競技パフォーマンスUP
僕が目指すのはNFL。日本人だから許してもらえるような、甘ったれた場所じゃない。
今年2月に渡米。日本初のプロフットボールリーグNFL(National Football League)入りを目指し、トレーニングに励む栗原嵩選手。渡米直前、DOME ATHLETE HOUSE(ドームアスリートハウス)にて調整を行っていた栗原選手に目標とするNFLへの思い、そして自身の身体作りについて聞いた。
(インタビュー:2014年2月19日)
■栗原選手のNFLへのチャレンジは、今年で2度目になります。昨年5月に、ボルティモア・レイブンズのキャンプに参加した時の感想と、今回行っているトレーニングのテーマについて教えて下さい。
今はとにかく、体を大きくすることを考えてトレーニングしています。昨年のキャンプでは、本場の超一流大学出身のエリート達と一緒にプレーしました。彼らの中には昨年、シーズンまでチームに残った選手が何人もいます。その中で、チームの首脳陣からも高い評価をいただくことができたのは、とても大きな自信になりました。そこでケガをしてしまい、チームにピックアップしていただくことはできませんでしたが、WR(ワイドレシーバー)としてのスキルは、十分通用したと思います。
ただし、向こうのフットボール選手のフィジカルはケタ違い。今ほしいのは、コンタクトした時の力強さ。アメリカの選手達とフルスタイルでやり合うには、もっと大きく、強い身体を作り上げる必要がある。それを今、切実に感じています。
■現在の体重はどれぐらいでしょうか。
84~85kgです。昨年は81~82kgですので、3~4kgアップしています。できれば87kgぐらいにしたいですね。でも、ただ単に体重を上げればいいというわけではない。そこはなかなか難しいところです。
昨年のキャンプでは、どちらかというとスピードとクイックネスをアピールした形でした。あの時はかなり痩せた状態だったので、もう少し増量しても同じレベルの動きはできる。昨年プラスアルファの動きを、体重を上げた状態でできるようになりたいですね。
身体を大きくしようと考えているのは、NFL入りのためには強いアピールが必要だからです。WRならば、相手のカバーを抜き去ってボールをキャッチすればいい。そのテクニックを見せる自信は今すでに十分ある。でも、僕はドラフト外入団を目指すフリーエージェント選手なんです。WRとしてピックアップしてもらうには、スペシャルチーム(キックオフやパントのカバー、リターンなどキッキング専門チーム。主にセカンドチーム以降の選手が入る)でのアピールから始めなくてはならない。つまり100kgを超える選手のブロックを跳ね除け、タックルして相手を倒さねばならない状況も、きっと出てくるでしょう。そのためには相手との1対1に突っ込んでいける身体とメンタルが欠かせないので、体重と筋量を増やす必要があるわけです。
■具体的には、身体の中でどこを重点的に鍛えているのでしょうか。
もちろん全身をきっちり鍛えていますが、特にお尻ですね。スクワットを、フルに近い形でやっています。実は、スクワットにしっかりと取り組むようになったのは最近なんです。学生時代はどうもスクワットが苦手で、下半身のメニューはクリーンやランジがほとんど。でも昨年向こうに行って、明らかにお尻の大きさが違うことがわかった。向こうのいい選手はみんな、お尻のボリュームがすごいんです。
少なくとも今の僕は、それを生まれつきの体型のせいにする立場にいない。日本人だからどうこうじゃない。フィールドに立ったら人種なんて関係ない。「日本人だからこれでいい」と許されることは何一つないし、「日本人特有の動きがどうこう…」なんて、言っている場合じゃない。僕が目指しているのは、そんな甘い世界じゃない。そう思って、スクワットに真剣に取り組むようになりました。少しでも向こうのトップ選手に近づきたい。そのためには最低限、NFLでやっていける身体のレベルを作らないとお話にならない。
■サプリメントについてはどうでしょうか。今の摂取状況を教えて下さい。
体作りを考えている今は、起床してすぐにBCAAとプロテインを飲んでいます。そして午前に走ってフィジカルトレーニングをした後、もう一度BCAA、そしてクレアチンを摂ります。午後にDOME ATHLETE HOUSE(ドームアスリートハウス)でトレーニングする時は、前後にプロテインとクレアチンですね。クレアチンはなるべく、小まめに摂ることを心がけています。そして、寝る前にプロテインとビタミン、マグネシウムとフィッシュオイルなどを摂ります。僕はもともとめんどくさがり屋なので、飲み忘れることも多いんです。でも、寝る前ならば決して忘れない。だから、細かいビタミン類などは寝る前にまとめて摂っています。
■ウエイトトレーニングを本格的に始めたのは、いつごろのことですか。
高校時代ですね。当時は細くて、身長178~179cm、体重は73kgぐらい。高校のアメリカンフットボール部は基本的にウエイトトレーニングはしないのですが、実は鬼のコーチがいまして(笑)。僕を含めた数人が呼ばれ、練習が終わった後の夜にひたすらウエイトトレーニングをさせられたんです。
グラウンドでキツい練習をした後、夜9時、10時からウエイトトレーニングが始まるのですが、もう、吐きそうになるぐらいに追い込まれるんです。今と違って本当に嫌々でした。でもひたすらやったので、全身にパワーがついて明らかに体つきが変わり、すべてのパフォーマンスがワンランク上がった気がしました。パワー、スピード、瞬発力、敏捷性…アメフトはすべてが必要なスポーツ。足が速くても、それだけなら簡単に吹っ飛ばされてしまいますからね。
苦しかったあの時に、今の自分の基礎ができたと思います。ただ残念だったのが、当時はプロテインなどのサプリメントをほとんど摂っていなかったこと。当時に栄養摂取に対するしっかりした知識があったら、もっとすごい選手になっていたかもしれません。
■大学に入ると、1年生から活躍しました。当時のトレーニングと栄養摂取の状況は、どのようなものだったのでしょう。
大学では、チームで行うウエイトトレーニングの後だけですが、プロテインを飲むようになりました。フィジカルトレーニングに対する意識が大きく変わったのが、大学2年の冬。NFLのリージョナルコンバインに参加し、日本のトップクラスの選手がたくさん来ている中でプレーしたのですが、まったくダメ。フィジカルのすべてが違った。僕は一番若かったのですが、それが本当にショックで…そこからはっきりと意識が変わりました。
大学に入った時は73kgぐらいでしたが、しっかりとフィジカルを鍛えた結果、3年生で80kg弱、4年生で80kgになりました。もちろんプレーも変わりました。スピードは段違いに変わったし、走るフォームが力強くなった。何というか、迫力が出た。
また、トレーニングをきっちりやると、ケガが減ることも実感しました。それまでは腰が悪かったのですが、全身の筋力を鍛えていくと、ほとんど気にならなくなりましたね。
■社会人チームでプレーしてから、体つきが大学時代と比べてかなり変わった印象があります。
大学時代のビデオをあらためて見ると、軽く見えます。カモシカが走っているみたいですよね(笑)。社会人1~2年目はケガであまりプレーできなかったのですが、その間に全身をしっかり鍛えたことで、3年目以降のパフォーマンスはかなり向上したと思います。
栄養摂取に対する意識が変わったきっかけは、昨年からドームさんにサポートしていただけるようになったことです。それまでプロテインをトレーニング後に摂っていただけでしたが、他にもさまざまなアイテムを取り入れ、摂取タイミングも含めてきっちり指導していただくことができた。そのおかげで、身体は大幅に変わったと思います。
■では最後に、NFL挑戦に向けた抱負をお聞かせ下さい。
NFL入りのチャンスは年に1度だけ。年齢を考えても、今後そう何度もチャレンジできるものではありません。だから、今年の挑戦にすべてを賭けています。トライアウトで最高のパフォーマンスを発揮するため、身体とメンタル両方を最高の状態に持って行きます。ぜひ、期待して下さい!
栗原選手らフリーエージェント選手によるトライアウトは、5月のドラフトが終わった直後から始まる見込みだ。現在はそこに向け、フロリダのIMGアカデミーでトレーニングを続けている。ケタ違いのクイックネスと屈強なフィジカルを誇るスピードスターは、果たして日本人初のNFLプレイヤーの座を射止めることができるのか。吉報を待ちたい。
僕が目指すのはNFL。日本人だから許してもらえるような、甘ったれた場所じゃない。
今年2月に渡米。日本初のプロフットボールリーグNFL(National Football League)入りを目指し、トレーニングに励む栗原嵩選手。渡米直前、DOME ATHLETE HOUSE(ドームアスリートハウス)にて調整を行っていた栗原選手に目標とするNFLへの思い、そして自身の身体作りについて聞いた。
(インタビュー:2014年2月19日)
■栗原選手のNFLへのチャレンジは、今年で2度目になります。昨年5月に、ボルティモア・レイブンズのキャンプに参加した時の感想と、今回行っているトレーニングのテーマについて教えて下さい。
今はとにかく、体を大きくすることを考えてトレーニングしています。昨年のキャンプでは、本場の超一流大学出身のエリート達と一緒にプレーしました。彼らの中には昨年、シーズンまでチームに残った選手が何人もいます。その中で、チームの首脳陣からも高い評価をいただくことができたのは、とても大きな自信になりました。そこでケガをしてしまい、チームにピックアップしていただくことはできませんでしたが、WR(ワイドレシーバー)としてのスキルは、十分通用したと思います。
ただし、向こうのフットボール選手のフィジカルはケタ違い。今ほしいのは、コンタクトした時の力強さ。アメリカの選手達とフルスタイルでやり合うには、もっと大きく、強い身体を作り上げる必要がある。それを今、切実に感じています。
■現在の体重はどれぐらいでしょうか。
84~85kgです。昨年は81~82kgですので、3~4kgアップしています。できれば87kgぐらいにしたいですね。でも、ただ単に体重を上げればいいというわけではない。そこはなかなか難しいところです。
昨年のキャンプでは、どちらかというとスピードとクイックネスをアピールした形でした。あの時はかなり痩せた状態だったので、もう少し増量しても同じレベルの動きはできる。昨年プラスアルファの動きを、体重を上げた状態でできるようになりたいですね。
身体を大きくしようと考えているのは、NFL入りのためには強いアピールが必要だからです。WRならば、相手のカバーを抜き去ってボールをキャッチすればいい。そのテクニックを見せる自信は今すでに十分ある。でも、僕はドラフト外入団を目指すフリーエージェント選手なんです。WRとしてピックアップしてもらうには、スペシャルチーム(キックオフやパントのカバー、リターンなどキッキング専門チーム。主にセカンドチーム以降の選手が入る)でのアピールから始めなくてはならない。つまり100kgを超える選手のブロックを跳ね除け、タックルして相手を倒さねばならない状況も、きっと出てくるでしょう。そのためには相手との1対1に突っ込んでいける身体とメンタルが欠かせないので、体重と筋量を増やす必要があるわけです。
■具体的には、身体の中でどこを重点的に鍛えているのでしょうか。
もちろん全身をきっちり鍛えていますが、特にお尻ですね。スクワットを、フルに近い形でやっています。実は、スクワットにしっかりと取り組むようになったのは最近なんです。学生時代はどうもスクワットが苦手で、下半身のメニューはクリーンやランジがほとんど。でも昨年向こうに行って、明らかにお尻の大きさが違うことがわかった。向こうのいい選手はみんな、お尻のボリュームがすごいんです。
少なくとも今の僕は、それを生まれつきの体型のせいにする立場にいない。日本人だからどうこうじゃない。フィールドに立ったら人種なんて関係ない。「日本人だからこれでいい」と許されることは何一つないし、「日本人特有の動きがどうこう…」なんて、言っている場合じゃない。僕が目指しているのは、そんな甘い世界じゃない。そう思って、スクワットに真剣に取り組むようになりました。少しでも向こうのトップ選手に近づきたい。そのためには最低限、NFLでやっていける身体のレベルを作らないとお話にならない。
■サプリメントについてはどうでしょうか。今の摂取状況を教えて下さい。
体作りを考えている今は、起床してすぐにBCAAとプロテインを飲んでいます。そして午前に走ってフィジカルトレーニングをした後、もう一度BCAA、そしてクレアチンを摂ります。午後にDOME ATHLETE HOUSE(ドームアスリートハウス)でトレーニングする時は、前後にプロテインとクレアチンですね。クレアチンはなるべく、小まめに摂ることを心がけています。そして、寝る前にプロテインとビタミン、マグネシウムとフィッシュオイルなどを摂ります。僕はもともとめんどくさがり屋なので、飲み忘れることも多いんです。でも、寝る前ならば決して忘れない。だから、細かいビタミン類などは寝る前にまとめて摂っています。
■ウエイトトレーニングを本格的に始めたのは、いつごろのことですか。
高校時代ですね。当時は細くて、身長178~179cm、体重は73kgぐらい。高校のアメリカンフットボール部は基本的にウエイトトレーニングはしないのですが、実は鬼のコーチがいまして(笑)。僕を含めた数人が呼ばれ、練習が終わった後の夜にひたすらウエイトトレーニングをさせられたんです。
グラウンドでキツい練習をした後、夜9時、10時からウエイトトレーニングが始まるのですが、もう、吐きそうになるぐらいに追い込まれるんです。今と違って本当に嫌々でした。でもひたすらやったので、全身にパワーがついて明らかに体つきが変わり、すべてのパフォーマンスがワンランク上がった気がしました。パワー、スピード、瞬発力、敏捷性…アメフトはすべてが必要なスポーツ。足が速くても、それだけなら簡単に吹っ飛ばされてしまいますからね。
苦しかったあの時に、今の自分の基礎ができたと思います。ただ残念だったのが、当時はプロテインなどのサプリメントをほとんど摂っていなかったこと。当時に栄養摂取に対するしっかりした知識があったら、もっとすごい選手になっていたかもしれません。
■大学に入ると、1年生から活躍しました。当時のトレーニングと栄養摂取の状況は、どのようなものだったのでしょう。
大学では、チームで行うウエイトトレーニングの後だけですが、プロテインを飲むようになりました。フィジカルトレーニングに対する意識が大きく変わったのが、大学2年の冬。NFLのリージョナルコンバインに参加し、日本のトップクラスの選手がたくさん来ている中でプレーしたのですが、まったくダメ。フィジカルのすべてが違った。僕は一番若かったのですが、それが本当にショックで…そこからはっきりと意識が変わりました。
大学に入った時は73kgぐらいでしたが、しっかりとフィジカルを鍛えた結果、3年生で80kg弱、4年生で80kgになりました。もちろんプレーも変わりました。スピードは段違いに変わったし、走るフォームが力強くなった。何というか、迫力が出た。
また、トレーニングをきっちりやると、ケガが減ることも実感しました。それまでは腰が悪かったのですが、全身の筋力を鍛えていくと、ほとんど気にならなくなりましたね。
■社会人チームでプレーしてから、体つきが大学時代と比べてかなり変わった印象があります。
大学時代のビデオをあらためて見ると、軽く見えます。カモシカが走っているみたいですよね(笑)。社会人1~2年目はケガであまりプレーできなかったのですが、その間に全身をしっかり鍛えたことで、3年目以降のパフォーマンスはかなり向上したと思います。
栄養摂取に対する意識が変わったきっかけは、昨年からドームさんにサポートしていただけるようになったことです。それまでプロテインをトレーニング後に摂っていただけでしたが、他にもさまざまなアイテムを取り入れ、摂取タイミングも含めてきっちり指導していただくことができた。そのおかげで、身体は大幅に変わったと思います。
■では最後に、NFL挑戦に向けた抱負をお聞かせ下さい。
NFL入りのチャンスは年に1度だけ。年齢を考えても、今後そう何度もチャレンジできるものではありません。だから、今年の挑戦にすべてを賭けています。トライアウトで最高のパフォーマンスを発揮するため、身体とメンタル両方を最高の状態に持って行きます。ぜひ、期待して下さい!
栗原選手らフリーエージェント選手によるトライアウトは、5月のドラフトが終わった直後から始まる見込みだ。現在はそこに向け、フロリダのIMGアカデミーでトレーニングを続けている。ケタ違いのクイックネスと屈強なフィジカルを誇るスピードスターは、果たして日本人初のNFLプレイヤーの座を射止めることができるのか。吉報を待ちたい。