競技パフォーマンスUP
(この記事は2018年5月に作成したものです)
今年度から有澤玄監督による新体制となった、法政大学アメリカンフットボール部オレンジ。2018年も引き続いて、フィジカルとファンダメンタルを軸に据えた「世界基準のフットボール」の実現に向け、チーム作りを行っている。
「アメリカンフットボールは素晴らしいスポーツですが、下手をすると深刻なケガをします。最悪は死んでしまう可能性すらある。そんな事態を避けるためにも、大きく強い身体を作り上げねばなりません」
有澤玄監督はそう語る。世界レベルのチームにふさわしい圧倒的フィジカルを構築する。そして何より、アメリカンフットボールという激しいスポーツを可能な限り安全にプレーする。その追求に終わりはない。
「大事なのは正しくウエイトトレーニングに取り組み、質の高い栄養をしっかり摂り、よく眠ること。そういったアスリートとして当然のことを選手達にしっかりと植えつけ、習慣化させねばなりません」
世界レベルのチームビルディング。その第一歩として昨年に引き続き行われたのが「モンスタープロジェクト2018」。すなわち、選抜メンバーによる肉体改造だ。より安全にアメリカンフットボールに取り組み、優れたパフォーマンスを発揮するため、ドームアスリートハウスとDNSが全面的にサポート。その結果を、身体データの定期測定でチェックした。
昨年のモンスタープロジェクトは、オフェンスライン(OL)とディフェンスバック(DB)を中心とした選手11人を対象に、サプリメントを提供。5月から半年間をかけて、食事と体重の管理を行った。それに対して今年は方針を変更。今年は試験期間明け間もない2月4日から4月30日までの12週間に短縮し、対象選手を志願した6名に限定。サポート内容とサプリメントの構成についてもブラッシュアップした。
「昨年もちろん、少なからず成果が出ました。でも正直、あれだけやったのだからもっと大きな成果が出てもいい。振り返ると昨年は、やる気のある選手とそうでもない選手の意識の差がありました。ウチはもともと、選手に『やれ!』と強制するようなチームではない。そこで今年は『我こそは!』と志願してきた選手に限定して行いました。トレーニングをやる気のない選手に無理矢理やらせても、効果は出ません。まずは、何のために頑張らなくてはいけないのか、そしてフィジカルが強くなったらどう変わるのかをしっかり理解してもらうように努めました。それができていれば、数値は必ず向上するはずです」
しっかりと身体作りに専念できる冬~春の3カ月で、選手達は筋肥大期3週、基礎筋力向上期3週、 最大筋力向上期3週、そして調整期を経て4月末にMAX測定というスケジュールのもと、ウエイトトレーニングを週4回行った。同時に、ドームアスリートハウスニュートリションチームでプログラムを作成。アメリカンフットボール選手のトレーニング期の消費エネルギーである4000~4500kcalに上乗せし、増量のため、1日当たり各選手5000kcal~の目標エネルギー摂取量を設定。サプリメントでどの程度補うかについても細かく取り決めた。そして選手達はメッセージアプリを用いてニュートリションチームに毎日3食+補食を報告し、4週間おきに体組成と全身サイズの測定を行った。
プロジェクトの終わりとなる4月末の測定結果は上々。選手の体重と除脂肪体重(体重マイナス体脂肪量)は明確に変化し、昨年を上回る成果が確実に出た。全選手が1~9kg増量し、除脂肪量も6名全員が増加。体重については想定範囲を超えて増えている選手もおり、ケガ予防や健康維持のため、有澤監督らスタッフ陣と連携。増量ペースを確認しながら取り組んだ。
氏名 | 学年 | ポジション | 体重 | 体脂肪率 | 除脂肪量 | 胸囲 | 上腕伸展(右) | 上腕伸展(左) | 大腿(右) | 大腿(左) | 腹囲 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
小林 篤実 | 4 | RB | 97.0 | 12.4 | 85.0 | 108.5 | 40.5 | 39.0 | 64.0 | 63.5 | 94.0 |
寺林 翼 | 4 | LB | 100.0 | 23.1 | 76.9 | 108.5 | 40.0 | 39.0 | 64.0 | 65.0 | 94.0 |
小山内 聡平 | 2 | LB | 86.2 | 13.0 | 75.0 | 97.0 | 35.0 | 33.5 | 58.5 | 57.0 | 86.0 |
長内 駿弥 | 2 | DL | 97.3 | 23.7 | 74.2 | 106.0 | 39.0 | 39.0 | 66.0 | 67.0 | 91.5 |
内田 優 | 2 | DL | 99.6 | 16.2 | 83.5 | 103.0 | 37.5 | 37.5 | 61.5 | 60.0 | 99.0 |
勝田 駿 | 3 | DB | 75.2 | 10.0 | 67.7 | 97.0 | 35.0 | 34.5 | 56.5 | 56.0 | 84.0 |
今回最も成功したのがキャプテンのLB寺林翼だ。体重+4kg、除脂肪体重+7.1kg、体脂肪率-4.2%、胸囲+8.5cmと、驚くべき結果を出した。そして顕著な体重の伸びを見せたのが、ディフェンスライン(DL)内田優、ラインバッカー(LB)小山内聡平の2年生二人だ。
「ベンチプレスのMAXが15㎏アップし、体重は約10㎏増えました。高校時代は85㎏ぐらいだったので、大学に入ってからトータルで15~20㎏増えていますね。理由は食事だと思います。今までの1日3食に夜食をプラスして、毎日4食をしっかり食べました。もともと食が細いので大変でしたが、1食あたりたくさん食べるよりも回数を増やし、お腹が減った状態をなるべく避けました。
増量した結果、コンタクトで当たり負けしなくなりました。その分、少し足が遅くなった気もしますが、今後、練習で走る機会が増えるのであまり心配していません。ここから体脂肪を落として、スピードを上げていければ大丈夫だと思います。体重は最低でも100㎏はキープしたいし、まだまだ上げていきます」(DL内田)
「僕は高校まではDLだったのですが、大学レベルでは体重が足らないため、今はLBをやっています。今回は79㎏からスタートして、今は86~87㎏。一度88㎏まで行ったのですが、お腹を壊して落ちてしまいました(笑)。
増やせた要因はやはり、食事の回数を多くしたこと。夜食を増やして1日4食にしました。そして体脂肪率を上げずに体重を増やせたポイントは、乳製品をなるべく食べたことだと思います。腸内環境がよくなり体脂肪がつきにくくなる、と聞いたので、夜寝る前や食事の後にヨーグルトなどを積極的に摂りました。その成果か、体脂肪率は、このプロジェクトを始めた時は11%で今は約12%。ほぼ変わっていません。そして、プレー面では当たり負けが減った。スピードは変わっていませんし、身体が重いとも感じません。できれば体重はもっと増やしたいですね。95㎏ぐらいまでは行きたい」(LB小山内)
「内田は昨年ケガをしていたので、まだまだこれからの選手。でも、誰が見ても見た目が変わりましたし、体重はまだまだ増やせる。110~120㎏あってもいいですね。大いに期待しています。そして小山内は、90㎏を超えたら本来のポジションであるDLにコンバートします。彼は真面目で、非常にいい選手です」(有澤)
昨年と比べて、今年はより短期間で大きな成果を上げることができた理由は何だったのか。有澤監督は語る。
「春休みを使って、効率的かつ重点的に身体作りができたのは間違いありません。授業のない2~3月に、みんな大きく伸びました。しかし4月は人によって、若干のばらつきが出た。原因はおそらく睡眠時間でしょう。このチームの弱点は、キャンパスと練習施設が離れた場所にあるため、選手が長距離移動を強いられること。特に下級生は授業が多く、朝から授業に出て、グラウンドまで電車で移動してきます。自宅から2時間近くかけて通学している選手もいますから、どうしても睡眠が不足しがちになります」
現状、都内近郊に複数あるキャンパスと神奈川県川崎市にあるグラウンドが離れており、DL内田とLB小山内も、自分なりに工夫しながら栄養摂取に努めている。
「自宅は千葉で、弁当を持って市ヶ谷にある経営学部に通っています。授業が朝早くからあるので、パンなどを持参して学校に着いてから食べて、昼食は学食などで。弁当は大きめの容器にいっぱい入れて持参し、部室に着いてから練習前に少し食べ、残りは練習後です。そして自宅に帰ってからも夜食を食べます。加えて、補食としてバーXやパワーゼリーも。あと、プロテインは朝と寝る前にSLOW、練習後とウエイトトレーニング後にホエイSPを摂っています」(内田)
「横浜から市ヶ谷にある文学部に通っています。朝食はなるべく早く起きて家で摂り、昼食は学校で。そこから武蔵小杉のグラウンドに移動します。学校には自宅から小さめのおにぎりを6個ぐらいとおかずを持っていき、練習前に食べています。そして練習後にすぐ食べて、家に帰ってから夜食を摂り、寝る。そんな感じです。夜食は1食分よりやや少ないぐらいの量ですね」(小山内)
「理想を言うと、各キャンパスのトレーニングルームを使って身体を作り、グラウンドに集まって練習するのは週に3回ぐらいでいいと思っているんです。ちゃんとトレーニングして、ちゃんとサプリメントを摂って身体を大きくしながら、週3回だけアメフトの練習をしっかりやる。それでも、十分チームは作れます」(有澤)
法政オレンジでは、ポジションごとにウエイトトレーニングにおける挙上重量のノルマを設定。安全管理の視点から、クリアできていない選手はグラウンドでの練習をさせないというルールを徹底している。
「このチームにはもともと、ウエイトトレーニングにしっかり取り組む習慣自体がありませんでした。アメフトが上手ければフィジカルは必要ないし、トレーニングもしなくていい、という考え方があった。それを一新しようということで、ルールを作ってやってきました。その結果、全体のフィジカルレベルは大幅に向上。正直、昨年は一部に規定をクリアできない選手がいましたが、今年はそういった選手はほとんどいません。
春先にしっかりとフィジカルトレーニングに取り組んだことで、昨年と比べて順調なチーム作りができている実感があります。でも一人一人を見ると、まだまだやる選手とやらない選手がいて、明確な差がある。それを今後、できる限りなくしていきたいです」
昨年から春のシーズンは大幅に試合数を絞り、身体作りに重点的に取り組んできた。今年もその方針はブレない。
「昨年と比べて身体がしっかりでき上がっている分、試合数を増やすことも考えたのですが、そこはあえて我慢。そして夏も、練習しすぎないよう気をつけるつもりです。長時間練習をして、いいことは何もない。集中力が欠けてケガをしやすいし、体力的にも消耗します。
何より、せっかく大きくした身体が小さくなってしまう。学生はしっかりと身体作りに取り組めば着実に大きくなりますが、その分、カリカリに痩せてしまうのもすぐです。それだけは避けたいところ。メリハリをつけて練習時間を短く抑え、しっかりトレーニングしてよく寝ることに尽きます。
ではそこまで、いかに選手に不安な気持ちを抱かせることなくやっていくか。例えばコーチが落ちつかないから、あえてたくさん練習させるようなことはよくあります。選手も練習量が少ないと、不安になるもの。実際に昨年も選手達から『春にたった3試合だけで大丈夫ですか?』とさんざん言われました。昨年の結果から、それでもどうにかなるとわかっている選手も多いですが、今一度安心させてあげる必要もありますね」
試合をこなしながらも今しばらくフィジカル向上に努め、6月はスキル練習の比率を高める。そして7月は再びフィジカルトレーニングを増やし、8月から徐々に実戦的な練習を増やす。そんなプランで考えている。
「8月前半で秋シーズンのロースターが決まります。ロースター入りした選手はそこから筋力維持のフェーズに入りますが、ダメだった選手は来年に向け、再びフィジカルトレーニングに励むことになります。ですから次のプランとして、ロースター入りできなかった選手を対象に、もう一度プロジェクトに取り組んでもいいかもしれません。
昨年いろいろと試行錯誤し、今年に関してはいろいろなことが見えてきた実感があります。毎年少しずつでも上積みし続けて、それをもっともっと、大きなものにしていきたいと思っています」
本命不在で激戦が予想される関東大学アメリカンフットボールリーグ トップ8。法政オレンジは入念に磨き上げたフィジカルを前面に押し出し、今年も正面突破で戦い抜く。
(この記事は2018年5月に作成したものです)
今年度から有澤玄監督による新体制となった、法政大学アメリカンフットボール部オレンジ。2018年も引き続いて、フィジカルとファンダメンタルを軸に据えた「世界基準のフットボール」の実現に向け、チーム作りを行っている。
「アメリカンフットボールは素晴らしいスポーツですが、下手をすると深刻なケガをします。最悪は死んでしまう可能性すらある。そんな事態を避けるためにも、大きく強い身体を作り上げねばなりません」
有澤玄監督はそう語る。世界レベルのチームにふさわしい圧倒的フィジカルを構築する。そして何より、アメリカンフットボールという激しいスポーツを可能な限り安全にプレーする。その追求に終わりはない。
「大事なのは正しくウエイトトレーニングに取り組み、質の高い栄養をしっかり摂り、よく眠ること。そういったアスリートとして当然のことを選手達にしっかりと植えつけ、習慣化させねばなりません」
世界レベルのチームビルディング。その第一歩として昨年に引き続き行われたのが「モンスタープロジェクト2018」。すなわち、選抜メンバーによる肉体改造だ。より安全にアメリカンフットボールに取り組み、優れたパフォーマンスを発揮するため、ドームアスリートハウスとDNSが全面的にサポート。その結果を、身体データの定期測定でチェックした。
昨年のモンスタープロジェクトは、オフェンスライン(OL)とディフェンスバック(DB)を中心とした選手11人を対象に、サプリメントを提供。5月から半年間をかけて、食事と体重の管理を行った。それに対して今年は方針を変更。今年は試験期間明け間もない2月4日から4月30日までの12週間に短縮し、対象選手を志願した6名に限定。サポート内容とサプリメントの構成についてもブラッシュアップした。
「昨年もちろん、少なからず成果が出ました。でも正直、あれだけやったのだからもっと大きな成果が出てもいい。振り返ると昨年は、やる気のある選手とそうでもない選手の意識の差がありました。ウチはもともと、選手に『やれ!』と強制するようなチームではない。そこで今年は『我こそは!』と志願してきた選手に限定して行いました。トレーニングをやる気のない選手に無理矢理やらせても、効果は出ません。まずは、何のために頑張らなくてはいけないのか、そしてフィジカルが強くなったらどう変わるのかをしっかり理解してもらうように努めました。それができていれば、数値は必ず向上するはずです」
しっかりと身体作りに専念できる冬~春の3カ月で、選手達は筋肥大期3週、基礎筋力向上期3週、 最大筋力向上期3週、そして調整期を経て4月末にMAX測定というスケジュールのもと、ウエイトトレーニングを週4回行った。同時に、ドームアスリートハウスニュートリションチームでプログラムを作成。アメリカンフットボール選手のトレーニング期の消費エネルギーである4000~4500kcalに上乗せし、増量のため、1日当たり各選手5000kcal~の目標エネルギー摂取量を設定。サプリメントでどの程度補うかについても細かく取り決めた。そして選手達はメッセージアプリを用いてニュートリションチームに毎日3食+補食を報告し、4週間おきに体組成と全身サイズの測定を行った。
プロジェクトの終わりとなる4月末の測定結果は上々。選手の体重と除脂肪体重(体重マイナス体脂肪量)は明確に変化し、昨年を上回る成果が確実に出た。全選手が1~9kg増量し、除脂肪量も6名全員が増加。体重については想定範囲を超えて増えている選手もおり、ケガ予防や健康維持のため、有澤監督らスタッフ陣と連携。増量ペースを確認しながら取り組んだ。
氏名 | 学年 | ポジション | 体重 | 体脂肪率 | 除脂肪量 | 胸囲 | 上腕伸展(右) | 上腕伸展(左) | 大腿(右) | 大腿(左) | 腹囲 |
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小林 篤実 | 4 | RB | 97.0 | 12.4 | 85.0 | 108.5 | 40.5 | 39.0 | 64.0 | 63.5 | 94.0 |
寺林 翼 | 4 | LB | 100.0 | 23.1 | 76.9 | 108.5 | 40.0 | 39.0 | 64.0 | 65.0 | 94.0 |
小山内 聡平 | 2 | LB | 86.2 | 13.0 | 75.0 | 97.0 | 35.0 | 33.5 | 58.5 | 57.0 | 86.0 |
長内 駿弥 | 2 | DL | 97.3 | 23.7 | 74.2 | 106.0 | 39.0 | 39.0 | 66.0 | 67.0 | 91.5 |
内田 優 | 2 | DL | 99.6 | 16.2 | 83.5 | 103.0 | 37.5 | 37.5 | 61.5 | 60.0 | 99.0 |
勝田 駿 | 3 | DB | 75.2 | 10.0 | 67.7 | 97.0 | 35.0 | 34.5 | 56.5 | 56.0 | 84.0 |
今回最も成功したのがキャプテンのLB寺林翼だ。体重+4kg、除脂肪体重+7.1kg、体脂肪率-4.2%、胸囲+8.5cmと、驚くべき結果を出した。そして顕著な体重の伸びを見せたのが、ディフェンスライン(DL)内田優、ラインバッカー(LB)小山内聡平の2年生二人だ。
「ベンチプレスのMAXが15㎏アップし、体重は約10㎏増えました。高校時代は85㎏ぐらいだったので、大学に入ってからトータルで15~20㎏増えていますね。理由は食事だと思います。今までの1日3食に夜食をプラスして、毎日4食をしっかり食べました。もともと食が細いので大変でしたが、1食あたりたくさん食べるよりも回数を増やし、お腹が減った状態をなるべく避けました。
増量した結果、コンタクトで当たり負けしなくなりました。その分、少し足が遅くなった気もしますが、今後、練習で走る機会が増えるのであまり心配していません。ここから体脂肪を落として、スピードを上げていければ大丈夫だと思います。体重は最低でも100㎏はキープしたいし、まだまだ上げていきます」(DL内田)
「僕は高校まではDLだったのですが、大学レベルでは体重が足らないため、今はLBをやっています。今回は79㎏からスタートして、今は86~87㎏。一度88㎏まで行ったのですが、お腹を壊して落ちてしまいました(笑)。
増やせた要因はやはり、食事の回数を多くしたこと。夜食を増やして1日4食にしました。そして体脂肪率を上げずに体重を増やせたポイントは、乳製品をなるべく食べたことだと思います。腸内環境がよくなり体脂肪がつきにくくなる、と聞いたので、夜寝る前や食事の後にヨーグルトなどを積極的に摂りました。その成果か、体脂肪率は、このプロジェクトを始めた時は11%で今は約12%。ほぼ変わっていません。そして、プレー面では当たり負けが減った。スピードは変わっていませんし、身体が重いとも感じません。できれば体重はもっと増やしたいですね。95㎏ぐらいまでは行きたい」(LB小山内)
「内田は昨年ケガをしていたので、まだまだこれからの選手。でも、誰が見ても見た目が変わりましたし、体重はまだまだ増やせる。110~120㎏あってもいいですね。大いに期待しています。そして小山内は、90㎏を超えたら本来のポジションであるDLにコンバートします。彼は真面目で、非常にいい選手です」(有澤)
昨年と比べて、今年はより短期間で大きな成果を上げることができた理由は何だったのか。有澤監督は語る。
「春休みを使って、効率的かつ重点的に身体作りができたのは間違いありません。授業のない2~3月に、みんな大きく伸びました。しかし4月は人によって、若干のばらつきが出た。原因はおそらく睡眠時間でしょう。このチームの弱点は、キャンパスと練習施設が離れた場所にあるため、選手が長距離移動を強いられること。特に下級生は授業が多く、朝から授業に出て、グラウンドまで電車で移動してきます。自宅から2時間近くかけて通学している選手もいますから、どうしても睡眠が不足しがちになります」
現状、都内近郊に複数あるキャンパスと神奈川県川崎市にあるグラウンドが離れており、DL内田とLB小山内も、自分なりに工夫しながら栄養摂取に努めている。
「自宅は千葉で、弁当を持って市ヶ谷にある経営学部に通っています。授業が朝早くからあるので、パンなどを持参して学校に着いてから食べて、昼食は学食などで。弁当は大きめの容器にいっぱい入れて持参し、部室に着いてから練習前に少し食べ、残りは練習後です。そして自宅に帰ってからも夜食を食べます。加えて、補食としてバーXやパワーゼリーも。あと、プロテインは朝と寝る前にSLOW、練習後とウエイトトレーニング後にホエイSPを摂っています」(内田)
「横浜から市ヶ谷にある文学部に通っています。朝食はなるべく早く起きて家で摂り、昼食は学校で。そこから武蔵小杉のグラウンドに移動します。学校には自宅から小さめのおにぎりを6個ぐらいとおかずを持っていき、練習前に食べています。そして練習後にすぐ食べて、家に帰ってから夜食を摂り、寝る。そんな感じです。夜食は1食分よりやや少ないぐらいの量ですね」(小山内)
「理想を言うと、各キャンパスのトレーニングルームを使って身体を作り、グラウンドに集まって練習するのは週に3回ぐらいでいいと思っているんです。ちゃんとトレーニングして、ちゃんとサプリメントを摂って身体を大きくしながら、週3回だけアメフトの練習をしっかりやる。それでも、十分チームは作れます」(有澤)
法政オレンジでは、ポジションごとにウエイトトレーニングにおける挙上重量のノルマを設定。安全管理の視点から、クリアできていない選手はグラウンドでの練習をさせないというルールを徹底している。
「このチームにはもともと、ウエイトトレーニングにしっかり取り組む習慣自体がありませんでした。アメフトが上手ければフィジカルは必要ないし、トレーニングもしなくていい、という考え方があった。それを一新しようということで、ルールを作ってやってきました。その結果、全体のフィジカルレベルは大幅に向上。正直、昨年は一部に規定をクリアできない選手がいましたが、今年はそういった選手はほとんどいません。
春先にしっかりとフィジカルトレーニングに取り組んだことで、昨年と比べて順調なチーム作りができている実感があります。でも一人一人を見ると、まだまだやる選手とやらない選手がいて、明確な差がある。それを今後、できる限りなくしていきたいです」
昨年から春のシーズンは大幅に試合数を絞り、身体作りに重点的に取り組んできた。今年もその方針はブレない。
「昨年と比べて身体がしっかりでき上がっている分、試合数を増やすことも考えたのですが、そこはあえて我慢。そして夏も、練習しすぎないよう気をつけるつもりです。長時間練習をして、いいことは何もない。集中力が欠けてケガをしやすいし、体力的にも消耗します。
何より、せっかく大きくした身体が小さくなってしまう。学生はしっかりと身体作りに取り組めば着実に大きくなりますが、その分、カリカリに痩せてしまうのもすぐです。それだけは避けたいところ。メリハリをつけて練習時間を短く抑え、しっかりトレーニングしてよく寝ることに尽きます。
ではそこまで、いかに選手に不安な気持ちを抱かせることなくやっていくか。例えばコーチが落ちつかないから、あえてたくさん練習させるようなことはよくあります。選手も練習量が少ないと、不安になるもの。実際に昨年も選手達から『春にたった3試合だけで大丈夫ですか?』とさんざん言われました。昨年の結果から、それでもどうにかなるとわかっている選手も多いですが、今一度安心させてあげる必要もありますね」
試合をこなしながらも今しばらくフィジカル向上に努め、6月はスキル練習の比率を高める。そして7月は再びフィジカルトレーニングを増やし、8月から徐々に実戦的な練習を増やす。そんなプランで考えている。
「8月前半で秋シーズンのロースターが決まります。ロースター入りした選手はそこから筋力維持のフェーズに入りますが、ダメだった選手は来年に向け、再びフィジカルトレーニングに励むことになります。ですから次のプランとして、ロースター入りできなかった選手を対象に、もう一度プロジェクトに取り組んでもいいかもしれません。
昨年いろいろと試行錯誤し、今年に関してはいろいろなことが見えてきた実感があります。毎年少しずつでも上積みし続けて、それをもっともっと、大きなものにしていきたいと思っています」
本命不在で激戦が予想される関東大学アメリカンフットボールリーグ トップ8。法政オレンジは入念に磨き上げたフィジカルを前面に押し出し、今年も正面突破で戦い抜く。