健康・体力・美容UP
目 的: | 効果的なトレーニングプログラムの作成 |
メリット: | 効率のいいトレーニング、オーバーワークの防止 |
レジスタンストレーニングにおけるエクササイズは「単関節運動」と「多関節運動」の2つに分けることができる。
単関節運動は1つの関節だけが動くエクササイズのこと。
肘関節だけが動くバーベルカールや、膝関節だけが動くレッグエクステンションなどが代表的なエクササイズだ。
一方で多関節運動は、2つ以上の関節が動くエクササイズのこと。
股関節と膝関節、足関節が動くスクワットや、肩関節と肘関節が動くチンニングなどが代表的なエクササイズとなる。
多くの関節を動かすということは、多くの筋肉を動かすということでもある。
つまり多関節運動の方が多くの筋肉が動員され、高重量を扱うことができる。また動作においてバランスが必要とされ、軌道も長くなり、神経系の発達も期待できる。
そのため競技能力を向上させるなら、多関節運動の方が効果的であろうことは理解できるだろう。
しかし個別の筋肉を鍛えるのが目的の場合、単関節運動と多関節運動のどちらが効果的なのか。
大腿四頭筋を肥大させたい場合、レッグエクステンションとスクワットのどちらがより効果的なのだろう?
なお筋肥大以外にも、筋肉を個別に鍛える必要性が生じることがある。
例えばベンチプレスで大胸筋はまだ余裕があるのに、上腕三頭筋が弱くて高重量が挙がらないような場合、上腕三頭筋だけを独立して強化することにより、ベンチプレスの使用重量を伸ばすことが可能になる。
29名の男子学生(トレーニング未経験)を対象に、10週間にわたってラットプルダウン(順手のワイドグリップ)を行った群とバーベルカールを行った群とで比較した研究がある。
その結果、上腕二頭筋の筋厚とピークトルクは、両者とも同程度の伸びを示していた1。
ラットプルダウンだけで効果があるのなら、バーベルカールは無駄なのだろうか?
ただしこれは、トレーニング未経験者の場合だ。またトレーニング経験者は多くの場合、ラットプルダウンだけでなく、さらにバーベルカールを追加して行っている。
多関節運動に単関節運動を追加して行った場合はどうだろうか?
29名のトレーニング未経験者を対象に、「ベンチプレスとラットプルダウンだけ」の群と「ベンチプレスとラットプルダウン、そして二頭と三頭のエクササイズ」を行った群とで比較した研究がある。
この場合も、やはり筋肉量と筋力において、両者に差は出なかったのだ2。
ではトレーニング経験者の場合はどうか。
2年以上のトレーニング経験者20名を対象に、8週間にわたって行われた研究がある。
多関節エクササイズ群は月曜と木曜に「インクラインベンチ+フラットベンチ+デクラインベンチ+プッシュアップ+ショルダープレス」、火曜と金曜に「Vバープルダウン+マシンロウ+アンダーグリッププルダウン+プーリーロウ+アップライトロウ」を行った。
そして多関節+単関節エクササイズ群は、上記エクササイズに追加して月曜と木曜にケーブルでのエクステンションを2種目、火曜と金曜にダンベルでのカールを行った3。
その結果、腕の周径と筋力において、やはり両者の間に顕著な違いは見られなかったのである。
8週間という短い期間での研究であるため、これだけで簡単に結論は出せないが、時間がない時、無理に単関節のエクササイズを追加する必要はないのかもしれない。
なお単関節運動は個々の筋肉を独立させて強烈に刺激するため、回復に時間がかかる。そのため単関節運動を追加することで、オーバーワークを招いてしまっている可能性もありそうだ。
16名のベテラントレーニーを対象にした面白い研究がある。片方の腕でカールを8セット行い、逆の腕ではプーリーロウ(ワンハンド)を8セット行ったのだ。その結果、プーリーロウを行った腕は24時間でほとんど回復したが、カールを行ったほうの腕は回復に96時間近くもかかっていた4。
確かに単関節運動は強い刺激を対象筋に与えることができるが、それはオーバーワークと隣り合わせなのである。
特に腕はオーバーワークになりやすく、日本で行われた研究では腕のトレーニングと同じ日にHIITを行ったところ、腕の筋肉量と筋力の増加が阻害されたと報告されている5。
ここまで紹介してきたのは、上半身のエクササイズによる研究である。
では下半身はどうだろうか。
下半身は上半身に比べ、トレーニングにある程度のボリュームがあった方が効果的だといわれている。
21名のトレーニング未経験者を対象に「下半身のエクササイズ3種目を3セットずつ+上半身のエクササイズ5種目を1セットずつ」行った群と「下半身のエクササイズ3種目を1セットずつ+上半身のエクササイズ5種目を3セットずつ」行った群とで比較した。
その結果、上半身は1セット群と3セット群との間に違いはなかったのだが、下半身は1セット群に比べ、3セット群のほうが高い効果を見せていた6。
そのため、下半身についてはレッグエクステンションやレッグカールなどの単関節エクササイズを追加しても、オーバーワークにはなりにくいかもしれない。これらのエクササイズは膝関節伸展位や屈曲位で強い負荷を与えることが可能となるため、筋肥大を目指す場合は有効だと思われる。
トレーニングプログラムを考えることは、ウォリアーの楽しみの1つでもある。これからのプログラミングに今回のデータをぜひ役立ててほしい。
Mr.D
Mr.D
栄養・サプリメント・トレーニングについて、聞けば全てに答えを持っているウォリアー界の生き字引的存在。数々の有名選手のパフォーマンスアップの裏にもMr.Dの存在が…。
◆目的
効果的なトレーニングプログラムの作成
◆メリット
効率のいいトレーニング、オーバーワークの防止
レジスタンストレーニングにおけるエクササイズは「単関節運動」と「多関節運動」の2つに分けることができる。
単関節運動は1つの関節だけが動くエクササイズのこと。
肘関節だけが動くバーベルカールや、膝関節だけが動くレッグエクステンションなどが代表的なエクササイズだ。
一方で多関節運動は、2つ以上の関節が動くエクササイズのこと。
股関節と膝関節、足関節が動くスクワットや、肩関節と肘関節が動くチンニングなどが代表的なエクササイズとなる。
多くの関節を動かすということは、多くの筋肉を動かすということでもある。
つまり多関節運動の方が多くの筋肉が動員され、高重量を扱うことができる。また動作においてバランスが必要とされ、軌道も長くなり、神経系の発達も期待できる。
そのため競技能力を向上させるなら、多関節運動の方が効果的であろうことは理解できるだろう。
しかし個別の筋肉を鍛えるのが目的の場合、単関節運動と多関節運動のどちらが効果的なのか。
大腿四頭筋を肥大させたい場合、レッグエクステンションとスクワットのどちらがより効果的なのだろう?
なお筋肥大以外にも、筋肉を個別に鍛える必要性が生じることがある。
例えばベンチプレスで大胸筋はまだ余裕があるのに、上腕三頭筋が弱くて高重量が挙がらないような場合、上腕三頭筋だけを独立して強化することにより、ベンチプレスの使用重量を伸ばすことが可能になる。
29名の男子学生(トレーニング未経験)を対象に、10週間にわたってラットプルダウン(順手のワイドグリップ)を行った群とバーベルカールを行った群とで比較した研究がある。
その結果、上腕二頭筋の筋厚とピークトルクは、両者とも同程度の伸びを示していた1。
ラットプルダウンだけで効果があるのなら、バーベルカールは無駄なのだろうか?
ただしこれは、トレーニング未経験者の場合だ。またトレーニング経験者は多くの場合、ラットプルダウンだけでなく、さらにバーベルカールを追加して行っている。
多関節運動に単関節運動を追加して行った場合はどうだろうか?
29名のトレーニング未経験者を対象に、「ベンチプレスとラットプルダウンだけ」の群と「ベンチプレスとラットプルダウン、そして二頭と三頭のエクササイズ」を行った群とで比較した研究がある。
この場合も、やはり筋肉量と筋力において、両者に差は出なかったのだ2。
ではトレーニング経験者の場合はどうか。
2年以上のトレーニング経験者20名を対象に、8週間にわたって行われた研究がある。
多関節エクササイズ群は月曜と木曜に「インクラインベンチ+フラットベンチ+デクラインベンチ+プッシュアップ+ショルダープレス」、火曜と金曜に「Vバープルダウン+マシンロウ+アンダーグリッププルダウン+プーリーロウ+アップライトロウ」を行った。
そして多関節+単関節エクササイズ群は、上記エクササイズに追加して月曜と木曜にケーブルでのエクステンションを2種目、火曜と金曜にダンベルでのカールを行った3。
その結果、腕の周径と筋力において、やはり両者の間に顕著な違いは見られなかったのである。
8週間という短い期間での研究であるため、これだけで簡単に結論は出せないが、時間がない時、無理に単関節のエクササイズを追加する必要はないのかもしれない。
なお単関節運動は個々の筋肉を独立させて強烈に刺激するため、回復に時間がかかる。そのため単関節運動を追加することで、オーバーワークを招いてしまっている可能性もありそうだ。
16名のベテラントレーニーを対象にした面白い研究がある。片方の腕でカールを8セット行い、逆の腕ではプーリーロウ(ワンハンド)を8セット行ったのだ。その結果、プーリーロウを行った腕は24時間でほとんど回復したが、カールを行ったほうの腕は回復に96時間近くもかかっていた4。
確かに単関節運動は強い刺激を対象筋に与えることができるが、それはオーバーワークと隣り合わせなのである。
特に腕はオーバーワークになりやすく、日本で行われた研究では腕のトレーニングと同じ日にHIITを行ったところ、腕の筋肉量と筋力の増加が阻害されたと報告されている5。
ここまで紹介してきたのは、上半身のエクササイズによる研究である。
では下半身はどうだろうか。
下半身は上半身に比べ、トレーニングにある程度のボリュームがあった方が効果的だといわれている。
21名のトレーニング未経験者を対象に「下半身のエクササイズ3種目を3セットずつ+上半身のエクササイズ5種目を1セットずつ」行った群と「下半身のエクササイズ3種目を1セットずつ+上半身のエクササイズ5種目を3セットずつ」行った群とで比較した。
その結果、上半身は1セット群と3セット群との間に違いはなかったのだが、下半身は1セット群に比べ、3セット群のほうが高い効果を見せていた6。
そのため、下半身についてはレッグエクステンションやレッグカールなどの単関節エクササイズを追加しても、オーバーワークにはなりにくいかもしれない。これらのエクササイズは膝関節伸展位や屈曲位で強い負荷を与えることが可能となるため、筋肥大を目指す場合は有効だと思われる。
トレーニングプログラムを考えることは、ウォリアーの楽しみの1つでもある。これからのプログラミングに今回のデータをぜひ役立ててほしい。
Mr.D
Mr.D
栄養・サプリメント・トレーニングについて、聞けば全てに答えを持っているウォリアー界の生き字引的存在。数々の有名選手のパフォーマンスアップの裏にもMr.Dの存在が…。