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速報「第15回 国際スポーツ栄養学会(ISSN)」に参加して

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速報「第15回 国際スポーツ栄養学会(ISSN)」に参加して

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6月7日~10日にフロリダ州クリアウォーターにて開催された第15回国際スポーツ栄養学会(ISSN : International Society of Sports Nutrition)で得た、ホットなトピックをお届けします。

今回初めてISSNに参加したのだが、スポーツ栄養学の最先端をいく研究者や、実際にアスリートを指導しているスポーツ栄養士、ストレングス・アスレチックトレーナーの集まりで、「流石アメリカ!」と思わせる学会でした。大会長のDr. Shawn Arent(Rutgers University)をはじめ、写真のDr. Darryn Willoughby(Bayer University)など、スポーツ栄養学の権威でありながらムキムキでもある科学者の集団です。彼ら自身が発する研究成果は一目瞭然で、説得力があるのは言うまでもありません。

今回この学会に出席した理由の一つは、我々が完全和訳をしたISSNの『たんぱく質と運動』に関して、学会創立者のDr. Jose Antonio (Nova Southeastern University)に直接お礼を言うことと、来月早々に出る予定の『運動とスポーツ栄養:研究とリコメンデーション」も翻訳を許可してもらうことでした。『たんぱく質と運動』は2018年に出たばかりの最新情報が満載で、プロテインを常用している皆様には興味深い内容と思いますので、是非一読ください。また、『研究とリコメンデーション』は2010年の改訂から、さらに進んだ研究や新しい知見が盛り込まれる予定です。こちらも早々に和訳しますので楽しみにしていてください。

特に今回私の興味を引いたのが、Mr. Rick Collinsという弁護士によるサプリメント業界における最近の話題として、SARMs (Selective Androgen Receptor Modulator)についての講演でした。これは2008年からWADA禁止物質に指定された比較的新しいジャンルのもので、皆様の記憶にもあるかと思いますが、水泳の古賀淳也選手で陽性反応を示したのがこのSARMs (LGD-4033とSARMs-22)でした。この件は今後の日本スポーツ仲裁機構による審判の行方を見守っていきたいと思いますが、意図的なドーピングではなく、粗悪なサプリメントによる「うっかりドーピング」であるならば未だ救われるところです。

SARMsは日本語では「選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子」といって、薬効としてはステロイドのようなものです。勿論、健康への被害も色々と報告されていて、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、「肝毒性など命に係わる副作用の発生や、心臓発作や脳卒中などのリスクを上げる可能性がある」という声明を出しています。
(https://www.fda.gov/newsevents/newsroom/fdainbrief/ucm583021.htm)

アメリカではSARMsは別名「合法ステロイド」とも言われています。それは、未だ法整備が整っていないので、ステロイドやコカインのように麻薬扱いになっていないからです。しかし、今年4月にはS.2742: SARMs Control Actという法案が国会に提出されており、規制する動きは既に始まっています。
https://www.govtrack.us/congress/bills/115/s2742

更にMr. Collinsはサプリメントがアンチ・ドーピング認証を受けている重要性を力説していました。DNSが取得したインフォームドチョイスもスライドに紹介され、改めてその権威やグローバルスタンダードであることを再認識しました。古賀選手も、もし「うっかりドーピング」だったならば、インフォームドチョイス認証を受けている製品を選択しておけばこのような事件は起こらなかったに違いありません。

その他、「Anabolic Resistance(同化抵抗性)」についても議論されました。年齢とともに筋肉が付きにくくなってサルコペニア(加齢による骨格筋の低下)に発展する可能性があるという概念です。結論から言いますと、高齢者も若年者と変わらない筋肉合成能を持ち備えており、適度のレジスタンス運動と適量のたんぱく質摂取によって筋肉は付くということです。特にレジスタンス運動後3時間以内に0.4g/㎏体重のたんぱく質と0.1g/㎏体重のクレアチン摂取が高齢者において筋肉合成を促進するのに効果的と結論付けています。私を含め学会参加者の多くが年齢を重ねており、自分たちの老後に向けて希望とやる気が出たことと思います。



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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6月7日~10日にフロリダ州クリアウォーターにて開催された第15回国際スポーツ栄養学会(ISSN : International Society of Sports Nutrition)で得た、ホットなトピックをお届けします。

今回初めてISSNに参加したのだが、スポーツ栄養学の最先端をいく研究者や、実際にアスリートを指導しているスポーツ栄養士、ストレングス・アスレチックトレーナーの集まりで、「流石アメリカ!」と思わせる学会でした。大会長のDr. Shawn Arent(Rutgers University)をはじめ、写真のDr. Darryn Willoughby(Bayer University)など、スポーツ栄養学の権威でありながらムキムキでもある科学者の集団です。彼ら自身が発する研究成果は一目瞭然で、説得力があるのは言うまでもありません。

今回この学会に出席した理由の一つは、我々が完全和訳をしたISSNの『たんぱく質と運動』に関して、学会創立者のDr. Jose Antonio (Nova Southeastern University)に直接お礼を言うことと、来月早々に出る予定の『運動とスポーツ栄養:研究とリコメンデーション」も翻訳を許可してもらうことでした。『たんぱく質と運動』は2018年に出たばかりの最新情報が満載で、プロテインを常用している皆様には興味深い内容と思いますので、是非一読ください。また、『研究とリコメンデーション』は2010年の改訂から、さらに進んだ研究や新しい知見が盛り込まれる予定です。こちらも早々に和訳しますので楽しみにしていてください。

特に今回私の興味を引いたのが、Mr. Rick Collinsという弁護士によるサプリメント業界における最近の話題として、SARMs (Selective Androgen Receptor Modulator)についての講演でした。これは2008年からWADA禁止物質に指定された比較的新しいジャンルのもので、皆様の記憶にもあるかと思いますが、水泳の古賀淳也選手で陽性反応を示したのがこのSARMs (LGD-4033とSARMs-22)でした。この件は今後の日本スポーツ仲裁機構による審判の行方を見守っていきたいと思いますが、意図的なドーピングではなく、粗悪なサプリメントによる「うっかりドーピング」であるならば未だ救われるところです。

SARMsは日本語では「選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子」といって、薬効としてはステロイドのようなものです。勿論、健康への被害も色々と報告されていて、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、「肝毒性など命に係わる副作用の発生や、心臓発作や脳卒中などのリスクを上げる可能性がある」という声明を出しています。
(https://www.fda.gov/newsevents/newsroom/fdainbrief/ucm583021.htm)

アメリカではSARMsは別名「合法ステロイド」とも言われています。それは、未だ法整備が整っていないので、ステロイドやコカインのように麻薬扱いになっていないからです。しかし、今年4月にはS.2742: SARMs Control Actという法案が国会に提出されており、規制する動きは既に始まっています。
https://www.govtrack.us/congress/bills/115/s2742

更にMr. Collinsはサプリメントがアンチ・ドーピング認証を受けている重要性を力説していました。DNSが取得したインフォームドチョイスもスライドに紹介され、改めてその権威やグローバルスタンダードであることを再認識しました。古賀選手も、もし「うっかりドーピング」だったならば、インフォームドチョイス認証を受けている製品を選択しておけばこのような事件は起こらなかったに違いありません。

その他、「Anabolic Resistance(同化抵抗性)」についても議論されました。年齢とともに筋肉が付きにくくなってサルコペニア(加齢による骨格筋の低下)に発展する可能性があるという概念です。結論から言いますと、高齢者も若年者と変わらない筋肉合成能を持ち備えており、適度のレジスタンス運動と適量のたんぱく質摂取によって筋肉は付くということです。特にレジスタンス運動後3時間以内に0.4g/㎏体重のたんぱく質と0.1g/㎏体重のクレアチン摂取が高齢者において筋肉合成を促進するのに効果的と結論付けています。私を含め学会参加者の多くが年齢を重ねており、自分たちの老後に向けて希望とやる気が出たことと思います。



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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