競技パフォーマンスUP
体育の授業で「今日は長距離走をやるぞ」と言われたときは、みんな怪訝な顔をしたに違いない。しかし成人後に体力不足を痛感し「何か運動でもしよう」となったとき、最初に思い浮かぶのは「軽く走ってみようか」という考えではないだろうか。
日本人にとって長距離走は良い意味でも悪い意味でも「運動」の原点。就職活動でも「長距離をやっていました」と言えば「粘りがある」と見なされ、就職に有利に働くといわれる。
しかし、ただ走るだけではダメだ。マラソンでは走っている途中で失速し、棄権してしまう選手も数多い。練習では走れていたのに、本番ではなぜうまくいかないのか。
コンディションを最も大きく左右するのが、栄養条件である。栄養条件を整えることによって、効率よく持久力を高め、最大のパフォーマンスを発揮することができる。その具体的な方法を伝授していこう。
ブドウ糖を体内に貯蔵できる形態にしたものが「グリコーゲン」だ。グリコーゲンは肝臓や筋肉に溜め込まれる。普通の成人で肝臓に100g、筋肉に300g程度のグリコーゲンが貯蔵されているが、「カーボローディング」を行うことによって、その量を増やすことができる。つまりガソリンを満タンにできるわけだ。
カーボとは炭水化物、ローディングとは詰め込むという意味で、炭水化物を大量に摂取してグリコーゲンを増やすことを、カーボローディングと呼ぶ。1939年にはすでにChristensenとHansenにより、炭水化物を多く摂取することで持久力が向上することが報告されていた。そして1967年になり、Ahlborgによってカーボローディングの原型となるメソッドが示された。
Ahlborgの提唱した方法は、3~4日間の低炭水化物食を行い、その後で3日間の高炭水化物食を行うというものだ。わざと低炭水化物食の期間を設け、その反動でグリコーゲンを蓄積しやすくするというわけである。
ただし、それで成功する選手もいたが、失敗した選手も多かった。低炭水化物の期間において、筋肉の痙攣や集中力の低下、風邪、胃腸の不快感など、コンディションを崩すことが多かったのである。最近は低糖質ダイエットが流行っているが、これの初期にもそうした症状が起こりやすい。体調の変化に敏感な試合前の選手が行った場合、コンディションを崩すのも当然だろう。
1983年になると、Sherman とCostillが新しいカーボローディングの方法を提唱する。これはまず、1週間前から運動時間を減らす(テーパリング)。具体的には運動強度を70~75%Vo2maxとし、1日目は90分、2~3日目は40分、4~5日めは20分の運動に抑える。そして食事においては、最初の3日間は体重1kgあたり約4gの炭水化物、次の3~4日間は体重1kgあたり約10gの炭水化物を摂取する、というものだ。
この「運動量を減らしつつ、炭水化物の摂取量を増やす」方法により、試合前の選手に負担をかけず、グリコーゲンを無理なく満タンにできるようになったのである。
体育の授業で「今日は長距離走をやるぞ」と言われたときは、みんな怪訝な顔をしたに違いない。しかし成人後に体力不足を痛感し「何か運動でもしよう」となったとき、最初に思い浮かぶのは「軽く走ってみようか」という考えではないだろうか。
日本人にとって長距離走は良い意味でも悪い意味でも「運動」の原点。就職活動でも「長距離をやっていました」と言えば「粘りがある」と見なされ、就職に有利に働くといわれる。
しかし、ただ走るだけではダメだ。マラソンでは走っている途中で失速し、棄権してしまう選手も数多い。練習では走れていたのに、本番ではなぜうまくいかないのか。
コンディションを最も大きく左右するのが、栄養条件である。栄養条件を整えることによって、効率よく持久力を高め、最大のパフォーマンスを発揮することができる。その具体的な方法を伝授していこう。
ブドウ糖を体内に貯蔵できる形態にしたものが「グリコーゲン」だ。グリコーゲンは肝臓や筋肉に溜め込まれる。普通の成人で肝臓に100g、筋肉に300g程度のグリコーゲンが貯蔵されているが、「カーボローディング」を行うことによって、その量を増やすことができる。つまりガソリンを満タンにできるわけだ。
カーボとは炭水化物、ローディングとは詰め込むという意味で、炭水化物を大量に摂取してグリコーゲンを増やすことを、カーボローディングと呼ぶ。1939年にはすでにChristensenとHansenにより、炭水化物を多く摂取することで持久力が向上することが報告されていた。そして1967年になり、Ahlborgによってカーボローディングの原型となるメソッドが示された。
Ahlborgの提唱した方法は、3~4日間の低炭水化物食を行い、その後で3日間の高炭水化物食を行うというものだ。わざと低炭水化物食の期間を設け、その反動でグリコーゲンを蓄積しやすくするというわけである。
ただし、それで成功する選手もいたが、失敗した選手も多かった。低炭水化物の期間において、筋肉の痙攣や集中力の低下、風邪、胃腸の不快感など、コンディションを崩すことが多かったのである。最近は低糖質ダイエットが流行っているが、これの初期にもそうした症状が起こりやすい。体調の変化に敏感な試合前の選手が行った場合、コンディションを崩すのも当然だろう。
1983年になると、Sherman とCostillが新しいカーボローディングの方法を提唱する。これはまず、1週間前から運動時間を減らす(テーパリング)。具体的には運動強度を70~75%Vo2maxとし、1日目は90分、2~3日目は40分、4~5日めは20分の運動に抑える。そして食事においては、最初の3日間は体重1kgあたり約4gの炭水化物、次の3~4日間は体重1kgあたり約10gの炭水化物を摂取する、というものだ。
この「運動量を減らしつつ、炭水化物の摂取量を増やす」方法により、試合前の選手に負担をかけず、グリコーゲンを無理なく満タンにできるようになったのである。