エキス製品や漢方薬の南天入りのど飴にも禁止物質が入っている事実が判明し、スポーツ界に混乱を招くことになりました。では、サプリメントのアンチ・ドーピング対策はどうなっているのでしょう。

年度 競技 禁止物質 制裁
2016 サッカー メチルヘキサアミン 競技成績の失効
自転車 1.テストステロン
1.アンドロステンジオン
競技成績の失効
資格停止4か月間
2017 水泳 1,3.ジメチルブチルアミン 競技成績の失効
資格停止7か月間
2018 水泳 LGD4033
SARMS22
競技中

JADAホームページより抜粋

わが国には「日本アンチ・ドーピング機構(JADA)」が2006年から始めたサプリメントのアンチ・ドーピング認証制度があります。JADAは多額の協賛金を納めた限られたメーカー(現在4社)の製品のみを認証。競技団体や選手に対し、JADA認証マークを与えた製品だけを使うように勧めています。このような認証は「世界アンチ・ドーピング機関(WADA)」はいっさい行っていません。でも、なぜか日本だけ、このようなスキームが成り立っています。これはカルテル(=企業連合)そのものです。

さらに不可解なのは、JADAの認証プログラムにおいて、製造工場は米国のNSF(アメリカ国立科学財団)による「cGMP(製造品質管理基準)」の取得が義務づけられています。ところが、日本国内にあるcGMP取得工場は約20のみ。では、JADAの認証を受けているすべての製品が、cGMP工場で製造されているかというと…。
正直、疑わしいと言わざるを得ません。

米国ではサプリメントを製造する場合、cGMPの取得が法律で義務づけられています。ところが、表1に挙げた「うっかりドーピング事例」の理由は、米国産サプリメントに禁止物質が混入していたことです。
実は多くの市場調査によって、米国で流通しているサプリメントの10~15%近くに禁止物質が混入されていることがわかっています。これは、cGMPがアンチ・ドーピングの観点で工場監査をしていないことが原因です。

つまり、cGMPを取得したからといって、まったく安心することはできないのです。JADAがなぜ、そのような穴だらけの製造品質管理基準の取得を要求しているのでしょう。
実に不可解です。

また、JADAの認証プログラムにおいては、製品の分析結果は開示されません。何をどのような方法で、どのレベルまで分析した上で「安全である」と宣言しているのか、その基準がわからないのは、大きな問題です。
分析機関のデータが正しいことを世界で証明するには、第三機関による認証(ISO17025)を取得する必要があります。ところが、日本でJADAの分析を行っている「公益財団法人日本分析センター」は、サプリメントに含まれる禁止物質の分析に関して、ISO17025を取得していません。
つまり「JADAによる分析の結果には、信頼性がない」ということになります。


(後編に続く)



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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「You are what you ate. 人は食によって決まる」

よく使われる言葉です。前回お話しした「エンプティカロリー食品」すなわちジャンクフードばかり食べていると、健康を害してしまいます。DNSが提唱するように、身体を鍛えて質の高い食事やサプリメントを摂れば、強靭な身体が作られます。特に身体が資本のアスリートにとっては、身体を作るための「食の質」に加えて「食の安全」も大事です。

日本において、食品の安全を守る仕組みは、平成15年に制定された食品安全基本法で定められています。食品の中に含まれる危害要因がどのレベルでヒトの健康に悪影響を与えるか。その「リスク評価」を食品安全委員会が行い、関係省庁による「リスク管理」によって、リスクを低減するための適切な措置が取られます。消費者庁が調整役となって、行政機関、消費者、生産者、食品事業者の中で情報を共有する「リスクコミュニケーション」の3要素から構成されています。
つまり「食品は必ずしも100%安全ではない」という前提に立ち、その上でリスクをどれぐらい軽減させるかで、食の安全を担保しているのです。

この考え方と同じなのが、スポーツサプリメントにおけるアンチ・ドーピング対策です。サプリメントは食品扱いですので、食品として上記のような根本的対策が取られていますが、アスリートにとってさらに重要な「禁止物質の混入」については、これまで論じられてきませんでした。ところが今年10月から施行される「スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律」の基本理念にのっとり、われわれサプリメントメーカーは「サプリメントによる非故意的ドーピング違反=いわゆる「うっかりドーピング」を防ぐため、策を講じる義務が生まれました。この際にもやはり、リスクの評価・管理・コミュニケーションが重要になってきます。

昨今、このサプリメントによる「うっかりドーピング」の事例が後を絶ちません(表1)。プロサッカー選手、国体選手、インカレ選手、そしてオリンピック選手までが、その被害にあっています。また、梅肉の濃縮エキス製品や漢方薬の南天入りのど飴にも禁止物質が入っている事実が判明し、スポーツ界に混乱を招くことになりました。では、サプリメントのアンチ・ドーピング対策はどうなっているのでしょう。

年度 競技 禁止物質 制裁
2016 サッカー メチルヘキサアミン 競技成績の失効
自転車 1.テストステロン
1.アンドロステンジオン
競技成績の失効
資格停止4か月間
2017 水泳 1,3.ジメチルブチルアミン 競技成績の失効
資格停止7か月間
2018 水泳 LGD4033
SARMS22
競技中

JADAホームページより抜粋

わが国には「日本アンチ・ドーピング機構(JADA)」が2006年から始めたサプリメントのアンチ・ドーピング認証制度があります。JADAは多額の協賛金を納めた限られたメーカー(現在4社)の製品のみを認証。競技団体や選手に対し、JADA認証マークを与えた製品だけを使うように勧めています。このような認証は「世界アンチ・ドーピング機関(WADA)」はいっさい行っていません。でも、なぜか日本だけ、このようなスキームが成り立っています。これはカルテル(=企業連合)そのものです。

さらに不可解なのは、JADAの認証プログラムにおいて、製造工場は米国のNSF(アメリカ国立科学財団)による「cGMP(製造品質管理基準)」の取得が義務づけられています。ところが、日本国内にあるcGMP取得工場は約20のみ。では、JADAの認証を受けているすべての製品が、cGMP工場で製造されているかというと…。
正直、疑わしいと言わざるを得ません。

米国ではサプリメントを製造する場合、cGMPの取得が法律で義務づけられています。ところが、表1に挙げた「うっかりドーピング事例」の理由は、米国産サプリメントに禁止物質が混入していたことです。
実は多くの市場調査によって、米国で流通しているサプリメントの10~15%近くに禁止物質が混入されていることがわかっています。これは、cGMPがアンチ・ドーピングの観点で工場監査をしていないことが原因です。

つまり、cGMPを取得したからといって、まったく安心することはできないのです。JADAがなぜ、そのような穴だらけの製造品質管理基準の取得を要求しているのでしょう。
実に不可解です。

また、JADAの認証プログラムにおいては、製品の分析結果は開示されません。何をどのような方法で、どのレベルまで分析した上で「安全である」と宣言しているのか、その基準がわからないのは、大きな問題です。
分析機関のデータが正しいことを世界で証明するには、第三機関による認証(ISO17025)を取得する必要があります。ところが、日本でJADAの分析を行っている「公益財団法人日本分析センター」は、サプリメントに含まれる禁止物質の分析に関して、ISO17025を取得していません。
つまり「JADAによる分析の結果には、信頼性がない」ということになります。


(後編に続く)



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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