競技パフォーマンスUP
※この記事は2018年2月に作成したものです。
「水を飲むな!」と言われたのも今や昔。運動中に水分を補給することは既に常識となり、水分摂取を禁止する指導者は時代遅れとそしられることになる。
だが、なぜ昔は水分摂取が禁止されていたのだろうか。昔の指導者たちは、経験から水分摂取を禁じていたに違いない。それはどのような経験だったのだろうか。
グラウンドを何周も走り、技術練習に移る。その合間を縫い、指導者の目を盗んで一気に水を飲む。ひと昔前の部活動でよく見られた光景だ。
この場合、一度に大量の水を飲むことになる。しかし水を吸収する速度には上限がある。そのため、一度に飲むと大量の水が胃に溜まり、不快感を覚えながら運動を継続することになる。その後のパフォーマンスが落ちるのも当然だ。
水分摂取は小分けに行うべきだ。持続的に水分を補給しつつ、胃もたれも起こさない。日本体育協会(現:日本スポーツ協会)の指針によれば、1時間ごとに500~1000mlの水分摂取が推奨されている。これも1時間経ったら500~1000ml飲むというのではなく、例えば15分毎に200ml飲むというようにする。この程度の量だったら胃に不快感を覚えるようなこともないだろう。
運動強度 | 水分摂取量の目安 | |||
---|---|---|---|---|
運動の種類 | 運動強度(最大強度の%) | 持続時間 | 競技前 | 競技中 |
トラック競技 バスケット サッカーなど |
75~100% | 1時間以内 | 250~500ml | 500~1000ml |
マラソン 野球など |
50~90% | 1~3時間 | 250~500ml | 500~1000ml/1時間 |
ウルトラマラソン トライアスロン など |
50~70% | 3時間以上 | 250~500ml | 500~1000ml/1時間 必ず塩分を補給 |
(出典:日本体育協会指針、2015年発行)
水を小分けに飲むことによって、脱水による悪影響は避けることができる。しかし汗を大量にかくと、同時にミネラルも流出してしまう。そこにただの水を補給するとミネラルが欠乏し、血液を含めた体液が全体的に薄まってしまう。
体液が薄まるのは問題だ。このときウォリアーの身体はわざと水を排出することにより、体液を濃くしようとする。この現象を「自発的脱水」と呼ぶ。つまり水を飲めば飲むほど、自発的脱水により体内から水が排出されてしまうという悪循環に陥ってしまうのである。
いわゆる「水中毒」は、この作用により起こる。自発的脱水を防ぐためには、水だけでなく、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルを含んだドリンクを飲むようにしたい。日本体育協会のガイドラインでは「0.1~0.2%の食塩」が推奨されており、これをナトリウムに換算すると「100ml中に40~80mgのナトリウム」となる。
必要なのはナトリウムだけではない。ナトリウムと対になるのがカリウムである。一般的な日本人の食生活ではカリウムの摂取量が足りていない。WHO(世界保健機関)の基準によれば一日に3510mgのカリウムを摂取することが脳卒中や心筋梗塞の予防に望ましいとされているが、日本人の平均摂取量は一日に2201mgとなっている。
ハードに運動するウォリアーなら3510mg以上のカリウムが必要となるのは自明だろう。
ナトリウムやカリウムが足りないとどうなるのか。体内において働く「ナトリウム・カリウムポンプ」は神経の興奮による情報伝達や、細胞の浸透圧調節、栄養素の吸収などの働きを担っている。つまりナトリウムやカリウムが足りないと、このポンプが働かないわけだ。すると細胞間の情報伝達はできないし、浸透圧調節ができなくて細胞が膨れ上がって破裂するかもしれないし、栄養素の吸収もうまくいかない。運動のパフォーマンスが低下するというだけの問題ではないのだ。
カルシウムやマグネシウムも必要だ。どちらも一般的な食生活ではまったく足りていないことが調査により分かっている。
カルシウムは骨のためのミネラルとして知られるが、他にも筋肉の収縮や情報の伝達物質、血液を固める凝固因子などとしても働く。
マグネシウムは体内における300種類以上の酵素反応に関係し、リラックス作用やたんぱく合成、骨の強化、心臓血管系疾患や糖尿病の予防効果、炎症抑制作用、睡眠を深くする作用などの働きがある。
なおカルシウムが筋肉を収縮させるのに対し、マグネシウムは筋肉をリラックスさせる方向に働く。筋肉がつったり肉離れを起こしたりするのは、カルシウムとマグネシウムのバランスが崩れているのだ。
逆にカルシウムとマグネシウムがバランス良く、また量的にも十分に補給されていれば、筋肉の収縮や弛緩がスムーズにいき、肉離れの心配もなくなり、骨も強くなり、睡眠も深くなって回復も促進されるだろう。
※この記事は2018年2月に作成したものです。
「水を飲むな!」と言われたのも今や昔。運動中に水分を補給することは既に常識となり、水分摂取を禁止する指導者は時代遅れとそしられることになる。
だが、なぜ昔は水分摂取が禁止されていたのだろうか。昔の指導者たちは、経験から水分摂取を禁じていたに違いない。それはどのような経験だったのだろうか。
グラウンドを何周も走り、技術練習に移る。その合間を縫い、指導者の目を盗んで一気に水を飲む。ひと昔前の部活動でよく見られた光景だ。
この場合、一度に大量の水を飲むことになる。しかし水を吸収する速度には上限がある。そのため、一度に飲むと大量の水が胃に溜まり、不快感を覚えながら運動を継続することになる。その後のパフォーマンスが落ちるのも当然だ。
水分摂取は小分けに行うべきだ。持続的に水分を補給しつつ、胃もたれも起こさない。日本体育協会(現:日本スポーツ協会)の指針によれば、1時間ごとに500~1000mlの水分摂取が推奨されている。これも1時間経ったら500~1000ml飲むというのではなく、例えば15分毎に200ml飲むというようにする。この程度の量だったら胃に不快感を覚えるようなこともないだろう。
運動強度 | 水分摂取量の目安 | |||
---|---|---|---|---|
運動の種類 | 運動強度(最大強度の%) | 持続時間 | 競技前 | 競技中 |
トラック競技 バスケット サッカーなど |
75~100% | 1時間以内 | 250~500ml | 500~1000ml |
マラソン 野球など |
50~90% | 1~3時間 | 250~500ml | 500~1000ml/1時間 |
ウルトラマラソン トライアスロン など |
50~70% | 3時間以上 | 250~500ml | 500~1000ml/1時間 必ず塩分を補給 |
(出典:日本体育協会指針、2015年発行)
水を小分けに飲むことによって、脱水による悪影響は避けることができる。しかし汗を大量にかくと、同時にミネラルも流出してしまう。そこにただの水を補給するとミネラルが欠乏し、血液を含めた体液が全体的に薄まってしまう。
体液が薄まるのは問題だ。このときウォリアーの身体はわざと水を排出することにより、体液を濃くしようとする。この現象を「自発的脱水」と呼ぶ。つまり水を飲めば飲むほど、自発的脱水により体内から水が排出されてしまうという悪循環に陥ってしまうのである。
いわゆる「水中毒」は、この作用により起こる。自発的脱水を防ぐためには、水だけでなく、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルを含んだドリンクを飲むようにしたい。日本体育協会のガイドラインでは「0.1~0.2%の食塩」が推奨されており、これをナトリウムに換算すると「100ml中に40~80mgのナトリウム」となる。
必要なのはナトリウムだけではない。ナトリウムと対になるのがカリウムである。一般的な日本人の食生活ではカリウムの摂取量が足りていない。WHO(世界保健機関)の基準によれば一日に3510mgのカリウムを摂取することが脳卒中や心筋梗塞の予防に望ましいとされているが、日本人の平均摂取量は一日に2201mgとなっている。
ハードに運動するウォリアーなら3510mg以上のカリウムが必要となるのは自明だろう。
ナトリウムやカリウムが足りないとどうなるのか。体内において働く「ナトリウム・カリウムポンプ」は神経の興奮による情報伝達や、細胞の浸透圧調節、栄養素の吸収などの働きを担っている。つまりナトリウムやカリウムが足りないと、このポンプが働かないわけだ。すると細胞間の情報伝達はできないし、浸透圧調節ができなくて細胞が膨れ上がって破裂するかもしれないし、栄養素の吸収もうまくいかない。運動のパフォーマンスが低下するというだけの問題ではないのだ。
カルシウムやマグネシウムも必要だ。どちらも一般的な食生活ではまったく足りていないことが調査により分かっている。
カルシウムは骨のためのミネラルとして知られるが、他にも筋肉の収縮や情報の伝達物質、血液を固める凝固因子などとしても働く。
マグネシウムは体内における300種類以上の酵素反応に関係し、リラックス作用やたんぱく合成、骨の強化、心臓血管系疾患や糖尿病の予防効果、炎症抑制作用、睡眠を深くする作用などの働きがある。
なおカルシウムが筋肉を収縮させるのに対し、マグネシウムは筋肉をリラックスさせる方向に働く。筋肉がつったり肉離れを起こしたりするのは、カルシウムとマグネシウムのバランスが崩れているのだ。
逆にカルシウムとマグネシウムがバランス良く、また量的にも十分に補給されていれば、筋肉の収縮や弛緩がスムーズにいき、肉離れの心配もなくなり、骨も強くなり、睡眠も深くなって回復も促進されるだろう。