競技パフォーマンスUP
Part 1ではSSCによる爆発的なパワー発揮方法を紹介した。 Part 2となる今回は、ストレングストレーニングと柔軟性の関係について解説していこう。
練習前にウォームアップを行い、その中でストレッチをする。一般的に見られる光景だ。ここではストレッチにより柔軟性を高め、ケガを予防することが期待されている。
しかし実は運動前に静的ストレッチをすると、逆に筋力が低下するということがわかってきた。またケガの予防にもそれほど意味がないこともわかってきた。それ以来、ウォームアップにストレッチを採り入れるところは少なくなってきたようだ。
大腿四頭筋の静的ストレッチを10~40秒行ったところ、コントロール群の最大筋力は平均925Nだったのが、ストレッチ群は860N程度にまで低下してしまったという報告があるほか、静的ストレッチ後に筋力が低下したという報告は数多く存在する1,2,3。
またトレーニング経験者を対象にした報告では、筋活動の低下が見られることもあるようだ4。
そして静的ストレッチを行ってもケガのリスクは低下しないという研究も見られるようになり5、今ではウォームアップに静的ストレッチを導入してもケガは減らないというのがコンセンサスになってきている6。
ストレッチで柔軟性が高まるのは間違いない。しかし運動前に行って筋力が低下するのは避けたい。柔軟性を高めるために別の方法はないのだろうか。
それがあるのだ。ネガティブ動作を意識してウェイトトレーニングを行うのである。ネガティブとは、筋肉が伸ばされながら力を発揮することを指して言う。
バーベルカールの場合、肘を曲げてバーを持ち上げる動作をポジティブと呼び、肘を伸ばしてバーを下ろしていく動作がネガティブに相当する。
あるレビューではネガティブを意識したトレーニングによって、静的ストレッチに比べて2倍もの柔軟性が獲得できるようだとしている7。
なぜ柔軟性が高まるのだろうか。筋肉は「サルコメア」という収縮単位がいくつも連なっているのだが、ネガティブトレーニングにより、サルコメアの数が増加する。それによって筋肉が長くなり、柔軟性が獲得できたのではないかというのが研究者たちの推論だ。
スクワットの場合、股関節や足関節(足首)が固いと、下までしゃがむことができない。このような場合、股関節や足関節のストレッチをやるよりも、ある程度の重量を担いでゆっくりと深くしゃがむスクワットをやることで、だんだん深くしゃがめるようになり、柔軟性を獲得できるはずだ。
背中だったらチンニングやダンベルロウイングでゆっくりと下ろしたり、上腕二頭筋だったらインクラインカールでベンチの角度を浅くして行ったり、大腿直筋や腸腰筋の柔軟性が欲しかったらシシースクワットでゆっくりとそれらの筋肉を引き伸ばしていったり、ハムストリングスのためにスティッフレッグドデッドリフトを行ったりなど、様々な局面で応用できる。
普通だったらネガティブ時にはストンと下ろしてしまい、1秒くらいしかかけていないだろう。しかし柔軟性を狙うためには、また後述の筋衛星細胞増加を狙うためには、4~5秒はかけてゆっくりとコントロールしながら下ろすようにしたい。
またネガティブトレーニングは、筋衛星細胞の数も増やすことがわかっている。衛星細胞というのは幼若細胞のことで、これから筋細胞になっていくものだ。昔は筋細胞の数は成人してからは増えないとされていたが、近年になって衛星細胞が発見され、筋肉も細胞数が増えることがわかってきたのである。 普通のトレーニングでも衛星細胞は増えるのだが、特にネガティブトレーニングによって、速筋繊維の衛星細胞が増えるのだ8
バーを持ち上げるだけでなく、下ろすときにこそ筋肉が発達し、柔軟性も獲得できるということだ。これからジムに行くときは、「バーを挙げに行くぜ!」ではなく、「バーを下ろしに行くぜ!」と言うようにしたほうがいいだろう。
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しかし実は運動前に静的ストレッチをすると、逆に筋力が低下するということがわかってきた。またケガの予防にもそれほど意味がないこともわかってきた。それ以来、ウォームアップにストレッチを採り入れるところは少なくなってきたようだ。
大腿四頭筋の静的ストレッチを10~40秒行ったところ、コントロール群の最大筋力は平均925Nだったのが、ストレッチ群は860N程度にまで低下してしまったという報告があるほか、静的ストレッチ後に筋力が低下したという報告は数多く存在する1,2,3。
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スクワットの場合、股関節や足関節(足首)が固いと、下までしゃがむことができない。このような場合、股関節や足関節のストレッチをやるよりも、ある程度の重量を担いでゆっくりと深くしゃがむスクワットをやることで、だんだん深くしゃがめるようになり、柔軟性を獲得できるはずだ。
背中だったらチンニングやダンベルロウイングでゆっくりと下ろしたり、上腕二頭筋だったらインクラインカールでベンチの角度を浅くして行ったり、大腿直筋や腸腰筋の柔軟性が欲しかったらシシースクワットでゆっくりとそれらの筋肉を引き伸ばしていったり、ハムストリングスのためにスティッフレッグドデッドリフトを行ったりなど、様々な局面で応用できる。
普通だったらネガティブ時にはストンと下ろしてしまい、1秒くらいしかかけていないだろう。しかし柔軟性を狙うためには、また後述の筋衛星細胞増加を狙うためには、4~5秒はかけてゆっくりとコントロールしながら下ろすようにしたい。
またネガティブトレーニングは、筋衛星細胞の数も増やすことがわかっている。衛星細胞というのは幼若細胞のことで、これから筋細胞になっていくものだ。昔は筋細胞の数は成人してからは増えないとされていたが、近年になって衛星細胞が発見され、筋肉も細胞数が増えることがわかってきたのである。 普通のトレーニングでも衛星細胞は増えるのだが、特にネガティブトレーニングによって、速筋繊維の衛星細胞が増えるのだ8
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