体重・筋量UP
「筋トレをやっても腱や靭帯は強化できない」とある有名選手が発言して話題になったことがある。だが、これは半分正しく、半分間違っている。実は、腱を強化することは可能なのだ。
腱を強化する方法、それは「ネガティブエクササイズ」である。では、この「ネガティブ」とは何のことなのだろう。
筋肉が力を発揮する形態は3種類ある。一つ目は「コンセントリック」であり、これは筋肉が短くなりながら力を発揮するものだ。バーベルカールで肘を曲げていく動作が、これである。そしてコンセントリックに筋肉が力を発揮していく動作のことを「ポジティブ」と呼ぶ。
二つ目は「エキセントリック」である。これは、筋肉が伸びながら力を発揮する形態だ。バーベルカールでいえば、肘を伸ばしていく動作がこれである。そしてエキセントリックに筋肉が力を発揮していく動作のことを「ネガティブ」と呼ぶ。
三番目は「アイソメトリック」である。これは筋肉が伸びも縮みもせず、同じ長さで力を発揮している状態だ。バーベルカールの途中でバーを静止させた状態が、これである。アイソメトリックに筋肉が力を発揮している動作のことを「アイソメトリクス」と呼ぶ。空気イスの状態をイメージするとわかりやすいだろう。
ウォリアーなら経験でわかっているだろう。この三種類の中で最も強い力を発揮できるのが、ネガティブである。では、なぜネガティブならば強い力を出せるのか。
筋肉に「アクチン」や「ミオシン」というタンパク質があることを知っているウォリアーは多いはずだ。ミオシンの頭部がアクチンを引き寄せることにより、筋肉が収縮する。これを「滑り説」と呼ぶ。
ミオシンとアクチンは筋肉の収縮に関わるため「収縮タンパク質」と呼ばれる。それと別に、筋肉の構造を支える「構造タンパク質」というものもある。その代表的な存在が「タイチン(コネクチン)」である。タイチンは柔軟性のある「Tandem Ig」と、固い構造をしている「PEVK」から出来ており、この二つが N2A というセグメントで結合している。
次にタイチンの図を示そう。グレーの太い線はアクチン、赤の部分はクロスブリッジだ。
このとき、力を入れずにただストレッチだけをすると、次の図 A のようになる。しかしトレーニングで筋力を発揮するときは、ここにカルシウムイオンが登場してくる。そしてポジティブの時、N2A がアクチンに巻き付いて図 B のようになる。
すると固い構造をしている PEVK が引っ張られ、ゆるみが無くなる。そのためネガティブの動き、つまり引き延ばす動きにおいては強い力を発揮できることになるのだ。(※1)
そして重要なのは、ネガティブは強い力を発揮できるため、筋肥大・筋力増強効果が高いということである(※2, ※3, ※4, ※5)。
ここで心配になるのは、強い力を発揮することはケガの原因になるのではないか、ということだ。しかしそれも心配はいらない。高齢者を対象にした研究でも、エキセントリック・トレーニングによって安全に筋力を高められており(※6)、またエキセントリック・トレーニングはアスリートの怪我をむしろ防ぐ、という報告もある(※7, ※8)。
私たちの身体は 60 兆個もの細胞から成り立っていると言われるが、細胞はそのままだとバラバラになってしまう。よって、細胞の「接着剤」が必要となる。この細胞の接着剤となるのが細胞外マトリックス(ECM)と呼ばれるもので、その主成分はコラーゲンである。
そしてネガティブによる刺激が、ECM のコラーゲン生成を強化してくれるのである。多くの報告・レビューが、ネガティブエクササイズは腱の強化に役立ったり、怪我からの回復を早めたりすることを示している(※9, ※10, ※11, ※12)。
次回、ネガティブエクササイズの具体的な行い方について紹介していこう。
「筋トレをやっても腱や靭帯は強化できない」とある有名選手が発言して話題になったことがある。だが、これは半分正しく、半分間違っている。実は、腱を強化することは可能なのだ。
腱を強化する方法、それは「ネガティブエクササイズ」である。では、この「ネガティブ」とは何のことなのだろう。
筋肉が力を発揮する形態は3種類ある。一つ目は「コンセントリック」であり、これは筋肉が短くなりながら力を発揮するものだ。バーベルカールで肘を曲げていく動作が、これである。そしてコンセントリックに筋肉が力を発揮していく動作のことを「ポジティブ」と呼ぶ。
二つ目は「エキセントリック」である。これは、筋肉が伸びながら力を発揮する形態だ。バーベルカールでいえば、肘を伸ばしていく動作がこれである。そしてエキセントリックに筋肉が力を発揮していく動作のことを「ネガティブ」と呼ぶ。
三番目は「アイソメトリック」である。これは筋肉が伸びも縮みもせず、同じ長さで力を発揮している状態だ。バーベルカールの途中でバーを静止させた状態が、これである。アイソメトリックに筋肉が力を発揮している動作のことを「アイソメトリクス」と呼ぶ。空気イスの状態をイメージするとわかりやすいだろう。
ウォリアーなら経験でわかっているだろう。この三種類の中で最も強い力を発揮できるのが、ネガティブである。では、なぜネガティブならば強い力を出せるのか。
筋肉に「アクチン」や「ミオシン」というタンパク質があることを知っているウォリアーは多いはずだ。ミオシンの頭部がアクチンを引き寄せることにより、筋肉が収縮する。これを「滑り説」と呼ぶ。
ミオシンとアクチンは筋肉の収縮に関わるため「収縮タンパク質」と呼ばれる。それと別に、筋肉の構造を支える「構造タンパク質」というものもある。その代表的な存在が「タイチン(コネクチン)」である。タイチンは柔軟性のある「Tandem Ig」と、固い構造をしている「PEVK」から出来ており、この二つが N2A というセグメントで結合している。
次にタイチンの図を示そう。グレーの太い線はアクチン、赤の部分はクロスブリッジだ。
このとき、力を入れずにただストレッチだけをすると、次の図 A のようになる。しかしトレーニングで筋力を発揮するときは、ここにカルシウムイオンが登場してくる。そしてポジティブの時、N2A がアクチンに巻き付いて図 B のようになる。
すると固い構造をしている PEVK が引っ張られ、ゆるみが無くなる。そのためネガティブの動き、つまり引き延ばす動きにおいては強い力を発揮できることになるのだ。(※1)
そして重要なのは、ネガティブは強い力を発揮できるため、筋肥大・筋力増強効果が高いということである(※2, ※3, ※4, ※5)。
ここで心配になるのは、強い力を発揮することはケガの原因になるのではないか、ということだ。しかしそれも心配はいらない。高齢者を対象にした研究でも、エキセントリック・トレーニングによって安全に筋力を高められており(※6)、またエキセントリック・トレーニングはアスリートの怪我をむしろ防ぐ、という報告もある(※7, ※8)。
私たちの身体は 60 兆個もの細胞から成り立っていると言われるが、細胞はそのままだとバラバラになってしまう。よって、細胞の「接着剤」が必要となる。この細胞の接着剤となるのが細胞外マトリックス(ECM)と呼ばれるもので、その主成分はコラーゲンである。
そしてネガティブによる刺激が、ECM のコラーゲン生成を強化してくれるのである。多くの報告・レビューが、ネガティブエクササイズは腱の強化に役立ったり、怪我からの回復を早めたりすることを示している(※9, ※10, ※11, ※12)。
次回、ネガティブエクササイズの具体的な行い方について紹介していこう。