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強力な免疫を確保せよ~ウイルス撃退テクニック

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常に強靭な肉体を誇るウォリアー。1対1の闘いならば、誰にも後れをとることはない。しかし、相手が多数だったら話は別だ。グンタイアリの大群からは、食物連鎖の頂点にいるジャガーですら逃げ出すという。
これまでに最も多くの人間を殺した生物はなにか。サメでもオオカミでもない。答えは「蚊」である。蚊の媒介するマラリアやデング熱などの様々なウイルスが原因となり、今でも年間70万人以上が命を落としているそうだ。ちなみに多くの人間を殺した生物、第2位は「人間」である。
オフシーズンに筋力や筋肉量を増やし、パフォーマンスをアップさせることができたはずだ。しかしそれも、風邪を引いてしまったら一気に元通りである。風邪やインフルエンザウイルスの超大群にも負けない身体をつくるためには、どうすれば良いのだろうか。


■免疫力の最前線

免疫には先天的な「自然免疫」と、後天的に獲得された「獲得免疫」の2種類がある。鼻水や咳、くしゃみなどはウイルスを体外に追い出すための手段であるが、これらも自然免疫に分類される。逆に考えると、鼻水や咳を止めようとして鼻炎薬や咳止めを飲むのは、自然免疫の邪魔をしているということにもなるのだ。
鼻水や咳、くしゃみで排出できなかったウイルスは鼻腔や気道に侵入してくる。このとき最前線に立って戦うのは「粘膜」だ。粘膜はムチンを主体とした粘液を分泌したり、線毛運動を起こしたりすることによって、ウイルスが体内に入り込むのを防いでくれる。
また粘膜にはインターフェロンの産生を誘導してマクロファージやNK細胞を増やし、自然免疫を誘導する作用がある。
さらにはT細胞やB細胞などを増殖・活性化させて、獲得免疫を強化する働きもあるのだ。
粘膜を強くするためにもっとも重要なのが「ビタミンA」である。なおβカロテンはビタミンAに変換されるが、その変換率は十分とは言えない。妊娠の可能性がある女性44,646名を対象としたRCT論文によれば、妊娠中の夜盲症の発症率低下や子供の9歳~13歳時における肺活量の増大はβカロテン摂取群では認められず、ビタミンA摂取群でのみ認められている¹。
よってビタミンAを含むレバーや卵などを、少なくとも冬の間はしっかり食べるようにしよう。なおビタミンAは脂溶性なので、油を使った調理法で摂取するようにしたい。


■外に出よ! ビタミンDを合成しよう!

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 2015年度版」では、ビタミンDの上限量が100μgになっている。2010年度版では50μgだったから、実に2倍になったわけだ。
これまでは”カルシウムの吸収を良くする”くらいの働きしか知られていなかったビタミンDであるが、さまざまな癌を予防する可能性が期待されたり、心臓血管系疾患による死亡率を低下させたり²、T細胞やB細胞などの免疫細胞を活性化したり³、インフルエンザA型を発症する割合を58%抑制できたりといった働きのあることが分かってきた。
ビタミンDは紫外線を浴びることにより、体内で合成できる。潜水艦の乗組員を調査したところ、かなり多くのビタミンDを摂取していても血中濃度を充分に維持できないという報告がある。ウォリアーは寒い時季であっても室内に閉じこもらず、日光に当たることを心掛けるようにしたい。
食事でビタミンDを摂取する場合、キノコ類や魚類の肝臓を食べるようにするといいだろう。


■ウォリアーのストレス対策

「引っ越しをすると風邪を引きやすい」という俗説がある。これは環境の変化も関係するが、引っ越しにより肉体的にも精神的にもストレスがかかることが大きな原因だろう。
では、なぜストレスがかかると風邪を引くのだろうか。
ストレスにより、コルチゾルというホルモンが分泌される。コルチゾルにはリンパ球を減らす働きがあり、また単球やマクロファージの機能を抑制する働きもある。そのため、免疫が低下するのだ。
コルチゾルには血糖値を高くする作用がある。そしてエネルギーを増やし、ストレスに対抗しようとするわけだ。血糖値を高めるためには筋肉を分解してアミノ酸を取り出し、それを材料としてブドウ糖を作り出す。
つまりストレスがかかると筋肉が分解され、免疫も低下してしまうというわけだ。ハードなトレーニングは引っ越し以上に強いストレスとなる。筋肉の炎症や活性酸素の発生なども起こるだろう。ウォリアーは筋肉を守り、免疫を低下させないために、ストレス対策を講じなければならない。
さて好中球やマクロファージ、リンパ球などの免疫細胞は、アミノ酸の「グルタミン」をエネルギーとして使っている。またグルタミンの濃度が高いほど、リンパ球の増殖も起こりやすくなる。 また筋肉が分解されるときに多く消費されるアミノ酸、それもグルタミンである。
つまりグルタミンを摂取することにより、ウォリアーは免疫を高めることができると同時に、筋肉を守ることもできるというわけだ。次回では具体的なグルタミンの摂取方法について解説しよう。

 

(後編に続く)

【参考文献】

  • 1:Maternal vitamin A supplementation and lung function in offspring. N Engl J Med. 2010 May 13;362(19):1784-94. doi: 10.1056/NEJMoa0907441.
  • 2:Vitamin D Deficiency and Supplementation: Impact on Cardiovascular Morbidity and Overall Mortality Circulation. 2010; 122: A12680
  • 3:The Physicians Desk Reference. 2006 Thompson Healthcare. Circulation. 2010; 122: A12680
  • 4:Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren. Am J Clin Nutr. 2010 May;91(5):1255-60. doi: 10.3945/ajcn.2009.29094. Epub 2010 Mar 10.
  • 5:Vitamin D supplementation in underway submariners. Aviat Space Environ Med. 2005 Jun;76(6):569-75.
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常に強靭な肉体を誇るウォリアー。1対1の闘いならば、誰にも後れをとることはない。しかし、相手が多数だったら話は別だ。グンタイアリの大群からは、食物連鎖の頂点にいるジャガーですら逃げ出すという。
これまでに最も多くの人間を殺した生物はなにか。サメでもオオカミでもない。答えは「蚊」である。蚊の媒介するマラリアやデング熱などの様々なウイルスが原因となり、今でも年間70万人以上が命を落としているそうだ。ちなみに多くの人間を殺した生物、第2位は「人間」である。
オフシーズンに筋力や筋肉量を増やし、パフォーマンスをアップさせることができたはずだ。しかしそれも、風邪を引いてしまったら一気に元通りである。風邪やインフルエンザウイルスの超大群にも負けない身体をつくるためには、どうすれば良いのだろうか。


■免疫力の最前線

免疫には先天的な「自然免疫」と、後天的に獲得された「獲得免疫」の2種類がある。鼻水や咳、くしゃみなどはウイルスを体外に追い出すための手段であるが、これらも自然免疫に分類される。逆に考えると、鼻水や咳を止めようとして鼻炎薬や咳止めを飲むのは、自然免疫の邪魔をしているということにもなるのだ。
鼻水や咳、くしゃみで排出できなかったウイルスは鼻腔や気道に侵入してくる。このとき最前線に立って戦うのは「粘膜」だ。粘膜はムチンを主体とした粘液を分泌したり、線毛運動を起こしたりすることによって、ウイルスが体内に入り込むのを防いでくれる。
また粘膜にはインターフェロンの産生を誘導してマクロファージやNK細胞を増やし、自然免疫を誘導する作用がある。
さらにはT細胞やB細胞などを増殖・活性化させて、獲得免疫を強化する働きもあるのだ。
粘膜を強くするためにもっとも重要なのが「ビタミンA」である。なおβカロテンはビタミンAに変換されるが、その変換率は十分とは言えない。妊娠の可能性がある女性44,646名を対象としたRCT論文によれば、妊娠中の夜盲症の発症率低下や子供の9歳~13歳時における肺活量の増大はβカロテン摂取群では認められず、ビタミンA摂取群でのみ認められている¹。
よってビタミンAを含むレバーや卵などを、少なくとも冬の間はしっかり食べるようにしよう。なおビタミンAは脂溶性なので、油を使った調理法で摂取するようにしたい。


■外に出よ! ビタミンDを合成しよう!

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 2015年度版」では、ビタミンDの上限量が100μgになっている。2010年度版では50μgだったから、実に2倍になったわけだ。
これまでは”カルシウムの吸収を良くする”くらいの働きしか知られていなかったビタミンDであるが、さまざまな癌を予防する可能性が期待されたり、心臓血管系疾患による死亡率を低下させたり²、T細胞やB細胞などの免疫細胞を活性化したり³、インフルエンザA型を発症する割合を58%抑制できたりといった働きのあることが分かってきた。
ビタミンDは紫外線を浴びることにより、体内で合成できる。潜水艦の乗組員を調査したところ、かなり多くのビタミンDを摂取していても血中濃度を充分に維持できないという報告がある。ウォリアーは寒い時季であっても室内に閉じこもらず、日光に当たることを心掛けるようにしたい。
食事でビタミンDを摂取する場合、キノコ類や魚類の肝臓を食べるようにするといいだろう。


■ウォリアーのストレス対策

「引っ越しをすると風邪を引きやすい」という俗説がある。これは環境の変化も関係するが、引っ越しにより肉体的にも精神的にもストレスがかかることが大きな原因だろう。
では、なぜストレスがかかると風邪を引くのだろうか。
ストレスにより、コルチゾルというホルモンが分泌される。コルチゾルにはリンパ球を減らす働きがあり、また単球やマクロファージの機能を抑制する働きもある。そのため、免疫が低下するのだ。
コルチゾルには血糖値を高くする作用がある。そしてエネルギーを増やし、ストレスに対抗しようとするわけだ。血糖値を高めるためには筋肉を分解してアミノ酸を取り出し、それを材料としてブドウ糖を作り出す。
つまりストレスがかかると筋肉が分解され、免疫も低下してしまうというわけだ。ハードなトレーニングは引っ越し以上に強いストレスとなる。筋肉の炎症や活性酸素の発生なども起こるだろう。ウォリアーは筋肉を守り、免疫を低下させないために、ストレス対策を講じなければならない。
さて好中球やマクロファージ、リンパ球などの免疫細胞は、アミノ酸の「グルタミン」をエネルギーとして使っている。またグルタミンの濃度が高いほど、リンパ球の増殖も起こりやすくなる。 また筋肉が分解されるときに多く消費されるアミノ酸、それもグルタミンである。
つまりグルタミンを摂取することにより、ウォリアーは免疫を高めることができると同時に、筋肉を守ることもできるというわけだ。次回では具体的なグルタミンの摂取方法について解説しよう。

 

(後編に続く)

【参考文献】

  • 1:Maternal vitamin A supplementation and lung function in offspring. N Engl J Med. 2010 May 13;362(19):1784-94. doi: 10.1056/NEJMoa0907441.
  • 2:Vitamin D Deficiency and Supplementation: Impact on Cardiovascular Morbidity and Overall Mortality Circulation. 2010; 122: A12680
  • 3:The Physicians Desk Reference. 2006 Thompson Healthcare. Circulation. 2010; 122: A12680
  • 4:Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren. Am J Clin Nutr. 2010 May;91(5):1255-60. doi: 10.3945/ajcn.2009.29094. Epub 2010 Mar 10.
  • 5:Vitamin D supplementation in underway submariners. Aviat Space Environ Med. 2005 Jun;76(6):569-75.