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トレーニングのダメージを最適にケア ~必須脂肪酸とは?

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トレーニングのダメージを最適にケア ~必須脂肪酸とは?

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長かったシーズンも終わりに近づき、基礎的なフィジカルを身につけるオフシーズンが始まる。この時期を有効に活用し、来シーズンにつなげていくために必要なことは何か。それは「長いシーズンでダメージを受けた身体を完全にケアし、オフに行うハードなフィジカルトレーニングに耐えられるようにすること」である。

ダメージとはすなわち筋繊維や結合組織の損傷であり、炎症だ。これを回復させるためには、何よりもまず十分なたんぱく質を摂取することである。さらにビタミンやミネラルなどの微量栄養素も必要だ。

しかし、何かを忘れていないか?

「必須アミノ酸」というものがある。またビタミンやミネラルも、ウォリアーの身体にとって必須だ。「必須」とは「体内で作り出せないために、体外から摂取する必要がある」という意味だ。

実は「脂肪」にも必須とされるものがあるのだ。これから脂肪について簡単に説明していこう。ちなみに「必須炭水化物」というものは存在しない。

たんぱく質がアミノ酸から作られているように、脂肪は「脂肪酸」から作られている。これは名前の通り、「酸」である。これがアルカリと結合することで、脂肪は中性になる。それが健康診断などでよく出てくる「中性脂肪」のことだ。

このアルカリ部分になるものが、「グリセロール(グリセリン)」であり、「グリセロール1分子+脂肪酸3分子」となったものが、「脂肪(中性脂肪)」となる。

脂肪にはさまざまな働きがある。細胞膜を始めとした身体の重要な構成物質の材料となり、エネルギー源でもあり、ホルモンの材料ともなり、脂溶性ビタミンの吸収を促進したりする作用もある。

さらには細胞の神経線維を守る鞘の構成物質になったり、血管の内壁を保護したりする作用もあるほか、体温を調節して代謝をコントロールする褐色脂肪細胞もあり、内臓の位置を正常に保つ作用もある。

そしてもう一つ、脂肪には重要な作用がある。脂肪酸は「エイコサノイド」の材料になるのだ。では、エイコサノイドとはいったい何か。

ウォリアーの身体は周りの環境から影響を受けても、できるだけ同じ状態を保つようにできており、体温や血圧、血糖値などが常に一定の幅に収まるようになっている。これを「ホメオスタシス」と呼ぶ。

ホメオスタシスは主にホルモンによって維持されているが、それ以外にも局部的に働くホルモン様物質が作用することによって、ホメオスタシスの微妙なバランスが保たれる。この「局部的に働くホルモン様物質」のことを、エイコサノイドと呼ぶのである。

具体的には血圧や免疫レベル、血液の固まりやすさ、炎症などの微妙な調整や、睡眠の誘発、子宮や気管支など平滑筋収縮の作用などが、エイコサノイドによって担われているのだ。

エイコサノイドは大きく次の3つの系統に分けることができる。

  • 1. ガンマリノレン酸(GLA)からつくられる1系統エイコサノイド
  • 2. アラキドン酸(AA)からつくられる2系統エイコサノイド
  • 3. エイコサペンタエン酸(EPA)からつくられる3系統エイコサノイド

これらのエイコサノイドを作るために必要な脂肪酸を、「必須脂肪酸」と呼ぶのである。ただしGLAはリノール酸から作れるし、EPAはαリノレン酸から作ることもできるため、このGLAとαリノレン酸だけを必須脂肪酸とすることも可能ではある。

しかしこれらの変換は十分な酵素と時間が必要になる。またアルコールやストレス、トランス脂肪酸などの存在によって変換が邪魔されるのだ。つまりこれらはリノール酸をGLAにしたりαリノレン酸をEPAにしたりするのを邪魔することによって、健康に悪影響をもたらしている、ともいえる。このようなことから、GLAとAA、EPAを必須脂肪酸だと考えるようにしたい。実は、エイコサノイドには善玉とそうでないものがある。それについて、次号で語るとしよう。

 

(後編に続く)

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長かったシーズンも終わりに近づき、基礎的なフィジカルを身につけるオフシーズンが始まる。この時期を有効に活用し、来シーズンにつなげていくために必要なことは何か。それは「長いシーズンでダメージを受けた身体を完全にケアし、オフに行うハードなフィジカルトレーニングに耐えられるようにすること」である。

ダメージとはすなわち筋繊維や結合組織の損傷であり、炎症だ。これを回復させるためには、何よりもまず十分なたんぱく質を摂取することである。さらにビタミンやミネラルなどの微量栄養素も必要だ。

しかし、何かを忘れていないか?

「必須アミノ酸」というものがある。またビタミンやミネラルも、ウォリアーの身体にとって必須だ。「必須」とは「体内で作り出せないために、体外から摂取する必要がある」という意味だ。

実は「脂肪」にも必須とされるものがあるのだ。これから脂肪について簡単に説明していこう。ちなみに「必須炭水化物」というものは存在しない。

たんぱく質がアミノ酸から作られているように、脂肪は「脂肪酸」から作られている。これは名前の通り、「酸」である。これがアルカリと結合することで、脂肪は中性になる。それが健康診断などでよく出てくる「中性脂肪」のことだ。

このアルカリ部分になるものが、「グリセロール(グリセリン)」であり、「グリセロール1分子+脂肪酸3分子」となったものが、「脂肪(中性脂肪)」となる。

脂肪にはさまざまな働きがある。細胞膜を始めとした身体の重要な構成物質の材料となり、エネルギー源でもあり、ホルモンの材料ともなり、脂溶性ビタミンの吸収を促進したりする作用もある。

さらには細胞の神経線維を守る鞘の構成物質になったり、血管の内壁を保護したりする作用もあるほか、体温を調節して代謝をコントロールする褐色脂肪細胞もあり、内臓の位置を正常に保つ作用もある。

そしてもう一つ、脂肪には重要な作用がある。脂肪酸は「エイコサノイド」の材料になるのだ。では、エイコサノイドとはいったい何か。

ウォリアーの身体は周りの環境から影響を受けても、できるだけ同じ状態を保つようにできており、体温や血圧、血糖値などが常に一定の幅に収まるようになっている。これを「ホメオスタシス」と呼ぶ。

ホメオスタシスは主にホルモンによって維持されているが、それ以外にも局部的に働くホルモン様物質が作用することによって、ホメオスタシスの微妙なバランスが保たれる。この「局部的に働くホルモン様物質」のことを、エイコサノイドと呼ぶのである。

具体的には血圧や免疫レベル、血液の固まりやすさ、炎症などの微妙な調整や、睡眠の誘発、子宮や気管支など平滑筋収縮の作用などが、エイコサノイドによって担われているのだ。

エイコサノイドは大きく次の3つの系統に分けることができる。

  • 1. ガンマリノレン酸(GLA)からつくられる1系統エイコサノイド
  • 2. アラキドン酸(AA)からつくられる2系統エイコサノイド
  • 3. エイコサペンタエン酸(EPA)からつくられる3系統エイコサノイド

これらのエイコサノイドを作るために必要な脂肪酸を、「必須脂肪酸」と呼ぶのである。ただしGLAはリノール酸から作れるし、EPAはαリノレン酸から作ることもできるため、このGLAとαリノレン酸だけを必須脂肪酸とすることも可能ではある。

しかしこれらの変換は十分な酵素と時間が必要になる。またアルコールやストレス、トランス脂肪酸などの存在によって変換が邪魔されるのだ。つまりこれらはリノール酸をGLAにしたりαリノレン酸をEPAにしたりするのを邪魔することによって、健康に悪影響をもたらしている、ともいえる。このようなことから、GLAとAA、EPAを必須脂肪酸だと考えるようにしたい。実は、エイコサノイドには善玉とそうでないものがある。それについて、次号で語るとしよう。

 

(後編に続く)