競技パフォーマンスUP

圧倒的フィジカルで実現する「世界基準のフットボール」  ~法政オレンジ・モンスター化プロジェクト2018 Part.1

圧倒的フィジカルで実現する「世界基準のフットボール」
~法政オレンジ・モンスター化プロジェクト2018 Part.1

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圧倒的フィジカルで実現する「世界基準のフットボール」  ~法政オレンジ・モンスター化プロジェクト2018 Part.1

圧倒的フィジカルで実現する「世界基準のフットボール」
~法政オレンジ・モンスター化プロジェクト2018 Part.1

(この記事は2018年3月に公開されたものです)

今年度から有澤玄監督による新体制となった、法政大学アメリカンフットボール部オレンジ。2017年は関東大学アメリカンフットボールリーグTOP8で3位。目標としていた社会人超えはならなかったが、リーグ最終戦では大学日本一となった日本大学フェニックスに競り勝ち、TOP8の3位として出場したTokyo Bowlでは関西の古豪・京都大学ギャングスターズから勝利を挙げた。そして2018年も引き続き、フィジカルとファンダメンタルを軸に据えた「世界基準のフットボール」の実現に向け、チーム作りを行っている。

■試合を重ねるにつれ、負傷者が減っていった。

「今年のテーマは『感謝』。昨年は中央大と早稲田大に敗れるなど、苦しいシーズンを送りました。しかしチームの基盤を築く上では、非常に大事な1年となったのは間違いありません。昨年しっかりと基盤を作り上げることができたからこそ、今年、そこに上積みしていける。頑張ってくれた昨年の4年生、そしてサポートして下さる皆さんには感謝しかありません。そんな思いで、今年は感謝という言葉をテーマに設定しました」

語るのは今年、ヘッドコーチから昇格した有澤玄監督。昨年から本格的に、ストレングスを重視したチーム作りを開始した。振り返ると、フィジカルトレーニングに関してはもともとチームにノウハウが少なく、取り組み自体が正直、甘かったという。

有澤玄 監督
有澤玄 監督

「もともと法政は『フットボールが上手ければパワーはそれほどなくてもいい。筋力よりもフットボールIQ』というカルチャーのチーム。ウエイトトレーニングについては、やっている選手はやっているけれど、ぜんぜん、という選手もいた。その結果、例えば体重60㎏台のディフェンスバックが加速してきた体重90㎏の選手とコンタクトし、大きなケガを負ってしまうようなケースが見られました。

昨年初めに、安田秀一総監督(当時)が選手達に『君達は本当に死んでも勝ちたいのか?』と問いかけました。もちろん、実際に死んでしまってでも勝ちたいと願う選手は、一人もいませんでした。当然です。それならばどうするか。アメリカンフットボールは素晴らしいスポーツですが、下手をすると深刻なケガをする。最悪は死んでしまう可能性だってあるわけです。そんな事態を避けるには、大きくて強い身体を作ることが欠かせません。正しいウエイトトレーニングに取り組み、質の高い栄養をしっかり摂り、よく眠る。アスリートとしてはいたって当然のことですが、一昨年までのチームには身についていない面があった。つまり、カルチャーから変えていかねばならなかったのです」

有澤玄 監督有澤玄 監督

年間を通じてフィジカルトレーニングにしっかりと取り組んだ成果は、確実に出た。チームは身長比で適正体重を算出し、ポジション別ノルマを設定。クリアできない選手は練習でも試合でもプレーをさせなかった。じっくりと身体を作ったことで、キャリアの浅い選手が下級生のうちに大きな負傷をするケースは皆無。徹底した身体作りと体重管理、そしてヘルメットでヒットしないショルダータックリングの習得と技術の成熟、疲労を考慮したコンディショニングなどが奏功した。それにより、昨年秋のシーズンでは、試合におけるケガは、リーグ戦を重ねるにつれて減少していった。

「4年生のエースQBが試合中のアクシデントで負傷してしまったのは痛かったですが、他にボロボロになってしまったポジションはなかった。多くのチームはリーグ戦が深まるにつれてケガ人だらけになっていきますが、ウチがそういった状況に陥ることは最後までありませんでした。

ただし、フィジカルであらゆる相手を圧倒できたかというと、それは微妙なところ。フィジカルで勝てた部分もありましたが、全局面で圧倒できたかというと、決してそうではない。春にも戦った京都大学とTokyo Bowlで対戦しましたが、多くの選手が春よりもしっかり戦えたと語っていました。その経験は自信になったと思います。でもまだまだ、関西学院大や立命館大といった関西学生リーグ上位のレベルに追いつけてはいませんし、社会人チームに勝つという目標も、まだ遠い先にあります」

■本気で肉体改造をしたい選手がストイックに取り組んだら、どうなるのか。

春シーズンの過ごし方については、昨年からの路線を継続。オープン戦を減らし(4試合)、フィジカルの向上とファンダメンタルの習得に勤しむ。3月の時点で比べると、昨年とは比較にならぬハイレベルなトレーニングができているという。そして昨年に引き続き、2月より「モンスタープロジェクト」がスタート。昨年はオフェンスライン(OL)とディフェンスバック(DB)の選手11人を対象にサプリメントを提供し、5月から半年間をかけて食事と体重の管理を行ったが、今年は方針を変更。期間は2月から4月末までの3カ月間とし、対象選手は希望者とした。

「今年は、昨年よりも本気度の高いメンバーでやります。本気で肉体改造をしたいと思う選手達がストイックに取り組んだらどうなるのか。昨年のプロジェクトを見て、筋肉と体重を増やすことの難しさを痛感しました。もちろん効果は少なからず出たのですが、これだけしっかりとやったのだから、もっと出てもいい。そう思いました。そこで今年は希望者制にして、管理栄養士さんとも相談し、6名限定で行うことにしました。今年のメンバーには興味と期待がすごくあります」

寺林翼 選手
寺林翼 選手

今回志願してきた選手は、新4年生のラインバッカー(LB・主将)寺林翼、ランニングバック(RB)小林篤実、新3年生のディフェンスバック(DB)勝田駿、新2年生のディフェンスライン(DL)長内駿弥、小山内聡平、内田優の計6名。2月から本格的なウエイトトレーニングと増量に取り組み、順調にサイズアップを続けている。

「キャプテンのLB寺林とRB小林は今回、一番に志願してきました。二人ともストイックな選手です。寺林はすでに100㎏近くになっていますが、体脂肪をなるべく減らして動きのキレを上げていきたいようです。

寺林翼 選手寺林翼 選手

そしてRB小林は昨年DLだった選手で、今年RBに再コンバートされました。彼は現在100㎏。RBとしては異例の重さですが、この体重で体脂肪率は低く、スピードも抜群。40ヤードを4秒6ぐらいで走ります。これぐらいの体重のRBは他のチームにもたまにいますが、彼ほどのスピードはない。かなり期待を寄せています」

そしてDB勝田は昨年に続いてのチャレンジ。前回は思うような増量ができず、負傷もあって満足のいくシーズンを送ることができなかった。

小林篤実 選手
小林篤実 選手

「毎日練習をしながら筋肉を増やし、身体を大きくする増量は、減量と比べてずっと難しいものです。DBは運動量も多いですからね。彼は昨年負傷したこともあって、不本意なシーズンを送らざるを得なかった。その悔しさからエントリーしてきたのだと思います。苦しいと言いながらも、一所懸命食べて、トレーニングに励んでいます。

先ほど言った小林のように、最近はRBやWRも大型化しています。90㎏や100㎏ある選手が加速して走ってくるのをDBはタックルせねばなりませんので、60㎏台や70㎏台では正直、厳しい。ですから頑張ってほしいです。

小林篤実 選手小林篤実 選手

そして新2年生のDLの選手達は、順調にサイズアップしています。特に内田は90㎏からスタートしてひと月で97~98㎏まで増量しました。見た目がまるで変わりましたので、あとはそれをフットボールの動きに落とし込むことです」

■選手達の意識が変わってきた。

2月にスタートした今回のプロジェクト。1カ月を終えた時点での印象について、ニュートリションを担当する株式会社ドームの管理栄養士・小井土幸恵は語る。

「今年は特にみんな意欲的で、いたって順調に大きくなっています。ひと月が経った時点で、体重は平均でプラス5㎏ほど。胸囲もみんな6~7㎝ほど大きくなっています。体重を増やしすぎて膝に痛みが出たり、身体の重さを感じるのはよくありません。まだ8週間あるので、今後の数字の伸びを見て、有澤監督とストレングスコーチ、アスレチックトレーナーとデータを共有し、方針を作って選手にフィードバックするつもりです」

1日3回の食事の間で2~3時間おきにサプリメントと補食を摂取、毎食の写真送付を義務づける。毎日摂取するたんぱく質の総量は、体重(㎏)×2g量。そして1回あたりの摂取量目安はたんぱく質量として0.25g/体重kg(体重80kgの人で20g)。選ばれた6人は3食の写真をメッセージアプリで送り、それに対して全体量が足りているか、栄養素の偏りがないか、などをフィードバックする。そして今年は選手のポジションとサイズを考慮し、個別にサプリメントプログラムを組んでいる。

【サプリメントの組み込み例:LB寺林翼の場合】

行動目標

全体 (内サプリメント)
エネルギー摂取目標(kcal) 5000 800
たんぱく摂取取目標(g) 200 70

サプリメント基本パターン

起床
朝食後 0
間食 パワーゼリー
昼食後 ZMA
練習前 BCAA、パワーゼリー
練習中 R.E.D
練習後 ホエイプロテインSPクレアチン
エナジープラス(0.8杯)
夕食後 ZMA
就寝前 プロテインホエイ100
就寝
※商品は2018年時点のものです

サプリメント栄養価

エネルギー kcal 863kcal
プロテイン g 75.1g
脂質 g 5.0g
炭水化物 g 128.5g

「みんな頑張っていますが選手の食事環境はさまざま。外食中心の選手もいれば、自宅で3食を食べている選手もいますし、自宅がグラウンドから遠いため、家に帰るまでの間に1食を食べ、自宅で夜食を摂る選手もいます。

今回のメンバーでは、一番体重の軽い勝田君がでに体重を4.1㎏、胸囲を6.6㎝増やしています。彼はすごく変わりました。ほぼ毎食自宅で食事していますが、最近はそれに加え、補食として豆腐や卵を食べたり、牛乳を飲んだり、というように変わってきました。

もちろん、他の選手も意識が高まってきています。毎日3食と練習後のプロテインだけを摂っていた選手が練習前にバナナを食べて糖質をしっかり補給したり、よりたんぱく質の多い食事をするようになるなど、明らかに変わってきました」

■今年は特に、しっかりと効率を追い求める。

昨年の増量プロジェクトは5月から11月の半年間。だが今年は、シーズンイン当初の2月初旬から4月末までの3カ月とした。

法政オレンジが抱える環境面のハンデが、キャンパスとグラウンドの移動だ。授業が始まると、選手の多くは自宅から都心の市ヶ谷キャンパスに通学。授業を受け、午後~夕方にかけて川崎市の武蔵小杉グラウンドに移動する。そして夕方から夜にかけて練習やミーティングを行い、深夜に帰宅。1時間以上かけて帰宅するのもざらで、自宅で食事を終えるのが深夜になる選手も多い。特に下級生は翌日も午前から授業がある場合も多く、睡眠時間を十分に確保しきれなかったり、食欲が湧かずに朝食をしっかり摂れない選手もいた。有澤玄監督は語る。

「授業が始まったり、グラウンドでの練習が増えたり試合が始まったりすると、体重を増やすことに専念しにくくなります。だからこそ、この時期に作ってしまおうということ。今は春休み中で、練習はフィジカルとファンダメンタルの習得が中心。そのため、この時期にしっかり身体を作っておき、5月以降は試合などでやや緩やかなペースになりますが、しっかりと上げていきます。

今はスタイルしての練習はほとんどそれほど行っていません。安全面を考慮して、春の試合数も計4試合のみに絞り、スタイルしての練習期間も減らし、身体を大きくします。そういったやり方自体は昨年とあまり変わっていないのですが、今年は昨年しっかりと土台を作れているので、高いレベルからスタートできた。もっとやらせたい気持ちはありますし、他の学校は結構やっているとも聞きますが、ウチは我慢。やらせたいけれども我慢です。春に関しては試合の勝ち負けはいっさい気にせず、自分達のフィジカルでどこまで戦えるか、実感してもらおうと思います。

特に気をつけているのが、ダラダラとやらせないこと。学生は大学が休みの時は時間がたくさんあるので、ついメリハリなく長時間のトレーニングをしてしまう。これは最近聞いた話なのですが、練習の疲労は強度より長さから来るそうなんです。強度の少ない練習をダラダラと行うぐらいなら、試合と同じぐらい気持ちの入った練習を1時間する方がいいそうです。

そして栄養と質の高い睡眠をちゃんと取り、時には遊ぶことだって必要。学生ですから、学生らしい生活をさせることも大事です。今までは学生に対し、それほど効率を求めてこなかった。でも今年は違う。しっかりと効率を追い求めることで、大学とグラウンドが離れている、食事を全員で一つの場所で摂れない、学生寮がない、といったハンデを、少しでも埋めていこうと考えています」

目指すのは、世界基準のフィジカル。そして今年もシーズン最後の1プレーまで成長を続け、最後は社会人ナンバーワンのチームに勝つ。大きな夢とともに、法政オレンジは今年も進撃を続ける。

※パワーゼリー、ZMAスーパープレミアム、エナジープラスは現在終売しております。

法政オレンジ

(Part.2を読む)

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(この記事は2018年3月に公開されたものです)

今年度から有澤玄監督による新体制となった、法政大学アメリカンフットボール部オレンジ。2017年は関東大学アメリカンフットボールリーグTOP8で3位。目標としていた社会人超えはならなかったが、リーグ最終戦では大学日本一となった日本大学フェニックスに競り勝ち、TOP8の3位として出場したTokyo Bowlでは関西の古豪・京都大学ギャングスターズから勝利を挙げた。そして2018年も引き続き、フィジカルとファンダメンタルを軸に据えた「世界基準のフットボール」の実現に向け、チーム作りを行っている。

■試合を重ねるにつれ、負傷者が減っていった。

「今年のテーマは『感謝』。昨年は中央大と早稲田大に敗れるなど、苦しいシーズンを送りました。しかしチームの基盤を築く上では、非常に大事な1年となったのは間違いありません。昨年しっかりと基盤を作り上げることができたからこそ、今年、そこに上積みしていける。頑張ってくれた昨年の4年生、そしてサポートして下さる皆さんには感謝しかありません。そんな思いで、今年は感謝という言葉をテーマに設定しました」

語るのは今年、ヘッドコーチから昇格した有澤玄監督。昨年から本格的に、ストレングスを重視したチーム作りを開始した。振り返ると、フィジカルトレーニングに関してはもともとチームにノウハウが少なく、取り組み自体が正直、甘かったという。

有澤玄 監督
有澤玄 監督

「もともと法政は『フットボールが上手ければパワーはそれほどなくてもいい。筋力よりもフットボールIQ』というカルチャーのチーム。ウエイトトレーニングについては、やっている選手はやっているけれど、ぜんぜん、という選手もいた。その結果、例えば体重60㎏台のディフェンスバックが加速してきた体重90㎏の選手とコンタクトし、大きなケガを負ってしまうようなケースが見られました。

昨年初めに、安田秀一総監督(当時)が選手達に『君達は本当に死んでも勝ちたいのか?』と問いかけました。もちろん、実際に死んでしまってでも勝ちたいと願う選手は、一人もいませんでした。当然です。それならばどうするか。アメリカンフットボールは素晴らしいスポーツですが、下手をすると深刻なケガをする。最悪は死んでしまう可能性だってあるわけです。そんな事態を避けるには、大きくて強い身体を作ることが欠かせません。正しいウエイトトレーニングに取り組み、質の高い栄養をしっかり摂り、よく眠る。アスリートとしてはいたって当然のことですが、一昨年までのチームには身についていない面があった。つまり、カルチャーから変えていかねばならなかったのです」

有澤玄 監督有澤玄 監督

年間を通じてフィジカルトレーニングにしっかりと取り組んだ成果は、確実に出た。チームは身長比で適正体重を算出し、ポジション別ノルマを設定。クリアできない選手は練習でも試合でもプレーをさせなかった。じっくりと身体を作ったことで、キャリアの浅い選手が下級生のうちに大きな負傷をするケースは皆無。徹底した身体作りと体重管理、そしてヘルメットでヒットしないショルダータックリングの習得と技術の成熟、疲労を考慮したコンディショニングなどが奏功した。それにより、昨年秋のシーズンでは、試合におけるケガは、リーグ戦を重ねるにつれて減少していった。

「4年生のエースQBが試合中のアクシデントで負傷してしまったのは痛かったですが、他にボロボロになってしまったポジションはなかった。多くのチームはリーグ戦が深まるにつれてケガ人だらけになっていきますが、ウチがそういった状況に陥ることは最後までありませんでした。

ただし、フィジカルであらゆる相手を圧倒できたかというと、それは微妙なところ。フィジカルで勝てた部分もありましたが、全局面で圧倒できたかというと、決してそうではない。春にも戦った京都大学とTokyo Bowlで対戦しましたが、多くの選手が春よりもしっかり戦えたと語っていました。その経験は自信になったと思います。でもまだまだ、関西学院大や立命館大といった関西学生リーグ上位のレベルに追いつけてはいませんし、社会人チームに勝つという目標も、まだ遠い先にあります」

■本気で肉体改造をしたい選手がストイックに取り組んだら、どうなるのか。

春シーズンの過ごし方については、昨年からの路線を継続。オープン戦を減らし(4試合)、フィジカルの向上とファンダメンタルの習得に勤しむ。3月の時点で比べると、昨年とは比較にならぬハイレベルなトレーニングができているという。そして昨年に引き続き、2月より「モンスタープロジェクト」がスタート。昨年はオフェンスライン(OL)とディフェンスバック(DB)の選手11人を対象にサプリメントを提供し、5月から半年間をかけて食事と体重の管理を行ったが、今年は方針を変更。期間は2月から4月末までの3カ月間とし、対象選手は希望者とした。

「今年は、昨年よりも本気度の高いメンバーでやります。本気で肉体改造をしたいと思う選手達がストイックに取り組んだらどうなるのか。昨年のプロジェクトを見て、筋肉と体重を増やすことの難しさを痛感しました。もちろん効果は少なからず出たのですが、これだけしっかりとやったのだから、もっと出てもいい。そう思いました。そこで今年は希望者制にして、管理栄養士さんとも相談し、6名限定で行うことにしました。今年のメンバーには興味と期待がすごくあります」

寺林翼 選手
寺林翼 選手

今回志願してきた選手は、新4年生のラインバッカー(LB・主将)寺林翼、ランニングバック(RB)小林篤実、新3年生のディフェンスバック(DB)勝田駿、新2年生のディフェンスライン(DL)長内駿弥、小山内聡平、内田優の計6名。2月から本格的なウエイトトレーニングと増量に取り組み、順調にサイズアップを続けている。

「キャプテンのLB寺林とRB小林は今回、一番に志願してきました。二人ともストイックな選手です。寺林はすでに100㎏近くになっていますが、体脂肪をなるべく減らして動きのキレを上げていきたいようです。

寺林翼 選手寺林翼 選手

そしてRB小林は昨年DLだった選手で、今年RBに再コンバートされました。彼は現在100㎏。RBとしては異例の重さですが、この体重で体脂肪率は低く、スピードも抜群。40ヤードを4秒6ぐらいで走ります。これぐらいの体重のRBは他のチームにもたまにいますが、彼ほどのスピードはない。かなり期待を寄せています」

そしてDB勝田は昨年に続いてのチャレンジ。前回は思うような増量ができず、負傷もあって満足のいくシーズンを送ることができなかった。

小林篤実 選手
小林篤実 選手

「毎日練習をしながら筋肉を増やし、身体を大きくする増量は、減量と比べてずっと難しいものです。DBは運動量も多いですからね。彼は昨年負傷したこともあって、不本意なシーズンを送らざるを得なかった。その悔しさからエントリーしてきたのだと思います。苦しいと言いながらも、一所懸命食べて、トレーニングに励んでいます。

先ほど言った小林のように、最近はRBやWRも大型化しています。90㎏や100㎏ある選手が加速して走ってくるのをDBはタックルせねばなりませんので、60㎏台や70㎏台では正直、厳しい。ですから頑張ってほしいです。

小林篤実 選手小林篤実 選手

そして新2年生のDLの選手達は、順調にサイズアップしています。特に内田は90㎏からスタートしてひと月で97~98㎏まで増量しました。見た目がまるで変わりましたので、あとはそれをフットボールの動きに落とし込むことです」

■選手達の意識が変わってきた。

2月にスタートした今回のプロジェクト。1カ月を終えた時点での印象について、ニュートリションを担当する株式会社ドームの管理栄養士・小井土幸恵は語る。

「今年は特にみんな意欲的で、いたって順調に大きくなっています。ひと月が経った時点で、体重は平均でプラス5㎏ほど。胸囲もみんな6~7㎝ほど大きくなっています。体重を増やしすぎて膝に痛みが出たり、身体の重さを感じるのはよくありません。まだ8週間あるので、今後の数字の伸びを見て、有澤監督とストレングスコーチ、アスレチックトレーナーとデータを共有し、方針を作って選手にフィードバックするつもりです」

1日3回の食事の間で2~3時間おきにサプリメントと補食を摂取、毎食の写真送付を義務づける。毎日摂取するたんぱく質の総量は、体重(㎏)×2g量。そして1回あたりの摂取量目安はたんぱく質量として0.25g/体重kg(体重80kgの人で20g)。選ばれた6人は3食の写真をメッセージアプリで送り、それに対して全体量が足りているか、栄養素の偏りがないか、などをフィードバックする。そして今年は選手のポジションとサイズを考慮し、個別にサプリメントプログラムを組んでいる。

【サプリメントの組み込み例:LB寺林翼の場合】

行動目標

全体 (内サプリメント)
エネルギー摂取目標(kcal) 5000 800
たんぱく摂取取目標(g) 200 70

サプリメント基本パターン

起床
朝食後 0
間食 パワーゼリー
昼食後 ZMA
練習前 BCAA、パワーゼリー
練習中 R.E.D
練習後 ホエイプロテインSPクレアチン
エナジープラス(0.8杯)
夕食後 ZMA
就寝前 プロテインホエイ100
就寝
※商品は2018年時点のものです

サプリメント栄養価

エネルギー kcal 863kcal
プロテイン g 75.1g
脂質 g 5.0g
炭水化物 g 128.5g

「みんな頑張っていますが選手の食事環境はさまざま。外食中心の選手もいれば、自宅で3食を食べている選手もいますし、自宅がグラウンドから遠いため、家に帰るまでの間に1食を食べ、自宅で夜食を摂る選手もいます。

今回のメンバーでは、一番体重の軽い勝田君がでに体重を4.1㎏、胸囲を6.6㎝増やしています。彼はすごく変わりました。ほぼ毎食自宅で食事していますが、最近はそれに加え、補食として豆腐や卵を食べたり、牛乳を飲んだり、というように変わってきました。

もちろん、他の選手も意識が高まってきています。毎日3食と練習後のプロテインだけを摂っていた選手が練習前にバナナを食べて糖質をしっかり補給したり、よりたんぱく質の多い食事をするようになるなど、明らかに変わってきました」

■今年は特に、しっかりと効率を追い求める。

昨年の増量プロジェクトは5月から11月の半年間。だが今年は、シーズンイン当初の2月初旬から4月末までの3カ月とした。

法政オレンジが抱える環境面のハンデが、キャンパスとグラウンドの移動だ。授業が始まると、選手の多くは自宅から都心の市ヶ谷キャンパスに通学。授業を受け、午後~夕方にかけて川崎市の武蔵小杉グラウンドに移動する。そして夕方から夜にかけて練習やミーティングを行い、深夜に帰宅。1時間以上かけて帰宅するのもざらで、自宅で食事を終えるのが深夜になる選手も多い。特に下級生は翌日も午前から授業がある場合も多く、睡眠時間を十分に確保しきれなかったり、食欲が湧かずに朝食をしっかり摂れない選手もいた。有澤玄監督は語る。

「授業が始まったり、グラウンドでの練習が増えたり試合が始まったりすると、体重を増やすことに専念しにくくなります。だからこそ、この時期に作ってしまおうということ。今は春休み中で、練習はフィジカルとファンダメンタルの習得が中心。そのため、この時期にしっかり身体を作っておき、5月以降は試合などでやや緩やかなペースになりますが、しっかりと上げていきます。

今はスタイルしての練習はほとんどそれほど行っていません。安全面を考慮して、春の試合数も計4試合のみに絞り、スタイルしての練習期間も減らし、身体を大きくします。そういったやり方自体は昨年とあまり変わっていないのですが、今年は昨年しっかりと土台を作れているので、高いレベルからスタートできた。もっとやらせたい気持ちはありますし、他の学校は結構やっているとも聞きますが、ウチは我慢。やらせたいけれども我慢です。春に関しては試合の勝ち負けはいっさい気にせず、自分達のフィジカルでどこまで戦えるか、実感してもらおうと思います。

特に気をつけているのが、ダラダラとやらせないこと。学生は大学が休みの時は時間がたくさんあるので、ついメリハリなく長時間のトレーニングをしてしまう。これは最近聞いた話なのですが、練習の疲労は強度より長さから来るそうなんです。強度の少ない練習をダラダラと行うぐらいなら、試合と同じぐらい気持ちの入った練習を1時間する方がいいそうです。

そして栄養と質の高い睡眠をちゃんと取り、時には遊ぶことだって必要。学生ですから、学生らしい生活をさせることも大事です。今までは学生に対し、それほど効率を求めてこなかった。でも今年は違う。しっかりと効率を追い求めることで、大学とグラウンドが離れている、食事を全員で一つの場所で摂れない、学生寮がない、といったハンデを、少しでも埋めていこうと考えています」

目指すのは、世界基準のフィジカル。そして今年もシーズン最後の1プレーまで成長を続け、最後は社会人ナンバーワンのチームに勝つ。大きな夢とともに、法政オレンジは今年も進撃を続ける。

※パワーゼリー、ZMAスーパープレミアム、エナジープラスは現在終売しております。

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