体重・筋量UP

Part 56 「”やり過ぎない我慢”がトレーニング効果を上げる」

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体重・筋量UP

Part 56 「”やり過ぎない我慢”がトレーニング効果を上げる」

Part 56 「“やり過ぎない我慢”がトレーニング効果を上げる」

目的:筋力増加、筋肥大
メリット:トレーニングのレベルアップ、怪我の防止

 

「Three more reps!」「もっと追い込め!」

ハードなトレーニングはウォリアーの代名詞だ。何万回も素振りをしたり、ダッシュを何十本も繰り返したり、フリースローを何千回も練習したりといったシーンはスポ根漫画にはつきもの。実際にそれを真似たことのあるウォリアーも多いだろう。

技術的な練習は、動きを身体に覚えこませるために何度も反復する必要がある。では、レジスタンストレーニングも同じように考えていいのだろうか。何十セットもスクワットを行って、最後はへたりこむくらいまで追い込めば、それだけ大きい効果が得られるのだろうか。

真実は真逆である。「やればやるほどいい」という考えはレジスタンストレーニングにおいては間違いだ。レジスタンストレーニングの目的は、あくまでも「発達のためのスイッチを押す」こと。身体が休んでいる時にこそ筋肉は発達しているのだ。大量のセットをこなしたり、ギリギリまで追い込んだりするのは「スイッチを押し続ける」ようなもので、まったく意味がない。いや意味がないばかりか、逆効果だ。

試合後のラグビー選手のホルモン動態を調べた研究では、コルチゾルレベルは試合12時間後に56%、試合36時間後に59%の増加を示している。そして60時間後も34%増加したままであった。

テストステロンは試合12時間後に26%低下し、36時間後は15%低下、60時間後も8%低下したままであった。出力パワーは36時間後も7%低下したままで、60時間後にやっと元のレベルに戻ったのである。(※1)

つまり疲労困憊まで追い込むと、むしろ筋発達に悪影響となる可能性があるのだ。毎日のようにハードに追い込むレジスタンストレーニングを行うのは結局のところ、周りに見栄を張っているだけ。ただの自己満足に過ぎないのだ。

では、追い込まないトレーニングでも効果はあるのだろうか?

26名の男子学生を対象に、12週間にわたって週3回の上腕二頭筋トレーニングを行わせた研究(※2)がある。MAX×85%の重量を使い、あるグループにはギリギリまで追い込ませ、別のグループは1セットで4レップス行うだけにとどめさせた。また別のグループは4レップスだけにとどめ、かつ爆発的にウェイトを挙げるようにした。

その結果、「4レップス&爆発的」が最も筋力が向上した。筋肥大効果は「ギリギリ」と「4レップスのみ」グループとで差がなかった。

また、15名の女性がサイドレイズ(15レップス)を行い、筋電図を調べた研究(※3)では、モーターユニット動員はギリギリまで追い込んでも増加せず、レップスをこなせなくなる3~5回手前の時点で筋活動はプラトーに到達することが判明した。

バスケットボール選手を対象にした11週間にわたる研究(※4)では、11週間にわたって週2回のトレーニング(ベンチプレスとショルダープレス、ラットプルダウン、スクワット、レッグエクステンション、レッグカール、クランチ)を行い、14名の「ギリギリまで追い込むグループ」と、15名の「追い込まないグループ」とで比較している。

ギリギリまで追い込むグループは、8~10レップスできる重量でギリギリまで行い、追い込まないグループは同じ重量で5レップスにとどめた。その結果、ベンチプレスとスクワットどちらも効果に差がなかったのである。

このように、追い込まないトレーニングでも十分に効果はある。レジスタンストレーニングで追い込まないことで、技術練習に体力を割くことができるし、オーバーワークによるケガを避けることもできるだろう。

ガンガンやらないと不安になるかもしれない。しかし追い込まずに我慢ができることも、ウォリアーの大切な資質なのである。

 

 

(Part 55を読む)
(Part 57を読む)

 

【参考文献】

  • 1:Neuromuscular function, hormonal, and mood responses to a professional rugby union match. J Strength Cond Res. 2014 Jan;28(1):194-200. doi: 10.1519/JSC.0b013e318291b726.
  • 2:Is repetition failure critical for the development of muscle hypertrophy and strength? Scand J Med Sci Sports. 2015 Mar 24. doi: 10.1111/sms.12445.
  • 3:Muscle activation strategies during strength training with heavy loading vs. repetitions to failure. J Strength Cond Res. 2012 Jul;26(7):1897-903. doi: 10.1519/JSC.0b013e318239c38e.
  • 4:Differential effects of strength training leading to failure versus not to failure on hormonal responses, strength, and muscle power gains Journal of Applied Physiology Published 1 May 2006 Vol. 100 no. 5, 1647-1656 DOI: 10.1152/japplphysiol.01400.2005
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目的:筋力増加、筋肥大
メリット:トレーニングのレベルアップ、怪我の防止

 

「Three more reps!」「もっと追い込め!」

ハードなトレーニングはウォリアーの代名詞だ。何万回も素振りをしたり、ダッシュを何十本も繰り返したり、フリースローを何千回も練習したりといったシーンはスポ根漫画にはつきもの。実際にそれを真似たことのあるウォリアーも多いだろう。

技術的な練習は、動きを身体に覚えこませるために何度も反復する必要がある。では、レジスタンストレーニングも同じように考えていいのだろうか。何十セットもスクワットを行って、最後はへたりこむくらいまで追い込めば、それだけ大きい効果が得られるのだろうか。

真実は真逆である。「やればやるほどいい」という考えはレジスタンストレーニングにおいては間違いだ。レジスタンストレーニングの目的は、あくまでも「発達のためのスイッチを押す」こと。身体が休んでいる時にこそ筋肉は発達しているのだ。大量のセットをこなしたり、ギリギリまで追い込んだりするのは「スイッチを押し続ける」ようなもので、まったく意味がない。いや意味がないばかりか、逆効果だ。

試合後のラグビー選手のホルモン動態を調べた研究では、コルチゾルレベルは試合12時間後に56%、試合36時間後に59%の増加を示している。そして60時間後も34%増加したままであった。

テストステロンは試合12時間後に26%低下し、36時間後は15%低下、60時間後も8%低下したままであった。出力パワーは36時間後も7%低下したままで、60時間後にやっと元のレベルに戻ったのである。(※1)

つまり疲労困憊まで追い込むと、むしろ筋発達に悪影響となる可能性があるのだ。毎日のようにハードに追い込むレジスタンストレーニングを行うのは結局のところ、周りに見栄を張っているだけ。ただの自己満足に過ぎないのだ。

では、追い込まないトレーニングでも効果はあるのだろうか?

26名の男子学生を対象に、12週間にわたって週3回の上腕二頭筋トレーニングを行わせた研究(※2)がある。MAX×85%の重量を使い、あるグループにはギリギリまで追い込ませ、別のグループは1セットで4レップス行うだけにとどめさせた。また別のグループは4レップスだけにとどめ、かつ爆発的にウェイトを挙げるようにした。

その結果、「4レップス&爆発的」が最も筋力が向上した。筋肥大効果は「ギリギリ」と「4レップスのみ」グループとで差がなかった。

また、15名の女性がサイドレイズ(15レップス)を行い、筋電図を調べた研究(※3)では、モーターユニット動員はギリギリまで追い込んでも増加せず、レップスをこなせなくなる3~5回手前の時点で筋活動はプラトーに到達することが判明した。

バスケットボール選手を対象にした11週間にわたる研究(※4)では、11週間にわたって週2回のトレーニング(ベンチプレスとショルダープレス、ラットプルダウン、スクワット、レッグエクステンション、レッグカール、クランチ)を行い、14名の「ギリギリまで追い込むグループ」と、15名の「追い込まないグループ」とで比較している。

ギリギリまで追い込むグループは、8~10レップスできる重量でギリギリまで行い、追い込まないグループは同じ重量で5レップスにとどめた。その結果、ベンチプレスとスクワットどちらも効果に差がなかったのである。

このように、追い込まないトレーニングでも十分に効果はある。レジスタンストレーニングで追い込まないことで、技術練習に体力を割くことができるし、オーバーワークによるケガを避けることもできるだろう。

ガンガンやらないと不安になるかもしれない。しかし追い込まずに我慢ができることも、ウォリアーの大切な資質なのである。

 

 

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【参考文献】

  • 1:Neuromuscular function, hormonal, and mood responses to a professional rugby union match. J Strength Cond Res. 2014 Jan;28(1):194-200. doi: 10.1519/JSC.0b013e318291b726.
  • 2:Is repetition failure critical for the development of muscle hypertrophy and strength? Scand J Med Sci Sports. 2015 Mar 24. doi: 10.1111/sms.12445.
  • 3:Muscle activation strategies during strength training with heavy loading vs. repetitions to failure. J Strength Cond Res. 2012 Jul;26(7):1897-903. doi: 10.1519/JSC.0b013e318239c38e.
  • 4:Differential effects of strength training leading to failure versus not to failure on hormonal responses, strength, and muscle power gains Journal of Applied Physiology Published 1 May 2006 Vol. 100 no. 5, 1647-1656 DOI: 10.1152/japplphysiol.01400.2005