競技パフォーマンスUP

カーボで酷暑を打ち負かせ! ー前編ー

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カーボで酷暑を打ち負かせ! ー前編ー

カーボで酷暑を打ち負かせ! ー前編ー

例年にない酷暑にさらされている2018年夏。シーズンも佳境に入り、ハードな夏合宿に向けて体力をつけていきたい時期でもある。競技パフォーマンスを改善し、きつい練習に耐えていくためには栄養面での戦略が必要だ。その方法を伝授しよう。

■まずは食欲をキープしろ!

どのように栄養を摂取するか。その前に、食欲をキープしておくことがまずは重要だ。必要な食べ物、栄養がわかっていても、食べられないのでは意味がない。
夏に食欲が減退する理由。それは塩分の不足である。汗をかくと塩分が体外に出てしまう。しかし胃酸の主成分は塩酸であり、塩酸は塩分を材料に作られるのだ。つまり汗で塩分が足りなくなり、胃酸ができなくなることで消化が悪くなる。そして食欲が減退してしまうのである。対策としては、梅干しなど塩気の多いものを多めに食べたり、味噌汁を多めに飲むようにしたりして、塩分を積極的に摂るといいだろう。
また辛いものも有効である。熱帯地方では辛いものをよく食べるが、これには食物の保存性を高めると同時に、胃酸の分泌を高め、食欲を増やす効果もあるのだ。カレーやキムチ、アラビアータなど辛いものを食卓に上げるのもいいだろう。

■糖質を積極的に摂れ!

昨今、糖質制限がブームとなっているが、ウォリアーには注意が必要だ。24名の健康な男性を対象に、十分なカロリー(1日3000kcal以上)を摂取した上で、8週間のトレーニングを行わせた研究がある。その結果、糖質摂取量が少なかった群は体脂肪が顕著に減少(特に腹部)したが、体重や筋肉量の増加は起こっていなかった。
逆に糖質を十分に摂取していた群は、体重と筋肉量が増加していたのである(※1)。つまり筋肉量を落とさずに減量したい場合は糖質制限が有効で、筋肉量を増やしたい場合は糖質を十分に摂取すべしということになる。

また十分な糖質をトレーニング後に摂取することで、タンパク質の分解を抑制でき、体内の窒素バランスをプラスにできたという報告がある(※2, ※3)。さらに運動中に十分な糖質を摂取することにより、低強度で長時間の運動であれ、高強度で短時間の運動であれ、パフォーマンスが改善されるということも多くの研究で明らかになっている(※4, ※5, ※6, ※7, ※8, ※9)。
また糖質だけでなく、それにホエイプロテインを追加することでさらにトレーニング効果を高めることができる。「糖質だけで体重1kgあたり1.2g」を摂取した群と、「糖質を体重1kgあたり0.8g+プロテインを体重1kgあたり0.4g」でトータル1.2gを摂取した群とで比較したところ、糖質+プロテイン群の方が、パワーやパフォーマンスの低下が抑えられていたのだ(※10)。また糖質だけを摂取するよりも、糖質+プロテインとして摂取した方がグリコーゲンの回復が促進されることもわかっている(※11)。
つまり糖質を摂る時は、タンパク質と一緒に摂ることがお勧めだろう。プロテインもそれ単体で飲むのではなく、一緒に糖質を混ぜて飲むようにすることで、さらに効果を高めることができると思われる。

ただし、糖質なら何でもよいというわけではない。トレーニング中の迅速なエネルギー源となり、またトレーニング後のグリコーゲン回復を促進するためには、「消化吸収の早い糖質」が必要となる。ご飯やパンなどの糖質はデンプンであり、分子が大きいため、やや消化吸収は遅くなる。デンプンが体内で分解されると、最終的にブドウ糖になる。これが糖質の一番小さい単位(単糖類)であり、消化吸収はデンプンに比べて格段に早くなる。

(後編に続く)

【参考文献】

  • 1:Efficacy of ketogenic diet on body composition during resistance training in trained men: a randomized controlled trial. J Int Soc Sports Nutr. 2018 Jul 9;15(1):31. doi: 10.1186/s12970-018-0236-9.
  • 2:Effect of glucose supplement timing on protein metabolism after resistance training. J Appl Physiol (1985). 1997 Jun;82(6):1882-8.
  • 3:Macronutrient intake and whole body protein metabolism following resistance exercise. Med Sci Sports Exerc. 2000 Aug;32(8):1412-8.
  • 4:Influence of glucose and fructose ingestion on the capacity for long-term exercise in well-trained men. Clin Physiol. 1984 Dec;4(6):483-94.
  • 5:Carbohydrate ingestion during prolonged exercise: effects on metabolism and performance. Exerc Sport Sci Rev. 1991;19:1-40.
  • 6:Effect of carbohydrate feedings on muscle glycogen utilization and exercise performance. Med Sci Sports Exerc. 1984 Jun;16(3):219-22.
  • 7:Improvements in exercise performance: effects of carbohydrate feedings and diet. J Appl Physiol (1985). 1987 Mar;62(3):983-8.
  • 8:Carbohydrate supplementation improves moderate and high-intensity exercise in the heat. Pflugers Arch. 2003 May;446(2):211-9. Epub 2003 Mar
  • 9:Carbohydrate ingestion improves endurance performance during a 1 h simulated cycling time trial. J Sports Sci. 1997 Apr;15(2):223-30.
  • 10:Recovery from a cycling time trial is enhanced with carbohydrate-protein supplementation vs. isoenergetic carbohydrate supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2008 Dec 24;5:24. doi: 10.1186/1550-2783-5-24.
  • 11:Postexercise muscle glycogen recovery enhanced with a carbohydrate-protein supplement. Med Sci Sports Exerc. 2006 Jun;38(6):1106-13.
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例年にない酷暑にさらされている2018年夏。シーズンも佳境に入り、ハードな夏合宿に向けて体力をつけていきたい時期でもある。競技パフォーマンスを改善し、きつい練習に耐えていくためには栄養面での戦略が必要だ。その方法を伝授しよう。

■まずは食欲をキープしろ!

どのように栄養を摂取するか。その前に、食欲をキープしておくことがまずは重要だ。必要な食べ物、栄養がわかっていても、食べられないのでは意味がない。
夏に食欲が減退する理由。それは塩分の不足である。汗をかくと塩分が体外に出てしまう。しかし胃酸の主成分は塩酸であり、塩酸は塩分を材料に作られるのだ。つまり汗で塩分が足りなくなり、胃酸ができなくなることで消化が悪くなる。そして食欲が減退してしまうのである。対策としては、梅干しなど塩気の多いものを多めに食べたり、味噌汁を多めに飲むようにしたりして、塩分を積極的に摂るといいだろう。
また辛いものも有効である。熱帯地方では辛いものをよく食べるが、これには食物の保存性を高めると同時に、胃酸の分泌を高め、食欲を増やす効果もあるのだ。カレーやキムチ、アラビアータなど辛いものを食卓に上げるのもいいだろう。

■糖質を積極的に摂れ!

昨今、糖質制限がブームとなっているが、ウォリアーには注意が必要だ。24名の健康な男性を対象に、十分なカロリー(1日3000kcal以上)を摂取した上で、8週間のトレーニングを行わせた研究がある。その結果、糖質摂取量が少なかった群は体脂肪が顕著に減少(特に腹部)したが、体重や筋肉量の増加は起こっていなかった。
逆に糖質を十分に摂取していた群は、体重と筋肉量が増加していたのである(※1)。つまり筋肉量を落とさずに減量したい場合は糖質制限が有効で、筋肉量を増やしたい場合は糖質を十分に摂取すべしということになる。

また十分な糖質をトレーニング後に摂取することで、タンパク質の分解を抑制でき、体内の窒素バランスをプラスにできたという報告がある(※2, ※3)。さらに運動中に十分な糖質を摂取することにより、低強度で長時間の運動であれ、高強度で短時間の運動であれ、パフォーマンスが改善されるということも多くの研究で明らかになっている(※4, ※5, ※6, ※7, ※8, ※9)。
また糖質だけでなく、それにホエイプロテインを追加することでさらにトレーニング効果を高めることができる。「糖質だけで体重1kgあたり1.2g」を摂取した群と、「糖質を体重1kgあたり0.8g+プロテインを体重1kgあたり0.4g」でトータル1.2gを摂取した群とで比較したところ、糖質+プロテイン群の方が、パワーやパフォーマンスの低下が抑えられていたのだ(※10)。また糖質だけを摂取するよりも、糖質+プロテインとして摂取した方がグリコーゲンの回復が促進されることもわかっている(※11)。
つまり糖質を摂る時は、タンパク質と一緒に摂ることがお勧めだろう。プロテインもそれ単体で飲むのではなく、一緒に糖質を混ぜて飲むようにすることで、さらに効果を高めることができると思われる。

ただし、糖質なら何でもよいというわけではない。トレーニング中の迅速なエネルギー源となり、またトレーニング後のグリコーゲン回復を促進するためには、「消化吸収の早い糖質」が必要となる。ご飯やパンなどの糖質はデンプンであり、分子が大きいため、やや消化吸収は遅くなる。デンプンが体内で分解されると、最終的にブドウ糖になる。これが糖質の一番小さい単位(単糖類)であり、消化吸収はデンプンに比べて格段に早くなる。

(後編に続く)

【参考文献】

  • 1:Efficacy of ketogenic diet on body composition during resistance training in trained men: a randomized controlled trial. J Int Soc Sports Nutr. 2018 Jul 9;15(1):31. doi: 10.1186/s12970-018-0236-9.
  • 2:Effect of glucose supplement timing on protein metabolism after resistance training. J Appl Physiol (1985). 1997 Jun;82(6):1882-8.
  • 3:Macronutrient intake and whole body protein metabolism following resistance exercise. Med Sci Sports Exerc. 2000 Aug;32(8):1412-8.
  • 4:Influence of glucose and fructose ingestion on the capacity for long-term exercise in well-trained men. Clin Physiol. 1984 Dec;4(6):483-94.
  • 5:Carbohydrate ingestion during prolonged exercise: effects on metabolism and performance. Exerc Sport Sci Rev. 1991;19:1-40.
  • 6:Effect of carbohydrate feedings on muscle glycogen utilization and exercise performance. Med Sci Sports Exerc. 1984 Jun;16(3):219-22.
  • 7:Improvements in exercise performance: effects of carbohydrate feedings and diet. J Appl Physiol (1985). 1987 Mar;62(3):983-8.
  • 8:Carbohydrate supplementation improves moderate and high-intensity exercise in the heat. Pflugers Arch. 2003 May;446(2):211-9. Epub 2003 Mar
  • 9:Carbohydrate ingestion improves endurance performance during a 1 h simulated cycling time trial. J Sports Sci. 1997 Apr;15(2):223-30.
  • 10:Recovery from a cycling time trial is enhanced with carbohydrate-protein supplementation vs. isoenergetic carbohydrate supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2008 Dec 24;5:24. doi: 10.1186/1550-2783-5-24.
  • 11:Postexercise muscle glycogen recovery enhanced with a carbohydrate-protein supplement. Med Sci Sports Exerc. 2006 Jun;38(6):1106-13.