体重・筋量UP

Part 62 「最適なインターバルについて考える」

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体重・筋量UP

Part 62 「最適なインターバルについて考える」

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目  的: セット間インターバルの最適化
メリット: ウェイトトレーニングの効率を最大化

はじめてウェイトトレーニングを教わった時のことを思い出してほしい。まずは軽めの重量でフォームを身につけ、徐々に重くしていく。フォームに慣れたところで、「では10回を4セットやろう」というように、重量とセット数が決まる。そして「このプログラムを週2回行おう」というように、トレーニング頻度が決まる。
しかし、セット間のインターバルについて明確な指示を受けた記憶はあるだろうか? トレーニング入門書を読んでも、具体的なインターバルについては指定されていないことが多い。

「インターバルは1分ぐらいにした方が、成長ホルモンが出て筋肉が発達しやすい」といわれることもある。しかし、それは本当だろうか?
そもそもインターバルは何のために取るのか。インターバルが必要なのは、1セットより多くのセットを行う場合だ。なお当然ながら「同一種目を行う場合」である。

1セット以上行う理由。それは筋肉にできるだけ強い刺激を与えるためである。刺激は物理的刺激と化学的刺激とに分けて考えることができる。強い物理的刺激を与える場合、使用重量は重くなるほど効果的だ。そのためには、インターバルは十分に休み、回復させねばならない。短いインターバルで行うと使用重量は落ちてしまうし、十分なレップスもこなせなくなる。そして弱い物理的刺激しか与えられなくなる。
化学的刺激を強くする場合、インターバルを短くして疲労物質をため込む必要がありそうだ。しかしこの場合も、短インターバルでは結局レップスをこなせないため、蓄積する疲労物質の総量が頭打ちになってしまう。ある程度インターバルを置いて回復させ、十分なレップスを行って追い込んだ方が、結局は多量の疲労物質を発生させられる可能性も高い。

化学的刺激とは水素イオンやアンモニアなどの疲労物質発生の他に、酸素やATP、活性酸素、pHの変化なども指す。これらの「ダイナミックな環境の変化」が重要なのだ。よりダイナミックな変化が起こるほど、化学的刺激も強くなる。つまり短インターバルで常に疲労させているよりも、一度は十分に回復させてから改めて疲労させた方が「変化量」としては大きくなる、ということを考えねばならない。
つまり、いずれにしてもセット間インターバルは、ある程度の長さを必要にすると思われる。では実際にはどうだろうか。

2008年のBahmanらの研究によれば、スクワットで筋力を向上させるためには、4分程度のインターバルを取ることが最適だったとされている1
またトレーニング経験者にベンチプレスとレッグプレスを行わせ、インターバルが1分の群と3分の群、5分の群に分けて16週間トレーニングを行い、筋力を比較したところ、5分インターバル群が最大の効果であり、1分インターバル群が最低の効果だった2
そして21名のトレーニング経験者を対象に1分インターバルと3分インターバルで8週間のトレーニングを行い、効果を比較したところ、筋力と筋肥大どちらも3分インターバルのほうが高い効果を示している3
なおPAP (Postactivation potentiation: 活動後増強)について調べたところ、ベンチプレスの場合は7分のインターバルが最も効果的だったとされている4
PAPとは事前に高強度の筋収縮を起こすことでカルシウムイオンに対するミオシンリン酸化が起こりやすくなり、筋収縮力が増加する現象である。

では、成長ホルモンの効果についてはどうだろうか。2011年のDaniel. W. D. Westらの報告によれば、脚のトレーニングを12週間に渡ってハードに行ったところ、トレーニングによって分泌が高まった成長ホルモンやIGF-1と、筋発達との関連性はほとんど見られなかったという5
つまり成長ホルモンは短インターバルトレーニングによって増加するものの、筋力増加や筋肥大に関しては効果がなかったということだ。
またトレーニング未経験者を用いて1分間のインターバルと2.5分間のインターバルで比較した研究では、1分間の方がトレーニング後のテストステロンやコルチゾルのレベルが高くなったものの、トレーニング期間が長くなるにつれて差が小さくなり、10週間後には両者の差がなくなっている。そして筋断面積は1分群が5.1%の増加だったのに対し、2.5分群は12.3%の増加だった6
このような結果から、短いインターバルでのトレーニングは少なくとも筋肥大や筋力強化としては向いていない、と思われる。体脂肪を減少させたいならば、短いインターバルで成長ホルモンの増加を狙ったり、心拍数を高くキープしたりすることに意味はあるが。
目的が筋力向上や筋肥大の場合、肩や腕などの小さい筋肉では2~3分、背中や脚などの大きい筋肉では4~5分のインターバルを取るのが、心肺機能の回復も含め、現実的だといえるだろう。

Mr.D


Mr.D
栄養・サプリメント・トレーニングについて、聞けば全てに答えを持っているウォリアー界の生き字引的存在。数々の有名選手のパフォーマンスアップの裏にもMr.Dの存在が…。

【参考文献】

  • 1 :COMPARISON OF 3 DIFFERENT REST INTERVALS ON SUSTAINABILITY OF SQUAT REPETITIONS WITH HEAVY VS.LIGHT LOADS Brazilian Journal of Biomotricity, vol. 2, num. 4, diciembre, 2008, pp. 220-229
  • 2 :Strength increases in upper and lower body are larger with longer inter-set rest intervals in trained men. J Sci Med Sport. 2010 Jul;13(4):429-33. doi: 10.1016/j.jsams.2009.08.002. Epub 2009 Oct 7.
  • 3 :Longer inter-set rest periods enhance muscle strength and hypertrophy in resistance-trained men Journal of Strength and Conditioning Research 2015 November 20
  • 4 :Postactivation Potentiation: Effect of Various Recovery Intervals on Bench Press Power Performance J Strength Cond Res. 2012 Mar;26(3):739-44. doi: 10.1519/JSC.0b013e318225f371.
  • 5 :Associations of exercise-induced hormone profiles and gains in strength and hypertrophy in a large cohort after weight training Eur J Appl Physiol. 2012 Jul;112(7):2693-702. doi: 10.1007/s00421-011-2246-z. Epub 2011 Nov 22.
  • 6 :The effect of resistive exercise rest interval on hormonal response, strength, and hypertrophy with training. J Strength Cond Res. 2009 Jan;23(1):62-71. doi: 10.1519/JSC.0b013e318185f14a.
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◆目的
セット間インターバルの最適化

◆メリット
ウェイトトレーニングの効率を最大化

はじめてウェイトトレーニングを教わった時のことを思い出してほしい。まずは軽めの重量でフォームを身につけ、徐々に重くしていく。フォームに慣れたところで、「では10回を4セットやろう」というように、重量とセット数が決まる。そして「このプログラムを週2回行おう」というように、トレーニング頻度が決まる。
しかし、セット間のインターバルについて明確な指示を受けた記憶はあるだろうか? トレーニング入門書を読んでも、具体的なインターバルについては指定されていないことが多い。

「インターバルは1分ぐらいにした方が、成長ホルモンが出て筋肉が発達しやすい」といわれることもある。しかし、それは本当だろうか?
そもそもインターバルは何のために取るのか。インターバルが必要なのは、1セットより多くのセットを行う場合だ。なお当然ながら「同一種目を行う場合」である。

1セット以上行う理由。それは筋肉にできるだけ強い刺激を与えるためである。刺激は物理的刺激と化学的刺激とに分けて考えることができる。強い物理的刺激を与える場合、使用重量は重くなるほど効果的だ。そのためには、インターバルは十分に休み、回復させねばならない。短いインターバルで行うと使用重量は落ちてしまうし、十分なレップスもこなせなくなる。そして弱い物理的刺激しか与えられなくなる。
化学的刺激を強くする場合、インターバルを短くして疲労物質をため込む必要がありそうだ。しかしこの場合も、短インターバルでは結局レップスをこなせないため、蓄積する疲労物質の総量が頭打ちになってしまう。ある程度インターバルを置いて回復させ、十分なレップスを行って追い込んだ方が、結局は多量の疲労物質を発生させられる可能性も高い。

化学的刺激とは水素イオンやアンモニアなどの疲労物質発生の他に、酸素やATP、活性酸素、pHの変化なども指す。これらの「ダイナミックな環境の変化」が重要なのだ。よりダイナミックな変化が起こるほど、化学的刺激も強くなる。つまり短インターバルで常に疲労させているよりも、一度は十分に回復させてから改めて疲労させた方が「変化量」としては大きくなる、ということを考えねばならない。
つまり、いずれにしてもセット間インターバルは、ある程度の長さを必要にすると思われる。では実際にはどうだろうか。

2008年のBahmanらの研究によれば、スクワットで筋力を向上させるためには、4分程度のインターバルを取ることが最適だったとされている1
またトレーニング経験者にベンチプレスとレッグプレスを行わせ、インターバルが1分の群と3分の群、5分の群に分けて16週間トレーニングを行い、筋力を比較したところ、5分インターバル群が最大の効果であり、1分インターバル群が最低の効果だった2
そして21名のトレーニング経験者を対象に1分インターバルと3分インターバルで8週間のトレーニングを行い、効果を比較したところ、筋力と筋肥大どちらも3分インターバルのほうが高い効果を示している3
なおPAP (Postactivation potentiation: 活動後増強)について調べたところ、ベンチプレスの場合は7分のインターバルが最も効果的だったとされている4
PAPとは事前に高強度の筋収縮を起こすことでカルシウムイオンに対するミオシンリン酸化が起こりやすくなり、筋収縮力が増加する現象である。

では、成長ホルモンの効果についてはどうだろうか。2011年のDaniel. W. D. Westらの報告によれば、脚のトレーニングを12週間に渡ってハードに行ったところ、トレーニングによって分泌が高まった成長ホルモンやIGF-1と、筋発達との関連性はほとんど見られなかったという5
つまり成長ホルモンは短インターバルトレーニングによって増加するものの、筋力増加や筋肥大に関しては効果がなかったということだ。
またトレーニング未経験者を用いて1分間のインターバルと2.5分間のインターバルで比較した研究では、1分間の方がトレーニング後のテストステロンやコルチゾルのレベルが高くなったものの、トレーニング期間が長くなるにつれて差が小さくなり、10週間後には両者の差がなくなっている。そして筋断面積は1分群が5.1%の増加だったのに対し、2.5分群は12.3%の増加だった6
このような結果から、短いインターバルでのトレーニングは少なくとも筋肥大や筋力強化としては向いていない、と思われる。体脂肪を減少させたいならば、短いインターバルで成長ホルモンの増加を狙ったり、心拍数を高くキープしたりすることに意味はあるが。
目的が筋力向上や筋肥大の場合、肩や腕などの小さい筋肉では2~3分、背中や脚などの大きい筋肉では4~5分のインターバルを取るのが、心肺機能の回復も含め、現実的だといえるだろう。

Mr.D


Mr.D
栄養・サプリメント・トレーニングについて、聞けば全てに答えを持っているウォリアー界の生き字引的存在。数々の有名選手のパフォーマンスアップの裏にもMr.Dの存在が…。

【参考文献】

  • 1 :COMPARISON OF 3 DIFFERENT REST INTERVALS ON SUSTAINABILITY OF SQUAT REPETITIONS WITH HEAVY VS.LIGHT LOADS Brazilian Journal of Biomotricity, vol. 2, num. 4, diciembre, 2008, pp. 220-229
  • 2 :Strength increases in upper and lower body are larger with longer inter-set rest intervals in trained men. J Sci Med Sport. 2010 Jul;13(4):429-33. doi: 10.1016/j.jsams.2009.08.002. Epub 2009 Oct 7.
  • 3 :Longer inter-set rest periods enhance muscle strength and hypertrophy in resistance-trained men Journal of Strength and Conditioning Research 2015 November 20
  • 4 :Postactivation Potentiation: Effect of Various Recovery Intervals on Bench Press Power Performance J Strength Cond Res. 2012 Mar;26(3):739-44. doi: 10.1519/JSC.0b013e318225f371.
  • 5 :Associations of exercise-induced hormone profiles and gains in strength and hypertrophy in a large cohort after weight training Eur J Appl Physiol. 2012 Jul;112(7):2693-702. doi: 10.1007/s00421-011-2246-z. Epub 2011 Nov 22.
  • 6 :The effect of resistive exercise rest interval on hormonal response, strength, and hypertrophy with training. J Strength Cond Res. 2009 Jan;23(1):62-71. doi: 10.1519/JSC.0b013e318185f14a.